63歳の母が『リングフィット アドベンチャー』を3周クリアした話

クリアの秘訣は、不屈のゲーマー魂

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『リングフィット アドベンチャー』をクリアした。63歳の母が。

しかもただの1周クリアなんてものではなく、アドベンチャーモード難易度違いの3つのコースを全てクリア、タウンミッション(サブミッション)も全てクリア、装備であるウェア・ボトムス・シューズも全ての種類をコンプリート。本作にトロフィーの概念はないが、トロコンと呼べるほどのやりこみようだ。

アドベンチャーモードの「メイン」、「エクストラ」、「マスター」3種の難易度で全てのコースの達成度を100%にしている。その証として、コースの項目に☆マークがついている。

おさらいをしておくと、『リングフィット アドベンチャー』は任天堂より2019年に発売されたフィットネスゲーム。特徴は敵を倒してキャラクターを成長させていくRPG要素が掛け合わさっていること。それによりゲーム感覚でフィットネスを楽しむことが可能だ。専用のコントローラー「リングコン」を用いることで、全身を使った60種類以上のエクササイズが体験できる。家にいながら運動ができることが巣ごもり需要と相まって大ヒット、普段ゲームをプレイしない層からも注目を集め、品薄状態が続く人気タイトルである。

『リングフィット アドベンチャー』はもともと、筆者が運動不足解消にと買ったものだったが、七日坊主くらいでほとんどやらなくなってしまったので、母に試しに「やってみる?」と何気なく聞いたのが本作をプレイし始めるきっかけとなった。

はじめ、母はカーソルを移動させてメニューやステージを選択する動作もままならず、先が思いやられた。「教えるのが面倒だな」と感じていたのも事実である。しかし母から聞かれたことに答えているうちに、Switchは自分で1からセッティングし、ほぼ毎日プレイするようになっていた。今回のアドベンチャーモードコンプリートクリアは、起動から153日、期間約9ヵ月、1日平均2時間くらいプレイしての結果である。

まさかここまでやりこむとは思わず、コンプリートしたと聞いて心底驚いた。ゲームに熱中する母を見ること自体とても珍しいことだったので、一体どんなことを感じながらプレイしていたのかが気になり、インタビューを決行。そこには、母に秘められていた不屈のゲーマー魂があった。

はじめに、完璧すぎるゲームクリアを果たした率直な感想を聞くと、「嬉しいのと、胸のつかえが下りた感じ。」と話す。胸がつかえていたというのは、敵が倒せなかったり、クリアできないステージがあったりするとモヤモヤして、「どうやったらクリアできるのだろう」と寝る前にふと考えてしまうことがあったらしい。確かに母はせっかちな性格で、気になることややるべきことがあると一目散に片づけるような人だ。その性格ゆえに、「(クリアできない場面は)ちょっとストレスでもあった」という。てっきり楽しくてはまっていたのかと思いきや、ストレスを多少感じながらプレイしていたというのは驚きだった。ポジティブに言えば、「悔しい」という気持ちがプレイの原動力になっていたと言えるだろう。

ストレスを感じながらも、投げ出さずに続けられた理由は開口一番、「最後までやらないと気が済まない性格で、敵を倒すこと、ステージを進めることが毎日の目標になっていたから」と話す。そのあと「外出も控えているので家の中でやることに困っていたから」とも続けた。『リングフィット アドベンチャー』をやり始める前の自由時間は、撮りためた韓国ドラマを見たり、YouTubeを見たりとぼーっと過ごすことが大半だったのでそこに身体を動かす時間が増えたことは娘の視点からみて良かったと思っている。しかし家でやることがなかったからという理由以上に、母の中では「敵を倒す・ステージを攻略する」という確固たる目標が芽生えていたようだ。

母は普段からゲームをやっていたタイプではない。最後にプレイしたゲームは、任天堂から1989年に発売されたゲームボーイのローンチソフト『スーパーマリオランド』だ。ゲームになじみのない母にとって、キャラクターを強化して敵を倒していくという本作のRPG要素は躓くポイントだろうなと思っていた。本作のバトルはターン制で、遭遇した敵をフィットネス動作で攻撃して倒していくものだが、属性の有利不利を考慮したり、単体攻撃・複数攻撃を使い分けなければならなかったりと、戦術を駆使して戦う必要がある。先に倒さなければ、敵キャラの体力を回復させてくるものや仲間(敵キャラ)を呼んでくるものなど、一筋縄ではいかない敵も登場する。ゲーマーならばあたり前に体得しているコツだが、母にはその知識はない。

ではどのようにしてバトルを攻略していったのか訊くと、つまるところパワープレイだった。試行回数をひたすらに積み重ねてなんとか突破口を見つける、または、「運」に任せてたまたま上手くいくことを願う。なんと泥臭い攻略法だ。しかし、攻略本が作られる前や、インターネットで攻略法が簡単に調べられるようになる前は、そうやってゲームをクリアしてきたよな、と思うと、懐かしく思うと同時に、歴戦の戦士のようでちょっと格好いいなと思った。

 
母のいう「たまたまうまくいく」は、正しく身体を動かすことでクリティカル攻撃が発動しダメージ量が上がり、倒せたなどのケースだと思われる。

ゲームはクリアに失敗するとTIPSを表示してくれることがあるが、母はそのアドバイス自体が何を言っているのか理解できなかった。そのためとにかく試行回数をこなすパワープレイで解決していったようだ。装備は組み合わせを揃えると効果が大きくなるとは知らずに見た目重視だったし、スキルマップの進行といった強化方法(攻撃力やHPなどの成長要素)に気づいたのもしばらく経ってからだったという。これは意図せずに縛りプレイをしているような状態で、難易度を自分から上げてしまっていたことになるだろう。それでも心折れずにプレイを続けたマインドにはほとほと感心させられた。

 
母は筆者が仕事をしている間にプレイするので、近くで見ることがほとんどない。

もう少し快適にプレイをさせてあげられればと思ったが、『リングフィット アドベンチャー』は直感的に分かるUIに設計されていると思うし、TIPSなども丁寧に提示されている。ゲーム側は善処してくれていたはずだが、それが伝わらないのなら意味がなかった。ラスボスは両端の雑魚から倒す、なんていう「あるある知識」は、プレイヤーにとって強力な武器であったのだなと思い知る。母にとって本作のバトルは、初見殺しの連続だっただろう。

『リングフィット アドベンチャー』のプレイを通して、何か変わったことがあるかと訊くと、「多少足腰が強くなっているような気がする」、「ボケ防止に役立っているような気がする」と、残念ながら特に劇的な変化を実感できたわけではないようだ。体重もほとんど変わっていないらしい。これほどのやりこみで特に変わったことがないとなると、これからプレイしようと思っている人に絶望を与えかねない答えだな、と感じるが、これはあくまで個人の感想として受け取ってほしい。とはいえ、コロナ禍で内向きになりがちなメンタル面に対しては非常に支えになったのではないかと思っている。ゲームになじみのない63歳をこれほどまでに惹きつけたことにコンテンツとして賞賛を贈りたいし、時間を持て余していた母の「熱中できるもの」となった本作に感謝したい。筆者は全くやっていない身分なので偉そうなことは言えないが、買ってよかったと心から思えるゲームだ。

今後は、リズムゲームなど他のゲームモードを遊んでみる予定らしい。どうやら自分で調べたようで、同じく身体を動かして遊ぶ『ファミリートレーナー』にも興味を持っていた。立派にフィットネスゲーマーとしての第一歩を踏み出している。母自身は気づいていないかもしれないが、諦めずに挑み続けるその不屈の精神は、人としてだけでなく1人のゲーマーとしても百点満点だ。

コンプリートした装備(ウェア)たち。コンプリートするためにはコインや素材が必要になるため様々なコースを奔走した。
嫌いなフィットネスはマウンテンクライマー。ゲームを通して辛かったことは「疲れているのに、ゲーム側にスクワットを指定されたこと」。
好きなフィットネスは両手を上げて腕をひねるアームツイスト。理由は「楽だから」。
左が筆者、右が母の記録。天と地の差があるとともに、それぞれの数値に貫禄を感じる。オレンジの文字の部分は上から活動時間、消費カロリー、走行(換算)距離だ。

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  • NintendoSwitch
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