【後藤正幸JRA理事長インタビュー前編】JCに1頭でも多く海外有力馬迎えたい 「少々のリスク冒してでも」東京競馬場に国際検疫厩舎作る

スポーツ報知
身ぶり手ぶりで熱弁したJRAの後藤正幸理事長

 JRA(日本中央競馬会)の後藤正幸理事長(68)が、スポーツ報知の新春インタビューに応じた。前後編にわたってお届けする初回は、国内外での日本の人馬の活躍や、昨年初めて外国馬の参戦がなかったジャパンCの改革について力強く語った。(取材、構成・春木宏夫、坂本達洋)

 ―明けましておめでとうございます。2019年の馬券の売り上げは8年連続プラス(注1)。好調な要因はどうお考えですか?

 「関係者が一丸となっていい競馬を届けていきたいという努力がある。そして様々な施策を行うなかで、たとえば「UMAJO」は、競馬場内に女性専用スポットを設け、女性の方が1人でも気軽に競馬場に来られるようにしました。ここ数年プロモーションで取り組んでいるのは、競馬を知らない方々にも簡単に競馬を分かっていただけるように案内していこうというもの。そういう様々な取り組みが、連続して前年の売り上げが上回る結果につながっているのではと思う」

 ―では昨年一年を振り返ってみて、どのような一年だったと思いますか?

 「当たり前のことだが、本当に人馬ともに活躍した年だった。特に海外で8か国、延べ50頭が35競走に出走して、G1競走を8勝した。これは本当にある意味輝かしい一年だった印象があります。人の活躍で言えば、やっぱり武豊騎手。前人未踏の4100勝を成し遂げて、4年ぶりに年間100勝も達成された。特筆すべきは2019年の凱旋門賞当日に8R中5Rに騎乗して、しかも外国調教馬ばかりというのは、国際的に高い評価を受けている何よりの証明です。そして藤田菜七子騎手も、海外の舞台で活躍に加えてJRAの重賞も勝った。若手騎手のけん引役として、どんどん若い騎手たちの先頭に立って欲しいですね」

 ―昨年はディープインパクトなど一時代を築いた名馬が世を去りました。今年から新たにその名前を冠した「報知杯弥生賞ディープインパクト記念」と改称した意義は?

 「彼は現役時代だけではなく、種牡馬としても大変輝かしい成績を残した。そういうことも含めて、功績をずっと後世に伝えていきたい。それだけのサラブレッドであったということでもあり、彼の名前を冠したレースを創設することになりました。サラブレッドでは53年ぶりですからね、シンザン記念以来。それだけの希代の名馬だったと思います」

 ―また、世界の中で日本調教馬が存在感を示した一方、昨年のジャパンCは史上初めて外国馬の参戦がなかった。この現状をどう分析されますか。

 「ジャパンCというレースを行っていく以上、1頭でも多く海外から有力な出走馬を迎えられるように努力を続けていかなければならない。いろいろな理由が考えられるなかで、馬場の違いについては、世界各国で同じ馬場ではないし、天候だって変わるもの。それを主な理由にするのは違うと思う。検疫制度に関しても、少々リスクを冒してでも競馬場で国際検疫ができるような仕組みを作らないといけないというので、新たに東京競馬場の内馬場に国際検疫厩舎を作ることを決めた(注2)。手放しのまま現状で来てくださいというつもりはありません」

 ―では主な理由はどこにあると考えているか?

「やはり日本の調教馬の資質が非常に上がってきた。それを海外の関係者が、十分に認知するようになったというのもあるでしょう。それとジャパンCを創設した(1981年)当時、登録料を取らないだけではなく、渡航費から滞在費まで全部の面倒をみる招待競走は、なかなかなかった。それがジャパンCを契機に、香港やドバイなど、基本的にはジャパンCと似たような招待条件で、またいろんな形でアドバンテージを付与するようになってきた。すなわち各国の競馬主催者の間での勧誘の競争が、激しくなってきたと思う。私たちもそういうインセンティブマネーなども見直していこうと思っているし、少しでも勧誘しやすい環境を作っていきたいですね」(続く)

 【注1】19年の総売り上げは2兆8817億8866万1700円で、前年比3・1%増の8年連続アップ。

 【注2】現行制度では、外国馬は千葉・白井市の競馬学校で輸入検疫を経る必要がある。JRAは先月9日、外国馬が東京競馬場への直接入厩できるよう検討に入っていることを明かし、時期は未定ながら、競馬場内の国際厩舎新設と、馬場を使用しての調整が可能となるよう進める考えを示した。

 ◆後藤 正幸(ごとう・まさゆき)1951年10月3日、東京都出身。68歳。早大卒業後、75年に日本中央競馬会(JRA)入会。国際部国際企画課長、総合企画部長などを歴任し、06年に理事、11年に常務理事。14年9月に第15代JRA理事長に就任。

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