※2018年02月28日、日産「セレナ e-POWER」が正式に発表されました!劇的に向上したセレナ e-POWERの走行性能や燃費、価格などの解説から試乗まで、以下の記事からどうぞ。
>>セレナ e-POWER速試乗/Mクラスミニバン燃費No.1!走行性能も格段に向上
2018年春、日産「セレナ」にハイブリッドモデルの「e-POWER」が新たに加わることが、日産から正式に発表された。「ノート」に続く、“e-POWER”シリーズの第2弾だ。
日産「セレナ e-POWER」。東京モーターショー2017にて撮影
セレナは人気のミニバンであるのと同時に、日産の重要な基幹車種に位置付けられている。昨今の報道にもある通り、日産は完成車の検査工程に問題が生じて、3週間近くにわたり生産を中止した。これから国内の業績を回復させるうえでも、セレナは重要な車種となる。
日産「セレナ e-POWER」
セレナは、ボディサイズを5ナンバーに抑えたミドルクラスミニバンだが、全高が1,800mmを超えるボディは、室内がとても広い。市街地で運転がしやすく、なおかつ3列目シートまで快適だ。多人数乗車に適しているうえに、3列目をたためば自転車のような大きな荷物も積める。
セレナの競合車としては、トヨタ「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」、ホンダ「ステップワゴン」などの強力なライバルたちが存在し、互いに激しい販売合戦を繰り広げている。これらのライバル車に比べると、セレナは居住性やシートアレンジがすぐれている半面、本格的なハイブリッドが用意されていないという弱点もあった。
現行のセレナが搭載するエンジンは、2リッター直列4気筒のマイルドハイブリッドだ。その名称から、ハイブリッドの仲間には含まれるものの、モーターの駆動力が小さいために、セレナのJC08モード燃費は「16.6〜17.2km/L」(FF/2WD)にとどまる。セレナの燃費は、たとえばヴォクシーの「16km/L」(ノーマルエンジン)や、ステップワゴンの1.5リッターターボ「15.4〜17km/L」など、ガソリンエンジン車とほぼ同等だ。ヴォクシーハイブリッドの「23.8km/L」や、ステップワゴンハイブリッドの「25km/L」に比べると、セレナの燃費は、はるかに下回っている。
>>「発売が楽しみ」「キャプテンシートが羨ましい」価格.comで早くも話題となっている「セレナ e-POWER」のクチコミを見る
日産「セレナ e-POWER」
そんなセレナに、本格的なハイブリッドである「e-POWER」が加わることになった。セレナ e-POWERの基本的なメカニズムは、「ノート e-POWER」に準じたものだ。エンジンは主に発電機の作動に使われて、駆動はモーターが担当する。
日産「ノートe-POWER」
セレナ e-POWERの動力性能や燃費値は今のところ公表されていないが、ノートe-POWERのユニットをそのまま移植することは考えにくい。なぜなら、ノート e-POWERの動力性能は先代「リーフ」と同程度で、コンパクトなノートに搭載するなら十分な加速力を得られるが、車重がノートより約600kgも上回るセレナに搭載すれば、パワー不足に陥るからだ。
日産 新型「リーフ」
そこで考えられる方法としては、セレナ e-POWERには新型リーフと同じ動力性能が与えられるのでは、ということだ。新型リーフの駆動用モーターは、先代リーフやノートe-POWERと同じEM57型だが、インバーターが増強され、最高出力は150PS(先代型は109PS)、最大トルクは32.6kg-m(先代型は25.9kg-m)へと高められた。これにより、新型リーフは先代と比べて、動力性能が1.3〜1.4倍へと向上している。
実際に、筆者も新型リーフにはすでに試乗しているのだが、その動力性能は目覚しいものがあった。新型リーフの動力性能をガソリンエンジンに当てはめると、V型6気筒の3リッタークラスに相当するだろう。あれだけの性能があれば、セレナの重いボディに搭載してもパワー不足は生じない。ただし、モーターの出力向上に応じて、発電機を作動させるエンジン側の強化も必要になるから、2リッターエンジンを搭載するはずだ。
ホンダ「ステップワゴン スパーダ ハイブリッド」
そうなると、セレナ e-POWERの動力性能は、ホンダ「ステップワゴン スパーダ ハイブリッド」に近づく。ステップワゴン スパーダ ハイブリッドも、搭載されている2リッターエンジンで発電機を作動させ、ホイールを駆動するのは最高出力が184PS、最大トルクが32.1kg-mのモーターの役割になるからだ。ステップワゴン スパーダ ハイブリッドの動力性能も3リッタークラスに相当し、十分な余裕がある。従って、いまセレナ e-POWERの走りをざっくりとイメージするなら、ステップワゴン スパーダ ハイブリッドを試乗するとよいだろう。
この背景には、先に述べたライバル車同士の激しい競争がある。ステップワゴン スパーダ ハイブリッドが、上級の「オデッセイハイブリッド」からハイブリッドシステムを移植して性能を高めた以上、セレナ e-POWERも対応せざるを得ない。
同じように、セレナ e-POWERのJC08モード燃費も、ライバル車の動向から予想できる。ステップワゴン スパーダ ハイブリッドが「25km/L」、ヴォクシーハイブリッドが「23.8km/L」だから、この2車種は上回ってくるだろう。そうなると、セレナ e-POWERの燃費は「27〜28km/L」あたりになるのではと考えられる。
日産「セレナ e-POWER」のフロントフェイス
セレナ e-POWERは外観も異なり、フロントマスクにはブルーのアクセントが施されてe-POWERであることがひと目でわかる。
日産「セレナ e-POWER」の内装、シート
内装は、2列目がセパレートシートとなっていて、乗車定員は7名だ。従来のセレナは、ライバル車と違って2列目にセパレートシートが用意されず、8人乗りのみのラインアップであった。セレナは多彩なシートアレンジが特徴のひとつで、2列目の中央部分を前方にスライドさせることで2列目と3列目のウォークスルーを可能とする特徴を持っていたが、両側にアームレストを備えた純粋なセパレートシートを希望するユーザーもいる。そこで、新たに7人乗りが加えられた。
日産 新型「リーフ」による「プロパイロットパーキング」の作動イメージ
セレナ e-POWERの装備としては、すでに採用されている自動運転技術「プロパイロット」に加えて、新型リーフで採用された車庫入れを支援する「プロパイロットパーキング」も用意される。このあたりは、ライバル車と差を付ける要素にもなるだろう。
日産「セレナ e-POWER」のテールランプ
セレナ e-POWERは、価格もライバル車に合わせてくるはずだ。ホンダ「ステップワゴン」の「SPADA HYBRID G・Honda SENSING」は、実用装備に加えてエアロパーツ、アルミホイール、緊急自動ブレーキなどを標準装備して335万160円。トヨタ「ヴォクシー」の「HYBRID ZS」も、右側スライドドアの電動機能をオプションで追加すると(左側は標準装備)、価格は333万720円になる。日産「セレナ」の「ハイウェイスター e-POWER」も、同じような装備の主力グレードが、335万円前後で用意されるだろう。
現時点におけるセレナの価格は、売れ筋の「ハイウェイスター Vセレクション」が293万4,360円だ。「ハイウェイスター e-POWER」が335万円と仮定すれば、42万円の価格上昇になる。ライバル車のハイブリッド化に伴う価格上昇も、ステップワゴンが装備差を補正して47万円、ヴォクシーが43万円くらいだから、おおむね合致している。
なお、セレナのハイウェイスター Vセレクションはエコカー減税の対象となっているが、購入時に約8万円の自動車取得税と自動車重量税を納める。だが、セレナ e-POWERでは免税になるから、この金額を節約することも可能だ。となれば、実質的な負担額は35万円ほど、ハイブリッドのコストがもう少し高くなっても40万円前後に収まる。
レギュラーガソリンの価格を1L当たり135円、セレナハイウェイスター e-POWERのJC08モード燃費が27km/L、実用燃費がJC08モードの85%と仮定すれば、1km当たりの走行コストは「6.1円」だ。マイルドハイブリッドを搭載したセレナ ハイウェイスターVセレクションはJC08モード燃費が16.6km/Lだから、同様の計算をすると1km当たりのコストは「9.6円」。差額は「3.5円」で、購入時におけるe-POWERの負担増額が35万円なら「10万km」、40万円なら「11万km」で取り戻せる。1年間に1.5万kmを走るユーザーであれば、7〜8年だ。
日産「セレナ e-POWER」フロントイメージ
日産「セレナ e-POWER」リアイメージ
セレナにe-POWERが搭載されると、燃費だけでなく、動力性能、加速の滑らかさ、静粛性なども向上するため、走行距離が伸びるユーザーにとっては選ぶメリットが多い。
だが、価格が300万円を超えることは間違いないので、かなり高い買い物となってしまうのも事実だ。セレナハイウェイスター e-POWERの車両価格が335万円と仮定して、カーナビを含めた各種のオプションを加えると、総額では380万円前後になってしまう。安全装備の充実や燃費の向上は歓迎すべきだが、それに応じて価格も高まると、購入時のハードルは高まってしまう。
日産「セレナ e-POWER」のロゴ
そうなると、今の日産にとって必要なミニバンは、セレナのハイブリッドとなるe-POWERに加えて、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」に相当する1.5リッタークラスのコンパクトミニバンだ。このカテゴリーは日本専売だが、高い人気を得ている。
かつて、日産はコンパクトミニバンを計画していたが、世界戦略の見直しもあって立ち消えになってしまった。その意味では、今の日産には国内市場を大切にする姿勢も求められており、コンパクトミニバンの復活が期待される。
>>「新型リーフのモーターは必須」「2000ccのエンジンは載らないのでは」価格.comで早くも話題となっている「セレナ e-POWER」のクチコミを見る