トヨタ「ハリアー」は、上質な内外装に広くて快適な居住空間を持つ、上級志向のSUVだ。一般的なSUVのように野性的なイメージではなく、どちらかといえば上級セダンのような雰囲気を持ち合わせている。
トヨタ 新型「ハリアーターボ」フロントイメージ/試乗車のグレードは「PROGRESS “Metal and Leather Package”」
1997年に発売された初代と2代目のハリアーは、日本ではトヨペット店が取り扱っていたが、海外市場ではトヨタが展開する上級ブランドである「レクサス」で「RX」として販売されていた。
そして、2005年に日本でもレクサスブランドが展開されると、2009年に発売された3代目は日本国内でも「レクサスRX」として販売されるようになった。そのために、ハリアーはフルモデルチェンジを受けず、2代目のままでRXと並行して販売された。
そして、レクサスRXを離れて日本国内専売のSUVとして開発されることになったハリアーは、2013年に現行モデルとなる3代目が発売された。
試乗車のトヨタ 新型「ハリアーターボ」とモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏
3代目ハリアーの発売時点でのエンジンラインアップは、2リッター直列4気筒のNA(自然吸気)エンジンと2.5リッターをベースにしたハイブリッドであったが、2017年6月に実施されたマイナーチェンジによって、2リッターターボモデル(以下、ハリアーターボ)が加わった。
このハリアーターボは、「クラウンアスリート」やレクサス「IS」「GS」など、今日のトヨタ車に幅広く採用されているエンジンだ。今回は、この新型ハリアーターボを試乗するとともに、以下の項目を5段階で採点して、新型ハリアーターボを評価してみたい。
・運転のしやすさ(取りまわし性/視界)
・内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)
・居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)
・走行性能(動力性能/走行安定性)
・乗り心地
・安全&快適装備
・価格
・総合評価
※上記項目について、それぞれ1〜5点の5段階で採点、評価
トヨタ 新型「ハリアーターボ」フロントイメージ/試乗車「PROGRESS “Metal and Leather Package”」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」リアイメージ/試乗車「PROGRESS “Metal and Leather Package”」
新型ハリアーターボの外観デザインは、これまでのハリアーと基本的には同じ路線だ。フロントマスクは、グリルの開口部が大きいのが印象的で、最近のトヨタ車に共通する特徴となっている。
新型ハリアーターボの全長は4,725mm、全幅は1,835mmで、国内向けに開発された割にはボディの幅が広い。全高は1,690mmだからSUVの平均水準ではあるが、日本の立体駐車場では使いづらいだろう。
「取りまわし性」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」フロントイメージ/試乗車のグレードは「PROGRESS “Metal and Leather Package”」
最小回転半径が5.6mと、日本車の中では少し大回りになる。視界や取りまわし性はあまりよくないので、購入時には販売店の試乗車で車庫入れや縦列駐車を試しておくと安心だろう。
「視界」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」試乗の様子/試乗ドライバーは渡辺陽一郎氏
前方の視界はおおむね良好で、ボンネットもよく見えるのだが、斜め後方の視界はボディ後部のピラー(柱)が太めで少し見づらい。リアウィンドウの高さと幅も十分な広さではないこともあり、後方視界はいまいちだ。
評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:後方視界が見づらく、取りまわし性があまりよくない
「質感」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」のインパネ
ハリアーのインパネはソフトパッドと合成皮革が使われており、ステッチが施されているなど見栄えはまるで本革のようだ。内装の質感は高いといえる。
合成皮革は模造品ではあるが、質感で大切なのはユーザーがどのように受け取るかだろう。本革か本木目か否かなどは、さほど問題ではない。ハリアーの内装は、日本のユーザーに合わせた高級感へと仕上げられている。
インパネの中央に収まっているカーナビの周囲には、光沢のあるブラックのパネルが使われている。
「スイッチの操作性とメーターの視認性」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」のスピードメーター
スイッチの操作性は、左側のオーディオ関連が少し遠く感じるが使いにくくはない。メーターの視認性も良好だ。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:日本人好みの、クオリティの高い内装
「前後席の居住性」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」のフロントシート
トヨタ 新型「ハリアーターボ」のリアシート
前席は背もたれの高さが十分にあり、肩まわりのサポート性もすぐれている。腰の近辺は身体を包みこむようにデザインされている。座面は、乗員の身体を適度に沈ませてしっかりと支えるタイプで、上級SUVのハリアーらしい座り心地へと仕上げられている。後席は、前席に比べて座面のボリューム感が少し欠けるが、サポート性は悪くない。
居住性は、前後席ともに頭上と足元の空間が広くて快適に座れる。身長170cmの大人4名が前後席に乗車した場合、後席に座る同乗者の膝先には握りコブシ2つ半もの余裕がある。後席の頭上も握りコブシひとつ少々を確保しており、LサイズSUVの中でもハリアーは広いグループに入る。
だが、後席の着座姿勢については注意したい。床と座面の間隔が十分にあるので、座った時に膝から先が前方へと投げ出されず、足元空間を広く感じさせる。これについては基本的にはよい造りなのだが、ハリアーは床と座面の間隔を大きめに取っているので、小柄な乗員が座ると大腿部を押された感覚になりやすい。従って、小柄な同乗者がいる時は後席の着座姿勢に注意したい。それでも、ハリアーの4名乗車は快適といえる。
「荷室の広さと使い勝手」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」の荷室
SUVらしく、荷室の床面積は十分に確保されている。荷室の床は少し高めだが、荷物の収納性に不満を感じることはないだろう。ただし、防水処理などは施されていない。さらに、後席の背もたれを前方に倒すとフラットで長い荷室に変更されて、大きな荷物も積みやすい。荷室の印象はSUVというよりも、むしろLサイズのワゴンに近い。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:広くて快適な前後席と荷室
「動力性能」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」へ搭載されている2リッターターボエンジン
近年の欧州車のターボモデルには、NAエンジンに近い性格でターボの装着を意識させないクルマが多い。しかし、新型ハリアーターボではターボ独特の乗り味を感じる。エンジンが1,600回転付近に達すると過給が立ち上がるが、2,800回転以下ではおとなしく、この領域を超えると回転の上昇に伴って加速に鋭さが増していき、ターボらしくパワフルになる。試しに試乗車のDレンジでフル加速すると、ATのシフトアップは5,800回転前後で行われた。
前述のように、NAエンジンに近いターボが今時のトレンドだとすれば、新型ハリアーターボは少し懐かしいタイプのターボに属する。だが、こういったわかりやすい性格のターボを好むユーザーも、日本では少なくない。
新型ハリアーターボの最高出力は、231馬力(5,200〜5,600回転)、最大トルクは35.7kg-m(1,650〜4,000回転)だから、性能としては3.5リッターNAエンジン並みだろう。
トヨタ 新型「ハリアーターボ」シフトノブ
ATは、トルクコンバーターを使った6速の有段式で、ハリアーの2リッターNAエンジンが採用するCVT(無段変速AT)に比べてリズムのよい変速が味わえる。ATであれば、細かな速度調整が行いやすいこともメリットだ。新型ハリアーターボは、全般的にスポーティーな印象を強く受ける。
「走行安定性」
トヨタ 新型「ハリアーターボ」走行シーン/試乗ドライバー:渡辺陽一郎氏
走行安定性は、全高が1,690mmで車両重量が1,600kgを超えるSUVとしてはすぐれている。試乗車でカーブに差しかかったり車線を変更するためにハンドルを切り込んだ時の反応は、鈍さを感じさせず素直に向きを変えてくれる。
よく曲がって後輪の接地性もすぐれており、その運転感覚はSUVというよりも低重心のステーションワゴンに近い軽やかさだ。
トヨタ 新型「ハリアーターボ」へ装着されている「パフォーマンスダンパー」イメージ
走行安定性がすぐれている背景には、新型ハリアーターボのみに装着された「パフォーマンスダンパー」の効果もあるだろう。足まわりに装着されるダンパー(ショックアブソーバー)に似たパーツを、サイドメンバー(ボディ底面のフレーム)の前後に取り付けることで、ボディ剛性を高めている。パフォーマンスダンパーは単なる補強とは異なり、ボディのねじれを減衰させるため、乗り心地にもよい効果をもたらしてくれる。
評価:★★★☆☆(3点)
コメント:懐かしいターボの加速フィールと、機敏な運転感覚
乗り心地
トヨタ 新型「ハリアーターボ」走行シーン/試乗ドライバー:渡辺陽一郎氏
新型ハリアーターボは18インチタイヤを装着して、機敏な操舵感へ仕上げられていることもあり、乗り心地はLサイズの上級SUVとしては少し硬めだ。試乗の際、路面の状態によっては上下に揺すられる感覚も伴った。
現行ハリアーのプラットフォームは「RAV4」や「ヴァンガード」と共通で、採用を開始してから10年以上が経過していることも影響しているだろう。それでも、コンパクトサイズを含めたSUV全体としてみれば、乗り心地はすぐれている。
評価:★★★☆☆(3点)
コメント:乗り心地は、悪くはないがやや硬め
トヨタ ハリアーには、先進の安全装備「トヨタ セーフティセンスP」が搭載されている
ハリアーには、トヨタで高い安全装備を誇る「トヨタ セーフティセンスP」を標準装着している。ミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使うことで、車両に加えて歩行者の検知も可能としている。衝突の危険が生じた時にはドライバーに警報を発し、回避操作が行われない時は緊急自動ブレーキを作動させる。
また、同じセンサーを使って、車間距離を自動制御できる「クルーズコントロール」も装着した。作動中は先行車との車間距離を一定に保ちながら追従走行するので、ドライバーのペダル操作が大幅に軽減される。ただし、2車線道路などで、ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせる機能は、今のところ採用されていない。
評価:★★★★☆(4点)
コメント:安全性の高いトヨタ セーフティセンスPを採用
トヨタ「ハリアー」のライバル車、マツダ「CX-5」
ハリアーの価格は、高めに設定されている。ベーシックな直列4気筒2リッターNAエンジンを搭載する2WDの「プレミアム」でも324万9,720円。対する、ライバルのマツダ「CX-5」の2WD「20S プロアクティブ」は、運転席の電動調節機能などを装着しても255万9,600円に収まる。これが、ハリアーの上質な内外装の対価となると考えても、CX-5に比べてプラス50万円は高いと感じる。
また、ターボの装着に伴う価格上昇も25万円前後に達する。これも15〜20万円が相場だ。ハリアーの価格は全般的に割高といえる。
評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:ライバルと比べて、価格設定は高め
日本向けに開発したSUVでありながら、ハリアーは前述のように価格が高い。そこが選びにくいところではあるが、その代わりに他のSUVでは得られない“日本車ならではの上質感”が味わえる。それこそが、ハリアーの魅力だ。
セダンの「クラウン」、ミニバンの「アルファード」「ヴェルファイア」、そしてSUVの「ハリアー」。いずれのトヨタ車も、日本国内のユーザーの“琴線”に触れるような、上質なクルマ造りによって高い人気を得ている。
そこから考えると、ハリアーターボは、やや“ターボらしさ”が強すぎる。ハリアーの上質さからすれば、主力モデルは加速が滑らかでノイズも小さいハイブリッドだろう。
ハイブリッドの価格は、装備の違いを補正してもターボより42万円ほど高いが、JC08モード燃費はターボが13km/Lで、ハイブリッドは21.4km/L。しかも、ターボの使用燃料はプレミアムガソリンだから、7万kmを走れば価格差を燃料代の差額で取り戻すことができる。
ハリアーは、スポーティーというよりも、洗練された上質志向のSUVだ。その意味では、ターボの加速に大きな魅力を感じているのでなければ、快適なハイブリッドモデルを推奨したい。
総合評価:★★★★☆(4点)
運転のしやすさ(取りまわし性/視界):★★☆☆☆(2点)
内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性):★★★★☆(4点)
居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の使い勝手):★★★★☆(4点)
走行性能(動力性能/走行安定性):★★★☆☆(3点)
乗り心地:★★★☆☆(3点)
安全&快適装備:★★★★☆(4点)
価格:★★☆☆☆(2点)
総合評価:★★★★☆(4点)
推奨グレードとオプション
ハリアーらしい満足感を得られて、価格も妥当なグレードは「プレミアム」だ。価格は、ターボの2WDが351万9,720円、ハイブリッドは4WDのみがラインアップされており、407万4,840円だ。オプションパーツについては、徐行しながら後退している時の接触などを防ぐインテリジェントクリアランスソナー(2万8,080円)は必ず装着したい。
納期
ターボ、NA、ハイブリッドモデル、それぞれの納期が異なる。NAは約1か月、ターボは約2か月、そしてハイブリッドの納期は約3か月だ。ボディカラーは、ホワイトパールクリスタルシャインが少し長引く傾向にある(2017年8月時点)。
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