【巨人】原監督の“先手より2戦目必勝”論…G担当キャップがひもとく

スポーツ報知
練習中、ベンチで熱弁する原監督(カメラ・橋口 真)

 巨人は15日、東京Dで日本シリーズに向けた練習を再開した。4勝先取の短期決戦は、まず19日から敵地・ヤフオクDでの大事な2連戦を迎えるが、原辰徳監督(61)は「1勝1敗という数字が決まっているのならば、2戦目を取りたい」と鉄則といえる先手必勝の逆をいく注目発言。その心中を巨人担当キャップの西村記者がひもといた。

 まるで禅問答のようだった。原監督が描く、日本一への4勝の“内訳”を尋ねた時だった。敵地で迎える最初の2連戦を、最低1勝1敗で乗り切りたいと願うのはどの監督でも同じだろうが、興味を引いたのはその順序だった。

 「多少の経験があるという点から言わせてもらうと、2戦目を取りたいね」

 短期決戦において、先手必勝は鉄則ともいっていいはず。だが、指揮官は逆をいく。「これ、結果が先に分かっていれば(の話)だよ。1勝1敗という数字が決まっているのならば、2戦目を取りたい。しかし、そんな勝負はどこにもない。夢物語だよ」。限定条件ではあるが、2戦目を取る「理」を考察してみたい。

 ヒントになるのは、くしくも今季と同じ対戦になった00年の日本シリーズ。“ON決戦”として記憶に残るが、この年は東京から始まる1、2戦目の後、福岡へと戦いの場を移す3戦目を“移動ゲーム”で行い、4戦目まで2日間空ける変則日程で行われたことでも注目を集めた。巨人は本拠で連敗を喫したが、3戦目を取り、1勝2敗で2日間の“空き日”を迎えた。

 雁の巣球場で調整したその時間を、当時ヘッドコーチとして指導していた原監督は「1勝2敗に変わりはない。でも、勝って(空いた日程を)迎えたことで、どこか気分よく練習できたのはあるのかな、というのは僕の中に刻まれている」と振り返る。気分が乗ったまま試合のない2日間を過ごせたことが、その後の3連勝につながった。普通の日本Sなら第2戦と第3戦の間が移動日。2戦目に勝てば、精神的な疲労を軽減して移動できる利点はある。

 また初戦を落とすと、相手に勢いが生まれる。だが、2戦目を奪い返せば、それ以上の勢いが自軍に生まれるだろう。窮地で真の力を発揮し、それは全て身になる。指揮官がよく言う“徳俵理論”がそれだ。

 なるほど、と一人思案を巡らせていると、原監督は最後にこう言った。「でも両方取るのがいいさ。両方、取る」。ですよね…。結局のところ、勝負どころは全てであり、言い換えれば存在しないものなのかもしれない。「どんな状況においても、どんな結果が出ても、どうやってポジティブになれるか」とキーポイントを挙げたが、それこそ名将・原辰徳が最も得意とする部分だ。(西村 茂展)

 ◆00年日本シリーズ第5戦VTR 第1、2戦は東京Dでダイエーが連勝。福岡での第3、4戦は巨人が連勝でタイに。第5戦は、巨人の新人・高橋尚が2安打12奪三振で完封。新人の初登板初完封は日本シリーズ初の快挙だった。その試合後、長嶋監督は「きのう負けていたらメイでした」と告白。第4戦に敗れて王手をかけられた場合は、メイを中4日で起用するプランだった。メイは翌日の第6戦(東京D)に先発して6回途中3失点で勝利投手。巨人が日本一を決めた。

 ◆原監督と日本シリーズ2戦目 監督として5度日本Sに出場したうち、移動日前の2戦目に勝利したのは3度。そのうち02、12年に日本一に輝いた。

 ◆名将の第2戦メモ

 ▼川上哲治 巨人V9監督。日本シリーズ第2戦は8勝3敗。驚くべきは、2連敗スタートが一度もなく、指揮したシリーズ11度を全て制した。67年の対阪急では、ベテランの金田を初戦に送り、若きエース堀内を2戦目に回して、2連勝した。

 ▼森祇晶 西武監督で6度の日本一。初戦より第2戦の勝利を重視する説を唱えたが、実際には第2戦は3勝5敗。ただ、第2戦を制した年は全て日本一。野村・ヤクルトと対決した92年、渡辺久が先発した初戦は延長12回サヨナラ負けしたが、2戦目に郭泰源を立てて無失点勝利。4勝3敗で制した。

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