スイスに存在する、あることで「ヨーロッパ最高」のエレベーター。個性的なそのエレベーターで「最高」を体験したところ、人それぞれの「乗り方」が見られました。

設置場所は断崖絶壁

 スイス中部の都市ルツェルンにほど近い「ビュルゲンシュトック・レイク・リゾート」に、「ハメットシュヴァント リフト(Hammetschwand Lift)」という個性的なエレベーターがあります。


「ハメットシュヴァント リフト」、一見すると特に変ではないが……(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 日本では高層ビルや百貨店などで見られる、乗車中に外の風景を楽しめる構造のエレベーター。この「ハメットシュヴァント リフト」も同様に壁の一部がガラス張りで、外が見えますが、下の階から上の階まで高さが152.8mもあるうえに、設置場所が屋外。断崖絶壁へ張り付くように、エレベーターがあるのです。


眼下に広がるルツェルン湖は約700m下にある(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 しかも、エレベーターの眼下へ広がるルツェルン湖の標高が約430mなのに対し、エレベーターの上階は標高1114m。つまり、エレベーターの高さ自体は152.8mですが、実質的に「700mの高さから見下ろせる展望型の屋外エレベーター」なのです。「ヨーロッパでもっとも高い屋外エレベーター」とされています。

人それぞれの「欧州最高エレベーター」

「ハメットシュヴァント リフト」は1905(明治38)年に登場。スイスは当時、ヨーロッパにおける鉄道網の広がりにともなってリゾート地として注目され、観光業や、いまなおスイス観光の代表的存在である「登山鉄道」が発展しました。この「ヨーロッパでもっとも高い屋外エレベーター」も、そうした時代に造られたものです。


断崖絶壁へ張り付くように設置されている「ハメットシュヴァント リフト」(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 この「ハメットシュヴァント リフト」に標高961mの下の階から乗車すると、ほどなく崖側と反対のガラス張りになった壁一面へ青と緑の、湖と山々が織りなすスイスの風景が展開。エレベーターが上昇するにつれ、それらがより小さく、遠くなっていきます。速度は3.15m/sとのこと。


「ハメットシュヴァント リフト」から眺めた風景(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 この「ヨーロッパでもっとも高い屋外エレベーター」には12人まで乗車可能。ガラス張りの壁に寄り添って下をのぞき込む人、乗降ドアのある外が見えない崖側の壁から離れようとしない人、それぞれの「乗り方」が見られました。

●取材協力:在日スイス大使館

【構造図】断崖絶壁の屋外エレベーター


断崖に張り付く「ハメットシュヴァント リフト」を側面から見た図(2016年8月、恵 知仁撮影)。