ビットコイン用に火力発電所買収、環境への懸念も

採掘のための消費電力が急増、発電事業に資金つぎ込む投資家

マラソン・デジタルとハーディン発電所(写真)のオーナーは火力発電所をビットコインの採掘ハブに転換する計画だ(2019年11月撮影)

Photo: Mike Clark/The Billings Gazette

 米国では再生可能エネルギーへの移行に伴い、旧式の化石燃料発電所が閉鎖されている。だが一部の発電所は息を吹き返しつつある。ビットコインを採掘(マイニング)するためだ。ニューヨーク州の北部では、休止していた石炭火力発電所が天然ガスを燃料として再稼働し、暗号資産(仮想通貨)を採掘している。不振に陥っていたモンタナ州の石炭火力発電所は今や、暗号資産採掘のために能力を増強している。

 ビットコインなど暗号資産の価格が高騰し、投資家は発電事業に資金をつぎ込んでいる。だがそれには反感を買うリスクも伴う。イーロン・マスク氏はビットコイン採掘の化石燃料使用を巡る懸念を理由に、自身の率いる米電気自動車(EV)大手テスラで車両販売の支払いとしてビットコインを受け付けるのを停止すると述べた。これを受け市場は大荒れとなった。ビットコイン価格は現在、先々週の水準を約25%下回っている。

 電力需要が膨らむ根底には、ビットコインを採掘するための難解な関数がある。暗号通貨ネットワークの安全な運用は、パズルを解くコンピューターに依存している。パズルを解いた人は新しいビットコインを手に入れることができる。ビットコインが値上がりすればするほど、より多くの採掘者(マイナー)がパズルを解こうと競争し、そのプロセスは電力を消費する。競争が激しいほど、パズルを解くのは難しくなり、電力消費量も増える。

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 米国では再生可能エネルギーへの移行に伴い、旧式の化石燃料発電所が閉鎖されている。だが一部の発電所は息を吹き返しつつある。ビットコインを採掘(マイニング)するためだ。ニューヨーク州の北部では、休止していた石炭火力発電所が天然ガスを燃料として再稼働し、暗号資産(仮想通貨)を採掘している。不振に陥っていたモンタナ州の石炭火力発電所は今や、暗号資産採掘のために能力を増強している。

 ビットコインなど暗号資産の価格が高騰し、投資家は発電事業に資金をつぎ込んでいる。だがそれには反感を買うリスクも伴う。イーロン・マスク氏はビットコイン採掘の化石燃料使用を巡る懸念を理由に、自身の率いる米電気自動車(EV)大手テスラで車両販売の支払いとしてビットコインを受け付けるのを停止すると述べた。これを受け市場は大荒れとなった。ビットコイン価格は現在、先々週の水準を約25%下回っている。

 電力需要が膨らむ根底には、ビットコインを採掘するための難解な関数がある。暗号通貨ネットワークの安全な運用は、パズルを解くコンピューターに依存している。パズルを解いた人は新しいビットコインを手に入れることができる。ビットコインが値上がりすればするほど、より多くの採掘者(マイナー)がパズルを解こうと競争し、そのプロセスは電力を消費する。競争が激しいほど、パズルを解くのは難しくなり、電力消費量も増える。

 ケンブリッジ大学の指標によると、ビットコイン採掘の年間消費電力量は約130テラワット時で、2019年初めに比べ3倍以上となっている。これはアルゼンチンの電力消費量より多い。

 モンタナ州のハーディン発電所は石炭火力発電所だが、何年も前から不振続きだった。ところが昨年末、ナスダック市場に上場しているマイニング会社マラソン・デジタル・ホールディングスが同発電所をビットコイン採掘ハブに転換するため、ハーディンのオーナーと提携した。

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 マラソン・デジタルのフレッド・ティール最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「遊休資産だった」ので、「非常に魅力的な価格で大量の電力を入手できるようになった」と語った。

 このプロジェクトは拡大中で、100メガワット超の発電能力が計画されている。マラソン・デジタルには米ブラックロックやヘッジファンドのルネサンス・テクノロジーズなどが出資している。モンタナ州の石炭火力発電所を活用することで、ビットコイン採掘の損益分岐点は4600ドルに下がり、従来に比べ38%低くなったという。

 マラソン・デジタルは来年1-3月期までに少なくとも1日当たり55ビットコインを生産することを目指している。2020年には1日当たり平均2ビットコインを生産していた。

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 マラソン・デジタルはビットコインの採掘以外にも、今年3月時点で3億ドル近いビットコインをバランスシートに計上。これによりビットコインの将来に対する自信を示すと共に、暗号資産へのエクスポージャーを望みつつも直接的に投資できないか、あるいは投資におよび腰な機関投資家を自社株に引きつけることに尽力しているという。

 ブラックロックとルネサンスはコメントを控えた。

アトラス・ホールディングスはニューヨーク州ドレスデンにある火力発電所グリーニッジ(写真)を2014年に買収した(2月2日撮影)

Photo: John Christensen/The Chronicle Express/USA TODAY NETWORK

 とりわけ野心的かつ賛否両論を巻き起こしているのは、プライベートエクイティ投資会社アトラス・ホールディングス(コネティカット州グリニッチ)のプロジェクトだ。経営難に陥った企業の再建を手掛ける同社は、ニューヨーク州ドレスデンにある火力発電所グリーニッジを2014年に買収した。同発電所は経済的に運営が困難だったことから数年前に閉鎖されていた。

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 アトラスはまず、発電所の燃料を石炭から天然ガスに変更したうえで、この発電所の電力を利用してビットコイン採掘用のデータセンターを昨年立ち上げた。現在の採掘能力は19メガワットで、2022年末までに85メガワットへ引き上げる予定だという。

 非営利の環境保護団体「セネカ・レイク・ガーディアン」のイボンヌ・テイラー副会長は、大気汚染や水の流出で小さな地域社会に打撃が及ぶと指摘した。この地域では新鮮な空気ときれいな水のおかげで、フィンガーレイクス地方の観光業や農業、漁業が成り立っている。

 地元の運動家は先月、発電所のゲートまでデモ行進を実施。複数の団体がニューヨーク州環境保護局とアンドリュー・クオモ知事に書簡を送り、発電所の許可取り消しを求めた。

 州はこれを却下している。だが環境保護局は先月、グリーニッジの拡張計画を注意深く監視していると述べた。また、発電所の温室効果ガスへの影響について、米環境保護庁に助言を求めるとしている。

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グリーニッジ発電所にはニューヨーク州フィンガーレイクス地方の環境活動家から反対の声が上がっている(写真は同社の発電機)

Photo: John Christensen/The Chronicle Express/USA TODAY NETWORK

 グリーニッジは3月、ナスダックに上場しているSupport.com(サポート・ドットコム)との合併を通じて上場すると発表した。合意条件に基づき、サポート・ドットコムの株主は合併後の会社の株式8%を取得する。

 その見返りとして、グリーニッジはサポート・ドットコムの手元資金を事業拡大に充てる予定だ。さらにもう一つの恩恵ももたらされるかもしれない。サポート・ドットコムは連邦制度上の繰越欠損金1億4500万ドル余りを有する。このため合併会社は将来、ビットコイン事業の収益性が高くなった場合、大幅な節税ができる可能性がある。

 グリーニッジは節税の可能性に関する問い合わせには応じていない。同社は先々週、自主的な二酸化炭素(CO2)排出枠の購入を開始し、採掘で得た利益の一部を再生可能エネルギープロジェクトに投資すると発表。発電所はビットコインの採掘以外にも、電力供給を続けていると述べた。

 サポート・ドットコムからのコメントは得られていない。