ワクチン接種率低くても感染減、カギは「屋外効果」

ジョージア州アトランタで野球観戦に向かう市民(5月8日)

Photo: Ben Margot/Associated Press

 米国で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まって半年が経過し、接種率で州ごとに大きな開きが出ている。だがこれまでのところ、低接種率の州も感染拡大という大きな代償を免れている。これは科学者が指摘する「オープンエア効果」のおかげだ。

 低接種率の州はミシシッピやジョージア、アラバマ、アーカンソー州など「ディープサウス(深南部)」に集中している。これらの州は昨春には大規模な流行を免れていたが、夏季に感染が拡大。またその多くは、今年の最初の数カ月間は感染拡大を回避した。一方、現在では全米でワクチン接種率が特に高いバーモントやマサチューセッツ、ニューハンプシャーなどの北東部の州は、冬季から早春にかけて感染者が再び増加していた。

 疫病学者の話や研究結果によると、南部の州では冬から春にかけて、ウイルスが消失しやすい野外で交流することが多く、感染リスクが低減される傾向にある。南部は北部の州とは異なり、室内の空気を乾燥させる暖房を入れる必要がない。これまでの研究では、新型コロナは屋外で、湿気の多いところでは拡散しにくいことが分かっている。

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 米国で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まって半年が経過し、接種率で州ごとに大きな開きが出ている。だがこれまでのところ、低接種率の州も感染拡大という大きな代償を免れている。これは科学者が指摘する「オープンエア効果」のおかげだ。

 低接種率の州はミシシッピやジョージア、アラバマ、アーカンソー州など「ディープサウス(深南部)」に集中している。これらの州は昨春には大規模な流行を免れていたが、夏季に感染が拡大。またその多くは、今年の最初の数カ月間は感染拡大を回避した。一方、現在では全米でワクチン接種率が特に高いバーモントやマサチューセッツ、ニューハンプシャーなどの北東部の州は、冬季から早春にかけて感染者が再び増加していた。

 疫病学者の話や研究結果によると、南部の州では冬から春にかけて、ウイルスが消失しやすい野外で交流することが多く、感染リスクが低減される傾向にある。南部は北部の州とは異なり、室内の空気を乾燥させる暖房を入れる必要がない。これまでの研究では、新型コロナは屋外で、湿気の多いところでは拡散しにくいことが分かっている。

 だが、医師や公衆衛生の専門家は、夏季が近づくにつれて、気温の高い低接種率の州で感染が再び増加するかもしれないと懸念している。冷房の効いた、乾燥した室内で過ごすことが多くなるためだという。

 ワクチン接種率の低い下位10州(このうち7州がディープサウス)で少なくとも1回の接種を済ませた市民の比率は平均で37.9%。これに対し、全米平均は50.5%となっている。米疾病対策センター(CDC)のデータをウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が分析した。接種率の高い上位10州の1回目の平均接種率は62.6%だ。

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 だが、これら南部の州では2月下旬から5月下旬にかけて、感染者数はほぼ一貫して減少傾向にある。ミシシッピ州では、少なくとも1回の接種を受けた市民の比率が34%にとどまるが、3月1日以降の感染者数の7日平均は約72%減少し、1日当たり162人となっている。1日当たりの感染者数は同期間にジョージア州では約83%、アーカンソー州は81%、ルイジアナ州では51%それぞれ減少した。同3州はいずれも1回目の接種率が40%に届いていない。

ミシシッピ州でコロナワクチンの接種を受ける男性(4月7日)

Photo: Rogelio V. Solis/Associated Press

 接種率の高い上位10州(ハワイとニューメキシコ州を除きすべて北東部)のうち、9州は同期間において、感染者が春季に急増するか、一貫して増加傾向にあったが、ワクチンが本格普及して感染が落ち着いた。

 全体の70.2%が少なくとも1回の接種を済ませ、全米で接種率トップのバーモント州は、3月1日から4月4日までの感染件数の7日平均が1日当たり約190件まで倍近くに急増し、今年最悪の水準を記録していた。その後は1日当たり27.3件まで大きく改善している。メーン、マサチューセッツ、ニューハンプシャーの各州も3月下旬から4月初旬にかけて感染件数が跳ね上がったが、3月1日比でそれぞれ約32%、83%、76%減少した。

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 こうした州による違いは、いかに屋外で過ごす時間が多いか、また低湿度の屋内で冷暖房によって再循環する空気を吸う時間がいかに少ないかによって、感染動向が大きく左右されるとの見方を改めて裏付ける。

 バージニア工科大学のリンゼー・マー教授(エンジニアリング)は「外が心地良い気候だと、冷暖房を入れる確率が減る。冷暖房を入れれば、空気を再循環させることになり、空気中にウイルスがたまっている可能性がある」と指摘する。同氏は気温や湿度の違いでコロナウイルスがどれだけ生存できるかを研究している。その上で、感染の程度を左右する要素として「空気循環はマスクやワクチンに匹敵する」と話す。