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楽天モバイルMNO導入前に知っておきたい5つのポイント

楽天モバイルのMNOサービスが2020年4月8日から開始される。月額2,980円の1プランのみ、そして自社回線エリア内であればデータ通信が使い放題という、シンプルで割安な料金プランであることもあり、導入を検討している人も多いだろう。その際に気になる点や、わかりにくい点など5つイントについて解説しよう。

ポイント1:そもそも今までの楽天モバイルとの違いは何?

楽天モバイルは、格安SIMサービス(MVNOサービス)市場ではユーザー数国内1位の存在で、愛用しているという人も多い。そんな楽天モバイルが、今回MNOサービスとして、携帯電話の通信サービスを開始する。

MNOとMVNOは一字違いだが中身は大きく違う。MNOとは、NTTドコモやau、ソフトバンクのように、国から直接電波の免許を受け、自前の設備を運営している通信事業者であり、設備投資に莫大なお金がかかるし、母体となる企業の信頼性も問われる。いっぽうMVNOは、MNOから設備を借りて運営している通信事業者で、参入の敷居は低い。

従来からの楽天モバイルのMVNOサービスは、NTTドコモまたはKDDIのいずれかの回線を借りたもので、通話エリアはNTTドコモやKDDIと同じだ。いっぽう、新たに始まる楽天モバイルのMNOサービスは、現在、首都圏、中部、近畿の一部をカバーしている自社回線のLTE「B3」をメインにしつつ、自社回線の及ばないエリアをパートナーとなるKDDIのLTE「B18」が補ってサービスを行う。

以下に楽天モバイルのMNOとMVNOで利用するLTEのバンドを並べてみた。楽天モバイルのMNOは、基本的にB3(1.7GHz帯)の1バンドのみであり、原理的に通話エリアが従来のNTTドコモ/KDDI回線を使った、MVNOサービスより狭くなるのは否めない。

楽天モバイルで利用する電波の周波数帯を比較

MNOサービス
B3(自社回線)、B18(パートナー回線)

NTTドコモ回線のSIMカード
B1、B3(東名阪地区限定)、B19、B21、B28、B42

KDDI回線のSIMカード
B1、B3、B11、B18、B26(MFBIによりB18の一部として運用)、B41(WiMAX2+)、B42

通信速度に関しては、速度が遅くなる理由は多岐にわたるが、おおざっぱに言えばひとつの通信設備に対して、同時に接続するユーザー数が多くなればなるほど通信速度は低下する。そのため、ユーザーの少ないサービス開始初期については、楽天モバイルのMNOは他社よりも高速なデータ通信が可能になるのではないかと見る向きが多い。実際、現在実施中の「無料サポータープログラム」は、全国でわずか25,000人というユーザー数のため、かなり快適に使うことができている。ただし、正式サービスが始まり、ユーザー数が急増した場合に、今の通信速度がどれだけ維持されるかは未知数である。

料金プランも大きく異なる。楽天モバイルのMVNOでは「スーパーホーダイ」(キャンペーンや割引などを加味しない素の料金は月額2,980円から)や「組み合わせプラン」など、さまざまな条件の料金プランを選べた。いっぽう楽天モバイルのMNOの料金プランは月額2,980円で自社回線であればデータ通信使い放題、パートナー回線エリアなら月間2GBのデータ通信が可能な「Rakuten UN-LIMIT」ひとつだけだ。なお、MVNOのユーザーについては、移行措置として、2019年9月以前に「スーパーホーダイ」「組み合わせプラン」を契約している場合、MNO回線で従来の料金プランを継続できるという特例が設けられている。

ポイント2:自分の居場所が自社回線エリアかをピンポイントで知りたい

楽天モバイルのMNOサービスを使うに当たっては、自分が主に使うエリアがデータ通信使い放題の自社回線エリア内か、月間2GBまでのパートナー回線のエリアであるかが別れ道だ。楽天モバイルのWebページには、自社回線とパートナー回線それぞれのエリアマップが公表されている。「無料サポータープログラム」を利用中の筆者の実感だと、屋外であればおおむねこのマップ通りにエリアが展開されているが、地下鉄、地下街など地下空間はほぼ例外なくパートナー回線になる。また、大手町、新宿、渋谷などの大きなビジネス街・繁華街であっても建物の中は原則パートナーエリアだと思ったほうがよい。

もっとピンポイントで、自分のいる場所が自社回線エリアかパートナー回線エリアかどうは、手持ちのスマホで「モバイルネットワークコード」を確認すればある程度の判別ができる。モバイルネットワークコードに「440 11」が表示されていれば、その場所は楽天モバイル自社回線の電波が届いていることになる。なお、パートナー回線エリアのモバイルネットワークコードは「440 50」または「440 53」だ。なお、モバイルネットワークコードの確認は、他社のSIMカードを挿していても行える。

iOSでは、設定→モバイルデータ通信→ネットワーク選択→「自動」のトグルをオフにすることで、モバイルネットワークコードを確認できる

Android OSの場合、メーカーによって多少違いがあるが、設定→ネットワークとインターネット(接続)→モバイルネットワーク→通信事業者→手動選択の順に項目を進めることで、モバイルネットワークコードを確認できる。なお、上の画面はAndroid 10にアップデートした「Galaxy S9」のもの

楽天モバイルでは、今使っているLTE回線が、自社回線かパートナー回線かを確認できるアプリを開発中だ。正式サービス開始に間に合うタイミングで配布されること期待したい。なお、Androidスマホ向けの通信ユーティリティ「Net Monitor」を使っても、LTE回線の種類を識別できる。

通信ユーティリティ「Net Monitor」を使えば、今端末がつかんでいる電波の周波数帯を知ることができる。左画面が自社回線をつかんだ状態でL1800と表示される。右画面がパートナー回線エリアで、L800と表示される

ポイント3:楽天モバイルの格安SIMを使っているが、切り替えが必要か?

今、楽天モバイルのMVNOを使っている人は、MNOに切り替える必要があるのか?
答えは「当面、必要を感じないならそのままでよい」。この点、楽天モバイルのメッセージは従来から一貫しており、いずれはMNOに統合するが、MVNOサービスは当面継続するとしている。すでに述べてきたように、MNOとMVNOでは、料金体系やサービス内容が違いすぎるので、移行を急ぐ理由は薄い。

ただし、MNO事業とMVNO事業を両方行うことに対しての外部からの批判は少なくない。MVNOサービスの新規受付は2020年4月7日で終了することが決定しているので、今後はMNOに一本化されていく流れだ。

ポイント4:iPhoneはやはり使えないの?

現状、楽天MNOサービスではiPhoneを使うことはできない。これは楽天モバイルの掲げる「対応端末」にiPhoneが含まれていないためだ。しかし、現状をよく調べてみると話はもう少し繊細で、「iPhoneシリーズは動作確認が取れていない」というのが実態のようである。

楽天モバイルのMNOネットワークに接続するには、楽天の自社回線であるLTE「B3」と、パートナー回線で使用するLTE「B18」の2種類の周波数帯に対応していることが必要となる。楽天モバイル向け専用の特別なハードウェアは必要ないものの、全くの新規サービスなので、メーカーに実装や動作検証のノウハウや実績が乏しいということも影響しているようだ。

また、楽天モバイルのMNOサービスには3G回線がないので、音声通話のためには、端末側でVoLTEに対応しているか、音声通話機能も受け持つ独自のアプリ「Rakuten Link」のインストールが必要になる。VoLTEは、大まかな機能は同じでもキャリアごとの調整が必要なのが実際なので、スマートフォンメーカー各社の対応次第ということになる。なお、「Rakuten Link」アプリは、現在のところiPhone版が存在しないが、これは楽天モバイル側の対応次第となる。

こうしたオフィシャルな話があるいっぽうで、一部のiPhoneについて、特定の条件でデータ通信とVoLTEによる音声通話が動作したという報告がインターネット上で近ごろ急増している。現状は、あくまでも自己責任での使用であるが、興味のある人は調べてみるとよいだろう。

楽天モバイルのMVNOでは用意のあったiPhoneが、MNOサービスでは対応端末に含まれていない

楽天モバイルのMVNOでは用意のあったiPhoneが、MNOサービスでは対応端末に含まれていない

ポイント5:そもそも「Rakuten Link」って何?

楽天モバイルのMNOの特徴のひとつである「国内音声通話かけ放題」は、オリジナルアプリ「Rakuten Link」で実現するもの。同アプリは、Rakuten Linkユーザー間で行えるLINE的なメッセージングや、SMSサービス100名までのグループチャット機能、留守番電話機能などを備えている。
注意点として、楽天モバイルの端末には、「Rakuten Link」とは別に、音声通話やSMSのアプリもインストールされており、これらを使った場合には別途、従量制の料金が発生する。なお、音声通話の音質でも「Rakuten Link」と通常の音声通話アプリを使った場合では違いがあり、「Rakuten Link」のほうが音質はやや劣る。

「Rakuten UN-LIMIT」の特徴のひとつである国内の音声通話かけ放題は独自アプリ「Rakuten Link」を使った場合に限られる

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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