発表間近!第89回アカデミー賞期待の5本

ノミネートされた作品の中から下馬評の高いものや個人的期待作をピックアップ

発表間近!第89回アカデミー賞期待の5本
※購入先へのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、そちらの購入先での販売や会員の成約などからの収益化を行う場合はあります。 詳しくはプライバシーポリシーを確認してください

今年もこの季節がやってきた。アカデミー賞ノミネートから授賞式まで、今か今かと期待に胸を膨らませる時期だ。授賞式は、現地時間では2017年2月26(日)、(日本時間では27日の昼過ぎ)に行われる。そこで、今回はOSCAR WATCHを元に、下馬評の高いものや個人的期待作を5本紹介したい。

ラ・ラ・ランド

作品賞の大本命。他にも、アカデミー賞を総なめにしていくことが予想されている。本作は以前、2017年期待の新作記事でも触れたので、もう少し詳しく、見所らしきポイントについて触れていきたい。

本作は、売れない女優のミア(エマ・ストーン)と、売れないジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・コズリング)が出会い、惹かれ合うストーリーを、豪華絢爛なミュージカルで魅せるもの。 

「カサブランカ」や「雨に唄えば」など、今はなきハリウッド黄金時代のミュージカル映画の魅力へと招待してくれるそうだ。しかし、単にそれらの魅力を呼び起こすだけではないらしい。話を漏れ聞く限り、″現代的なアプローチ″をしているように思える。

例えば、撮影監督ライナス・サンドグレンのカメラが、パフォーマンスの間や周りを縫うように動き、まるで織物を作るように見えるそうだ。その様は、宇宙空間SFの「ゼロ・グラビティ」のカメラワークのようだとも言われている。

他にも、諸々の映画の要素が、他の先行作品にたとえられているらしく、そのようなことが″現代的なアプローチ″とも言える由縁であろう。

関連記事:注目映画「ラ・ラ・ランド」、「セッション」の監督が贈る夢見る人々へのラブレター

ムーンライト

本作は、作品賞、監督賞ともに「ラ・ラ・ランド」に次ぐ下馬評を得ている。また、マハーシャラ・アリは助演男優賞、ナオミ・ハリスは助演女優賞にそれぞれノミネートされている。監督は、新鋭バリー・ジェンキンス。

舞台は、フロリダ州マイアミ近くのリバティー・スクエアで、その近くにある黒人のみが暮らす社会。そこで実際に育った少年の物語である。

主人公の名はシャロン。黒人でゲイ。さらに麻薬中毒の母親(ナオミ・ハリス)は育児放棄の状態。本作は、彼の半生を幼少期(アレックス・ハイバート)、思春期(アシュトン・サンダース)、青年期(トレバント・ローズ)の3つの時制に分けて描かれる。それぞれの年代で、不遇な目に遭い、シャロンは「自分は何者なのか」を考えさせられる。

そんな中、幼少期のシャロンは、あるきっかけから、ドラッグディーラーのケヴィン(マハーシャラ・アリ)と出会い、心を許していく関係になる。だが、ゲイであることなどから、成長していくに連れて、周囲との関係を閉ざしていくようになる。

本作は、個人的体験を描きながら、普遍的に「自分にとってアイデンティティは何か」、主人公の目を通して観客側にも考えさせられる作品となっているようだ。筆者はエンタメ性の高い作品が大好物であるが、人間個人の存在意義を問われるような作品も大好物である。話を漏れ聞く限り、公開が非常に待ち遠しい。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

作品賞では3番手候補につき、またケーシー・アフレックが主演男優賞、ミシェル・ウィリアムズが助演女優賞にそれぞれノミネートされている。監督はケネス・ロナーガン。

主人公のリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)は、彼の兄の死後、故郷ボストンのマンチェスター・バイ・ザ・シーへと戻らなければならなくなる。そこで、彼は兄の息子の保護者となった。だが、彼はあることをきっかけに、孤独に罪を背負い続け、無口になっている。

本作は、海外メディアで軒並みものすごく評価が高い。ただ、海外メディアのレビューでは、リー・チャンドラーが罪を背負う背景に触れているので、見所らしきポイントも説明できない。

筆者個人としては、何らかの出来事で心をふさぎ、孤独に生きるしかなくなる人物の心の機微を描く作品も好みであるため(ここら辺は「ムーンライト」にも通じるものがあるだろう)、非常に期待している。

最後の追跡

本作は、作品賞で4番手についており、またジェフ・ブリッジスも助演男優賞でノミネートされている。ちなみに、現在Netflixで視聴可能だ。

銀行強盗を繰り返すタナー(ベン・フォスター)とトビー(クリス・パイン)。彼らハワード兄弟は、抵当に入れられた牧場の差し押さえを防ぐため、金を手っ取り早く稼ぐ必要があった。

一方、テキサスレンジャーのマーカス(ジェフ・ブリッジス)は、相棒のアルベルト(ギル・バーミンガム)とともに、連続強盗事件を追っていた。

注目ポイントとして、演出、カメラワーク、編集他、映画技巧が優れている点を1つ1つ挙げたいところだ。

しかし、絞るとしたら、エンタメ性が高い作品でありながら、現実のアメリカ社会の病んだ姿を見せつけられる点にあると言える。

知能犯的な強盗、ロジカルな捜査、戦略的な銃撃戦など、クライムサスペンスに欠かせない要素をまず押さえている。そのような映画ジャンルの型の中、さらに、悪徳金融業者、彼らの行いが原因で借金を抱えた者、アメリカ社会の搾取の歴史など、様々な登場人物や台詞の端々から、アメリカの暗部が垣間見える。

ライオン 25年目のただいま

作品賞、デブ・パテルが主演男優賞、養母役のニコール・キッドマンが助演女優賞にそれぞれノミネートされている。監督は、日本ではほぼ無名のガース・デイビス。

サルー(幼少期はサニー・パワール)はインドの田舎で元々過ごしていた。だが、ある日、予期せぬことが起こる。いっしょに母親の仕事を探し、電車に乗っている最中、サルーは寝過ごしてしまい、母や兄と離れてしまった。そのときサルーは5歳。1人でカルカッタへ行ってしまった。

その後、養子としてオーストラリアで育てられる。それから25年が経過。30歳になったサルー(青年期はデブ・パテル)は、友人からGoogle Earthを教えてもらい、それを利用し、母親と兄を探すことになる。

今年の傾向として言えるのは、例年になく、作品賞では若手監督の作品が半数近くノミネートされていることだ。監督賞も、5人中2人は若手監督。しかも、作品賞、監督賞大本命の「ラ・ラ・ランド」に至っては、長編映画3作目、若干32歳のデミアン・チャゼルが監督だ。作品賞はプロデューサーに与えられるものだが、若手監督の台頭が目覚ましいと確実に言える。

この傾向は、来年も続くのかは分からない。だが、アメリカ映画界ひいてはアカデミー賞に、地殻変動が起きるのを期待したい。


アップデート(2月19日):「ラ・ラ・ランド」のミア役がエマ・ワトソンと記載されていましたが、エマ・ストーンの間違いでした。お詫びして訂正致します。

※購入先へのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、そちらの購入先での販売や会員の成約などからの収益化を行う場合はあります。 詳しくはプライバシーポリシーを確認してください
In This Article
More Like This
コメント