【箱根駅伝】厚底革命!105人中87人使用“倍増”で区間新4連発呼んだ

スポーツ報知
大勢の観客が見つめる中、大手町を一斉にスタートする1区の選手たち(カメラ・相川 和寛)

◆報知新聞社後援 第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(2日、東京・読売新聞東京本社前―芦ノ湖、5区間=107.5キロ)

 ピンクと、左右非対称(右・水色、左・オレンジ)の新カラーが令和初の箱根路を席巻した。今回、往路21チーム105人中87人、実に82・8%がナイキの厚底シューズ「ズームXヴェイパーフライネクスト%」を履いた。23チーム往復計230人が走った前回、ナイキ(厚底タイプ以外の9人含む)は95人、使用率41・3%で、一気に“倍増”した。

 往路5区間中、4区間で区間新が出て、3、5区は各3人が従来の区間記録を更新した。各区間の歴代10傑にも軒並み入るタイムアップぶり。駒大の大八木弘明監督は「靴で全然変わってくる」と好記録連発への影響に触れた。

 ナイキ厚底靴は17年にデビュー。エリートランナーは軽量、薄底の靴を選ぶ傾向が強かったが、ナイキは「厚さは速さだ」をキャッチコピーに概念を打ち破るシューズを開発した。厚底にカーボンプレートが内蔵され、反発力が推進力を生む。18年に第2弾、昨年、第3弾が誕生。昨年9月の東京五輪マラソン代表選考会男子では中村匠吾、服部勇馬、大迫傑の3トップをはじめ上位10人中8人が使用した。この日、往路5人全員がナイキ厚底靴を使用した東海大の両角監督は「(第2弾から第3弾にかけ)飛躍的に進化した」と証言する。第2弾より反発ポイントが広がり、約180グラムの数字以上にランナーは軽く感じる。定価2万7500円(税抜き)と高額ながら市民ランナーにも浸透している。

 前回、往復路で使用率2~4位だったアシックス(22・2%)、アディダス(17%)、ミズノ(10・4%)は軒並み苦戦。ナイキはさらに“独走”を狙い、既に次世代モデルを完成。マラソン世界記録(2時間1分39秒)保持者のキプチョゲ(35)=ケニア=が昨年10月に非公認レースで1時間59分40秒の驚異的タイムをたたき出した時に履いた「超厚底シューズ」だ。前足部にナイキの特徴のエアが内蔵された。

 「このシューズを履ける選手は現時点でキプチョゲだけ。次に東京五輪前に五輪選手だけに供給する。五輪後にそれ以外のエリートランナーに供給する予定」とナイキ関係者は戦略を明かす。来年の箱根路はナイキの「キプチョゲシューズ」が席巻する可能性は高い。

 100年前の箱根駅伝で選手は足袋で走った。用具の進化で連想されるのは、08年北京五輪時の高速水着問題だ。英スピード社の「レーザー・レーサー」を着た選手が世界記録を連発。その後、禁止された。陸上界でも厚底シューズに対し、世界陸連が調査を始めるという情報があり、今後が注目される。(竹内 達朗)

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