キタシロサイ、最後のオスが死んだ。このまま絶滅か、それとも…

ツノ目当ての乱獲の果てに
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保護活動に協力したマサイ族のクリケット選手らと並ぶスーダン(2017年6月撮影)
TONY KARUMBA via Getty Images

シロサイの亜種「キタシロサイ」が、このままでは絶滅する運命を辿りそうだ。最後のオスが死んだからだ。

ケニアのオルペジェタ自然保護区の公式サイトは3月20日、キタシロサイのオス「スーダン」が45歳で死んだことを声明で明らかにした。

スーダンは高齢に伴う合併症を患っていたが、急に病状が悪化し、立ち上がることもできなくなったため、獣医師チームが19日に安楽死させた。

キタシロサイは現在、スーダンの娘と孫にあたるメスが2頭いるだけ。このままでは絶滅となるが、スーダンの精子は冷凍保存されており、近縁種のミナミシロサイを代理母として体外受精ができないか研究を続けているという。

■「キタシロサイという種の偉大な象徴でした」

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2017年6月に撮影されたスーダン
Thomas Mukoya / Reuters

声明の中で、オルペジェタ自然保護区の最高責任者、リチャード・ビーン氏は以下のようにコメントしている。

「スーダンの死に、保護区の人間は打ちひしがれています。彼はキタシロサイという種の偉大な象徴でした。絶滅の危機に直面しているサイを含む何千種もの生物たちへの世界的な認識を高めたとして、彼の功績は記憶されるでしょう」

■キタシロサイとは?

動物保護団体「SAVE THE RHINO」などによると、キタシロサイはかつてアフリカ大陸中部に広く生息したが、中国で漢方薬、イエメンで短剣のつかに利用するため、1970~80年代に角を目当てにしたサイの乱獲が続いたことで個体数が急減した。

さらに90年代後半からは生息地のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で内戦が起きた結果、保護活動が頓挫し、2008年までに野生種は絶滅したと考えられている。

チェコの動物園に残っていたオスとメス2頭ずつをオルペジェタ自然保護区に移し、最後の繁殖を試みていた。オス1頭が2014年に死んだため、最後のオスがスーダンだった。

人類が滅ぼした絶滅動物
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ドードー(1681年ごろ絶滅)\n\nマダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた鳥類。七面鳥のようにでっぷりと太った外見だがハトの仲間と言われている。空を飛べず地上をよたよた歩いていたが、大航海時代にヨーロッパ人が乱獲したことが一因で絶滅した。ルイス・キャロルの小説「不思議の国のアリス」にも登場している。 (credit:Wikimedia)
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クアッガ(1883年絶滅)\n\nシマウマの一種だが、体の後ろ半分にはシマがなく茶色一色となっているのが特徴。アフリカ南部の草原地帯に生息していたが絶滅した。人間による乱獲と開発に伴う生息地の減少とされる。 (credit:Wikimedia)
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フクロオオカミ(1936年絶滅)\n\nオオカミの名前で呼ばれるが、正確にはコアラやカンガルーと同じ有袋類の一種。オーストラリア南部のタスマニア島に生き残っていたが、家畜を襲うことで目の敵にされ、懸賞金をかけられて駆除された。 (credit:Wikimedia)
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ションブルクジカ(1938年絶滅)\n\n中国雲南省やタイなどに生息していたシカの仲間。漢方薬の材料とするための角を目的とした狩猟と、開発による湿原の消失が原因で絶滅したと見られている。 (credit:WIkimedia)
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ジャワトラ(1980年代に絶滅)\n\nインドネシアのジャワ島に生息していたトラの亜種。熱帯林の減少や狩猟によって絶滅した。 (credit:WIkimedia)
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カリブモンクアザラシ(1952年絶滅)\n\nカリブ海に生息していたアザラシの1種。16世紀以降、脂肪から油を取るための乱獲などで大きく数を減らした。 (credit:Wikimedia)
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ブルーバック(1800年ごろ絶滅)\n\n南アフリカのケープ地方に生息していた野生ウシの仲間。体の上面と側面は青っぽい灰色の毛並みに覆われていた。18世紀以降、移入した白人の牧畜と農業で生息地が奪われ、狩猟の対象にもなったことで絶滅したとみられる。\n\n (credit:WIkimedia)
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ウサギワラビー(1890年絶滅)\n\nノウサギのような姿をしたカンガルーの一種。オーストラリア南東部に生息していたが、狩猟や生息地の牧草化で絶滅したと見られる。 (credit:Wikimedia)
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フォークランドオオカミ(1876年絶滅)\n\n南米アルゼンチン東方のフォークランドに生息していたイヌ類の動物。オオカミとの名前がついているがキツネの近縁だ。フォークランド諸島唯一の肉食動物だったが、西洋人が移入してからは家畜に被害があるとの理由で、オオカミ狩りが行われ、急速に絶滅の道を歩んだ。 (credit:WikiMedia:)
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ニホンオオカミ(1905年絶滅)\n\n日本に生息していたオオカミの一種。絶滅前の正確な資料がなく、生態はほとんど分かっていない。絶滅の原因は、明治以降に西洋犬が入ったことに伴い流行した家畜伝染病や、生息地の分断などが考えられている。 (credit:シーボルト「日本動物誌」)
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ニホンカワウソ(1979年絶滅)\n\nイタチ科のほ乳類で全長1メートル前後、清流を好み、河童のモデルともいわれてきた 日本の近代化とともに河川環境が悪化、さらに毛皮をとる目的で捕獲され、次第に生息域を減らしていった。1979年に高知県須崎市で目撃されたのが最後の姿だった。 (credit:須崎市役所)
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ニホンアシカ(1975年絶滅?)\n\n日本沿岸で繁殖する唯一のアシカ科動物。島根県の竹島が最後の生息地となっていたが、韓国が領有権を主張して同島を要塞化したことで生息が危ぶまれている。1975年に韓国の自然保護団体が目撃した記録が最後の目撃例だ。 (credit:シーボルト「日本動物誌」)
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モア(18世紀までに絶滅)\n\nニュージーランドにかつて生息していた巨大な鳥類。頭頂までの高さは最大で約3.6m、体重は250㎏ほどであったと推定されている。マオリ族のニュージーランドへの上陸後、生息地の森林の減少や乱獲により急速に生息数が減少したという。 (credit:Wikimedia)
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オオウミガラス(1850年ごろ絶滅)\n\nカナダ北東部のニューファンドランド島などに住んでいた大型の海鳥。好奇心が強いこの鳥は、羽毛や脂肪を取るためにヨーロッパ人に乱獲されて絶滅した。本来はこの鳥が「ペンギン」と呼ばれていた。 (credit:Wikimedia)
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カロライナインコ(1918年絶滅)\n\n北アメリカに生息していた唯一のインコ。フロリダ半島などに広く分布していたが、アメリカ合衆国の建国に伴う開拓の進展で個体数が減少。1918年にシンシナティ動物園で飼われていた「インカス」という名のオスが死んで、完全に絶滅した。 (credit:WIkimedia)
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リョコウバト(1914年絶滅)\n\n北アメリカ大陸東岸に大量に生息していたハト。巨大な群れを作る渡り鳥で、大量に数がいたが、羽根ぶとんの材料になる羽毛の採取などを目的とした無制限な乱獲で絶滅した。 (credit:Wikimedia)
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ワライフクロウ(1914年絶滅)\n\nニュージーランドの北島・南島にそれぞれ一亜種ずつが生息していたが、両方とも絶滅した。ヨーロッパから来た船にひそんでいたネズミに卵などが食べられたことなどが原因とみられる。名前の由来は、人間の高笑いのように聞こえる独特の鳴き声による。 (credit:Wikimedia)
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ゴクラクインコ(1927年絶滅)\n\nオーストラリア東岸に生息していたインコの一種。ゴクラクインコ(PARADISE PARROT)の名は、その姿の美しさ故につけられた。イギリスでペットして飼うことがブームになったが、蟻塚で巣を作る習性があったため繁殖が困難だった。乱獲や牧場の増加によって絶滅したと見られる。 (credit:Wikimedia)
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オガサワラカラスバト(1889年絶滅)\n\n日本の小笠原諸島に生息していたハトの一種。島の開拓による生息環境の破壊と、外部から移入したネズミ、ヤギ等による卵の食害などが影響して絶滅したと見られている。 (credit:Wikimedia)
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ピンタゾウガメ(2012年絶滅)\n\nガラパゴスゾウガメの亜種。ガラパゴス諸島のピンタ島に生息していた。最後の生き残りの「ロンサム・ジョージ」(写真)が2012年に死んだことで絶滅したとみられている。 (credit:WikiMedia:)