『ドラゴンクエストXI』は欧米で圧倒的高評価――しかし一部性的要素が批判される

「膨大なボリュームで神がかった『伝統的RPG』だ」

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国内で2017年夏に発売した『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(以下、DQXI)』は9月4日、ついに欧米でも日の目を見る。対応プラットフォームはPS4に加え、国内で発売していないSteam版も発売する。Steam版はUnreal Engine 4で開発されたPS4版をベースとしており、3DS版は欧米で販売されない模様。

 

発売に先駆けて、欧米のメディアやインフルエンサーはスクウェア・エニックスからゲームを提供してもらい、各所でレビューが掲載された。

本作PS4版の評価は国内で非常に高く、IGN JAPANのレビューで9.4点をつけている他、週刊ファミ通のクロスレビューでも40点満点を獲得している。さらに、Amazonのユーザーレビューでも5点中4.5点の平均スコアとなっている。

では、欧米における評価はどうなのか? レビュー集積サイトMetacriticでは現在、46件のレビューが届いており、88点という極めて高いメタスコア(平均スコア)となっている。2018年の他のJRPGと比較すると、先月Switch向けに発売した『OCTOPATH TRAVELER』は83点、3月の『二ノ国II レヴァナントキングダム』は84点と、2018年の大作JRPGの中では今のところ最も評価が高い。

膨大なボリュームの神がかった「伝統的RPG」だ。

近年のJRPGで印象的な作品と比較すると2016年の『ファイナルファンタジーXV』は81点と遠く及ばず、欧米で複数のGOTYにノミネートされた『NieR: Automata』は『DQXI』と同じ88点のメタスコアだ。近年のJRPGで唯一、『DQXI』よりも高い評価を得ているのはアトラスの『ペルソナ5』で、こちらは93点という驚異的なメタスコアを収めている。

では、具体的にどのような評価が下されたのか。本作に88点の評価をつけたIGN USのレビューは以下のように評価している。

本作は膨大なボリュームの神がかった「伝統的RPG」だ。ストーリーよりもバトルシステム、宝物探しや探索重視の作品と言える。

ストーリーよりもゲームプレイが評価されている理由については後でもっと詳しく触れるが、ストーリーを除いた部分についてはかなりの高評価だ。


大手ゲームメディアGamespotは9点をつけ「傑出したアートディレクションとストーリーが安定感のある素晴らしいゲームプレイと1つになって、心と愛のつまった冒険を作り出している」と評価している。満点をつけたAttack of the Fanboyは「本作は古き良きJRPGの良いところがすべて洗練されている。結果は? 傑作という他ないだろう」と絶賛している。同じく満点をつけたTwinfiniteは「最後までストーリーに引き込まれる膨大なボリュームの美しいJRPGで、クリア後もまだ素晴らしいコンテンツを提供し続ける」としている。

心と愛のつまった冒険。

さまざまなメディアの評価を見ていくと、IGN USの「ストーリーよりもゲームプレイ」という評価が少数派であることがわかる。IGN USのレビューを担当したJared Pettyは本文の中でストーリーの矛盾を指摘しているが、ネタバレ防止のためか具体的な説明は割愛されている。確かに本作はストーリーの矛盾は存在するが、膨大なボリュームのファンタジー物語において矛盾を生じさせない方が難しいのかもしれない。筆者はPettyの意見も理解できるとはいえ、序盤から引き込まれ、刺激的な出来事や急展開に彩られる冒険の虜になった。そして、欧米の大半のレビュアーも同意見のようだ。


とはいえ、すべてのレビュアーが本作を高評価しているのかというと、もちろんそうではない。80点以下のレビューは2件しかないが、これらは共通して「革新性がない。新しい挑戦が足りない」という批判を提示している。

バニーガールスーツを調達するといったサイドクエストが『DQ』に何かの形で貢献しているとは思えない。

そして、IGN USのPettyはもう1つ、興味深い批判をしている。今年4月、『DQXI』における性的要素が欧米版でもカットされず、あの「ぱふぱふの集大成」が国境を超えることが明らかになった。国内では『DQXI』におけるお色気要素は一種の伝統となっているが、これまでにカットされたこともある欧米でこの伝統はそこまで浸透していない。Pettyはこれについて、以下のように書いている。

「『DQXI』における身の縮むような性的要素にも触れなければならない。女性のパーティメンバーのために性的フェティッシュのバニーガールスーツを調達するといったサイドクエストが『DQ』に何かの形で貢献しているとは思えない」

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ぱふぱふについては「『DQ』シリーズは昔からぱふぱふといった性的要素のイースターエッグが盛り込まれているが、『DQXI』はその伝統を過剰に重んじているように思う。崖の上でぱふぱふに誘われると目隠しされてはバンジージャンプをやらせるといった笑わせてくれるものもあったし、いつのまにかお化粧を施されているものもある。だが、1つのぱふぱふについては本当に嫌な気持ちになった。僕はお姉さんの暗い部屋に案内されたが、ぱふぱふが終わった後に電気がつくと彼女の父親がそこに立っていた。そこでぱふぱふはこの父親が担当したことが明かされるわけだが、この出来事が意味するものに困惑したし、面白いとは思えなかった」

 


IGN USのレビューに対するコメントの大半はPettyのこの批判についてのものであり「考え過ぎだよ!」や「『DQ』の伝統なんだからさ」などと、ゲームを庇うユーザーが大多数である。確かに、ぱふぱふは軽いジョークとして受け止めるべきであり、あまり深く考える必要はないという考えにも一理はある。しかし、こういった性的ジョークは国内と海外とで受け止め方が違うのもまた事実だ。特に#MeTooの運動などで性差別に敏感になっている昨今、ぱふぱふを不快に思う人も少なくないのは事実だろう。この辺りについて、カットするかどうかは非常に悩ましいところで、カットしても実装しても一部のユーザーが不満を覚えるのは仕方ないのかもしれない。

シルビアは素晴らしいキャラクターだった。

もう1つ、筆者が海外での受け入れ方について心配していたのはシルビアというオネエキャラである。しかし、丁寧なローカライズもあってか、シルビアの魅力は海外でも認められている模様。EGMはシルビアについて「女々しく、ステレオタイプのオネエキャラとして描かれている。しかし、スレスレのところだが受け入れられないような描写はない。そして、ステレオタイプであると同時に、シルビアはパワフルで才能あふれるキャラクターでもあり、周りから尊敬もされている素晴らしいキャラクターだった」と書いている。

 

このように、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』は一部価値観の違いによって物議を醸している部分もあるとはいえ、欧米でも極めて高い評価を得ている。本作をきっかけについに国民的IPにとどまらず、世界中でJRPGを代表するシリーズに成長できるかもしれない。今後は、本作の欧米における売れ行きにも注目していきたい。なお、これまでのドラクエの海外進出や欧米における受け入れ方についてはこちらの分析記事も読んでほしい。

2018年8月29日修正


記事の引用で媒体名が間違っているものがありましたので修正しました。申し訳ありません。コメントでのご指摘ありがとうございます。

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