焦点:日韓企業がスクランブル、半導体材料規制の「迂回」模索

焦点:日韓企業がスクランブル、半導体材規制の「迂回」模索
7月8日、日本政府による半導体製造材料の韓国向け輸出規制強化を受けて、韓国の半導体メーカーと日本の化学材料メーカーが対応に奔走している。写真は韓国の港湾都市平沢 の半導体工場で2008年3月撮影(2019年 ロイター/Lee Jae-Won)
[ソウル/東京 8日 ロイター] - 日本政府による半導体製造材料の韓国向け輸出規制強化を受けて、韓国の半導体メーカーと日本の化学材料メーカーが対応に奔走している。ただ、規制対象の化学材料は日本メーカーのシェアが極めて高く、製品の確保は容易ではない。
日本政府は先週、半導体製造に使われる「レジスト」、「フッ化水素」、「フッ化ポリイミド」の3品目について、韓国に輸出する企業に与えていた優遇的な許可を取りやめ、個別の取引ごとに審査して輸出の可否を判断すると発表した。審査には90日程度かかる。
韓国の半導体業界団体の幹部によると、サムスン電子<005930.KS>とSKハイニックス<000660.KS>は規制対象の3品目について台湾や中国などの国からの購入を増やそうとしており、十分な在庫を持つ日本以外の国の企業にも購入を打診している。
SK証券のアナリストのKim Young-woo氏によると、韓国の半導体メーカーは在庫を確保するため、既に日本以外のサプライヤーが経営する工場や合弁会社にセールス部隊を派遣したという。
サムスン電子は日本の規制強化による影響を最小限に食い止めるためさまざまな対策を検討していると説明。同社の幹部によると、副会長の李在鎔氏が7日に東京を訪れた。
SKハイニックスはコメントを避けた。
日本の輸出審査に実際どの程度の期間を要するのか、規制強化が輸出禁止に切り替わるのかなどは依然不透明だが、韓国の半導体メーカーは今回の問題が全面的な危機に発展するのを危惧している。
韓国半導体メーカーの関係者は「規制対象の3品目は、ほかでは見つけることも、すぐに買うこともできない」と述べた。「日本以外で代替的な製品が見つかっても、高い歩留りを上げるのに十分な品質なのかを確認するためにテストする必要がある」という。
また3品目のうちフッ化水素は非常に毒性が高く、レジストは劣化が速いため、いずれも在庫の積み増しは実際的な選択肢ではない。
韓国の半導体メーカーは3品目について大半を日本メーカーに依存しているが、フッ化水素は一部を中国から購入している。専門家によると、3品目の一部は在庫が最大4カ月分だという。
日本の化学材料メーカーのうちレジストを供給しているJSR<4185.T>は、広報担当者がベルギー工場から一部を供給できるとの見方を示した。
東京応化工業<4186.T>の広報担当者によると、同社は韓国に工場を持ち、「当面は」韓国の顧客向けにレジストを供給できる。しかし韓国工場はレジスト製造原料の一部を日本から輸入しなければならず、手元の在庫が尽きれば供給は減る見通しだ。
ステラケミファ<4109.T>は韓国に合弁会社を持ち、韓国の顧客向けのフッ化水素出荷が可能。ただ、顧客からの需要にどの程度応じられるかについてはコメントを避けた。同社の推計によると高純度フッ化水素市場におけるシェアは最大70%。
日本メディアの報道によると、日本メーカーはフッ化ポリイミド市場でのシェアが90%程度。政府統計によると、日本はレジストでも90%程度のシェアを握っている。
韓国の統計では、韓国の3品目の日本からの輸入は今年1─5月が1億4400万ドル。
今回の規制強化では、レジストは「極端紫外線(EUV)リソグラフィ」と呼ばれる高度な半導体製造技術に向けた製品のみが対象になるが、アナリストによると、この技術を駆使してライバルの台湾積体電路製造(TSMC)<2330.TW>に追い付こうとしているサムスンにとって規制強化は痛手となる。
韓国は3品目について、国内産業に投資して自前での開発を進める計画だが、すぐに代替的な供給元を得るのは難しい。
野村のアナリスト、岡嵜茂樹氏は「サプライチェーンの川上の材料に関していえば、材料選び、調合、温度管理など、細かいところの組み合わせ。ブラックボックス的なところが大きい」と語った。
*本文中の一部表現を修正しました。

Ju-min Park記者、Makiko Yamazaki記者

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab