Anthem - レビュー

発売時点の『Anthem』は――残念ながら――「不完全なオンラインRPG」の典型的な例だ

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『Anthem』のような、何度も繰り返す単調なストーリーミッションを苦労してクリアしたのち、やっと約束された、成長と進展が見られる有意義なマルチプレイのパートにたどり着けるオンラインRPGは、これまであまりにもたくさんプレイしてきた。戦利品の獲得とチャレンジングなゲームプレイがもともと素晴らしい戦闘に新たな活気を吹き込むので、『Anthem』のエンドゲームは驚くほど楽しい。残念ながら、このような優良コンテンツの量が少なく、長い忍耐をするほどの価値がないだけでなく、洗練さと明確さ、バランスにおいても一貫性を欠いている。今のところ、『Anthem』は今すぐ楽しめるゲームというよりも、将来にとっておくべき冒険となっている。

『Anthem』の舞台は、無秩序に広がっている色彩鮮やかなバスティオンという荒れ果てた地域である。そこには、至る所に攻撃的な野生生物や迫り来る敵の派閥、そして――結局、実際よりすごそうに見せられている、敵がスポーンする場所に過ぎなかった――神秘的な具現者の創造の奏具が散りばめられている。プレイヤーは、フリーランサーと呼ばれる、ジャベリンというエグゾスーツを操り、フォート・タルシスの住民から依頼を受けて危険な任務をこなして生計を立てる、人助けが好きな傭兵となる。自由奔放に生きるキャラクター陣のボイスは上手に演じられており、感動的なモノローグがプレイヤーを魅了することもある。誇り高き老戦士のハルークをはじめ、何人かのキャラクターには特に感情を動かされた。しかし、任意な会話がメインストーリーのイベントとはトーンが一致しないことに気づいたのち、情緒的にキャストに深入りしようとする意欲が薄れた。私に怒ることを忘れているキャラクターがいれば、私が前回の遠征で問題をちゃんと解決したにも関わらず、依然悪い態度をとるキャラクターもいたのだ。

任意な会話がメインストーリーのイベントとはトーンが一致しないことが多い。

フォート・タルシスの外で交わされる会話の大半は、輝くオーブを強磁性流体の池に入れてキャプチャーポイントに100回も立たされるといった、単調なミッションを何度も繰り返すための正当化にしか思えなかった。

『Anthem』の主にシングルプレイヤー向けのストーリーとマルチプレイを前提としたワールドは大きく矛盾している。私は主に友人と繋がるためにゲームをプレイするタイプだが、ミッション中でも常に入ってくるNPCのセリフがチームとのコミュニケーションの妨げになった。次のミッションへ進むためには一度フォート・タルシスに戻る必要があり、そのため私は何度も仲間がNPCとの任意の会話を終わらせるまで待ったり、あるいはインベントリを管理し終わるまで暇になってしまった。

状況を一変させるマスターワークの武器やストロングホールドの強力な戦利品など、より多様で興味深い要素の登場は遅すぎる。約15時間の本編のストーリーは、ミッションの合間にフォート・タルシスに戻らされた際、インタラクティブ性に欠けるパートにおいて届けられる。動きの速いジャベリンから出て、ボイスチャットをミュートにして、薄気味悪いほど静かな小さい城塞都市を、カタツムリのようなスピードでブラブラ歩く。2つの重要なストーリー展開においてしか、その結果が――ストーリー要素とユニークなミッションのゲームプレイを意味ある方法で繋げながら――フォート・タルシスの外の出来事には影響しない。しかし、それらはすぐに終わり、まもなく退屈な日常に戻らされる。

戦闘では、考えたことを簡単にその通りに実行できてしまう。

『Anthem』の戦闘は最初のうちは力強く、魅力的で、そしてユニークに感じた。コントローラーでも、マウスとキーボードでも反応の良い飛行の操作はそれに貢献している。プレイヤーは自由に離陸でき、滝を利用したり、川をかすめて渡ったり、急降下してジャベリンの温度を下げたりすることで、飛行時間をさらに長くできる。器用な空中の操縦は、多くの楽しいアビリティに強化された刺激的なTPSにシームレスに移行する。4種類のジャベリンの設定は、目を見張るようなアニメーションを通じて、上手に表現されている。例えば、盾を持つコロッサスを操縦して身分の低い敵の偵察兵に近づくのは、突進しているマスタングV8とレンガ壁の間に風船を挟むような感覚だった。壮観な瞬間はたくさんあり、大きな敵と戦うときは特に豪華なシーンが多い。考えたことを簡単にその通りに実行できてしまうことに対して、私は畏怖の念を抱かざるを得なかった。

自分がジャベリンの名人になったような感覚は、頻繁に発生するバグと、視認できないダメージ源や不正確な当たり判定、長いスタン効果、どういうわけか欠落したコンボの発動アクションあるいはレジェンダリーのボーナスといったバランスの問題のせいで消滅する。戦闘は最初の2、3時間に手のうちをすべて見せてしまうので、その後は一時的に魅力を失い、すでに獲得しているギアや武器の数をさらに増やすという単調なゲームになってしまう。エンドゲームに到達するまで、プレイヤーが新しく興味深い戦利品や敵に出くわすことはほとんどない。まるで非常に長い干ばつのようである。ゲームの早期には、追加の能力値があまりにもランダムかつちっぽけで役に立たない――しかも苛立たしいほど曖昧な専門用語が使われる――ので、レアリティにはなんの意味もない。

武器とアビリティに関しても完全に運任せだ。例えば、インターセプターのクラスター地雷は不思議なほど無力で、そのすぐ近くにいる敵にもダメージを与えられない。そういう場合には、プレイヤーは今回の旅を使い物にならないアビリティでなんとか終わらせようとがんばってみるか、あるいはミッションを放棄して苦痛なほど長いロード画面に耐えて装備を変えるかという二択に立たされる。その場の判断で臨機応変に装備を変えられないという欠点は、ここで痛いほど実感できる。そのため、実験は楽しい試行錯誤の過程ではなく、慎重にならざるを得ない危険なものになっている。


『Anthem』の敵のデザインはよく出来ている。敵の大半は効率的に倒すのにユニークな戦略を要求するし、すべての敵はプレイヤーが常に動き回らなければならないほど大量の飛び道具を駆使してくる。しかし、敵の種類が少なく、多様性はかなり低い。最初の数時間でほとんどの種類の敵を見てしまうので、残りはゲーム後期に登場するストロングホールドのボスと、1人か2人のドミニオンの敵しかいない。

『Anthem』の敵のデザインはよく出来ているが、種類が少ない。

オープンワールドのフリープレイモードは、もうちょっと多様性があれば十分に楽しいが、私のお気に入りは、チームワークを要求する難度と素晴らしくデザインされたボスとの戦いをフィーチャーする、3つの再プレイ可能なストロングホールドだ。しかし残念ながら、ストロングホールドのボスにもさまざまな問題がある。ハードの難易度設定では、タイラントの坑道のボスは1分以内に倒せる一方、別のネタバレだらけのストロングホールドのボス戦はノーマルの難易度でも30分以上はかかる。私はマラソンのようにボス戦を延々と続けるのが大好きだが、報酬が作業に見合わないのは問題だ。また、アッシュ・タイタンの火炎の波のようなビッグで壮観な攻撃も私の好物だが、そのような攻撃の当たり判定は気が滅入るほど正確さに欠ける。異常な遅延か、それとも他の要因によるものかは知らないが、「なんで私は今ダメージを食らったの!?」という経験は、グランドマスターの難易度ではとりわけきつい。素晴らしい報酬がかかっていることを考えると、当たり判定の問題はより一層人をイライラさせる。

最後に、大きな影響を及ぼす重要なバグの多さも無視できない。『Anthem』で過ごした40時間で、私は何度もクラッシュや接続切断に見舞われた。そしてその多くはDay 1パッチでは修正されていない。再起動でしか解決できない、ゲームの音声が完全に消えてしまうバグと、接続が切れた後で――自分のポジションが即座に他の誰かに取って代わられるため――攻略中のストロングホールドに再参加できないバグには、とりわけイライラさせられた。

総評

『Anthem』はストーリー中心のゲームよりも、Co-opのアクションRPGとしてプレイした方が楽しいが、そこにたどり着くのに、反復的なメインミッションを片付けていくという耐えがたい単純作業をひたすらこなさなければならない。そして、ゲームの楽しい側面に関しても、華やかな戦闘や上手にデザインされたボスといった優秀な要素は洗練さと多様性、バランスにおいて多くの問題を抱えており、本当の良作になるまでに長い道のりがある。時間と共に、BioWareがその強みをフルに活かして、『Anthem』を数10時間のプレイに値する作品にしてほしいと切に願っている。しかし現時点では、そこに到達するのに、非常に多くの仕事が残っている。

※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。

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Anthem

BioWare | 2019年2月22日
  • Platform / Topic
  • PC
  • PS4
  • XboxOne

『Anthem』レビュー

6.5
Okay
Anthem is a shared-world action-RPG, where players can delve into a vast world teeming with amazing technology and forgotten treasures. Up to four friends can unravel the world's mysteries and take on its most fearsome challenges together.
Anthem
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