「土・日曜日も診療していたため近隣の働く女性には人気の病院でした。駐輪スペースは自転車でびっしりで、駐車場には他県ナンバーの車もありましたね。まさか、こんな事件を起こすなんて……」

【写真】犯行現場と見られるマッサージ室に置かれたシングルベッド

 と近所の20代女性は絶句する。

「先生のことを好きと言ってごらん」

 患者の30代妊婦に性的暴行をはたらいたとして警視庁は1月22日、東京都足立区の「矢追医院」院長・矢追正幸容疑者(55)を強制性交等の疑いで逮捕した。

「好きなタイプだった」

 などと容疑を認めている。

 事件は昨年11月21日、午後の診療中に発生した。

「被害女性はこの日が4回目の診察だった。矢追容疑者は看護師を伴わずに診察し、女性をベッドのある個室に誘導。2人きりの室内で卑わいな言葉を囁きつつ約40分間、胸を揉んだり下半身を触り、キスするなどのわいせつな行為をしたとされる」(全国紙社会部記者)

 犯行時に被害女性に対し、

「先生のことを好きと言ってごらん」

 と要求したという。

 前出の20代女性は「キモすぎる」と吐き捨てた。

 患者から類似の被害相談が複数寄せられているといい、同庁は余罪を調べている。

 矢追医院は1995年に開業。婦人科のほか皮膚科・美容皮膚科・女性性感染症内科・女性泌尿器科と主に女性患者を広くカバーし、医師は容疑者ひとりだった。

「受付に女性職員が2〜3人いて、別に女性看護師が1人いる。予約しても1時間以上待たされるほど待合室が混むときもある。犯行のときは、診察に時間がかかっていてもスタッフは不審に思わなかったんでしょう」

 と通院歴のある女性。

医院のスタッフと結婚

 近所の住民らによると、容疑者の父親は眼科・耳鼻咽喉科の開業医だった。次男として生まれた容疑者は小学校から私立校に通い、私立の医科大学を卒業。医師免許を取得したのは30歳になる年という“遅咲き”だった。

 容疑者はなぜ、婦人科医を志したのだろうか。

 大学の同級生は、「クラス約100人のうち、顔と名前が一致しないひとり。何ひとつ印象が残っていない」と話す。

 無味無臭だった男は年月を費やして婦人科医になり、犯行の約2週間後のブログでは性病や避妊について述べる中、

《女性を大切にしたいと思う気持ちがあるようなら、男性にも女性の悩みにかかわる事を共に学んでもらい進んでもらいたいと、日頃、女性ばかりを診察している医師として思うところです。(中略)女性を労わりましょう》(昨年12月6日付)

 と言ってのけていた。

 年の近い兄も医師の道に進んでいる。

 しかし、実家を継いだのは容疑者だった。

「20数年前に父親が病死し、数年後にあとを追うように母親も亡くなった。容疑者は婦人科医を開業し、医院のスタッフだった女性と結婚。すぐに2女に恵まれた。奥さまは園芸が趣味で、見事なバラの花などを育て、それを容疑者が手伝ったり写真撮影していた。休診日に家族そろって出かけるなど仲はよさそうでしたよ」(近所の女性)

 開業医にとどまらず、月1回は大学病院で産婦人科外来を受け持つなど精力的に診療にあたっていた。

 自らの医院では人工授精を含めた不妊治療や緊急避妊薬の投与、更年期障害治療など婦人科分野のほか、ダイエットやシミ・ニキビ治療、耳ピアス、ワキやデリケートゾーンの脱毛といった美容分野まで幅広く手がけ、インターネットなどで宣伝していた。

すごいビジネス臭

 20代前半のときに妊婦として同院に通った女性は、

「私はいかがわしいことはされなかったけれども」

 と前置きして、次のように話す。

「妊娠で通院していたのに、“手が荒れているね。いいアロマクリームがあるよ”などとすすめられた。保険外診療が多く、料金がかさむんですよね。シミ取りだって1ミリあたりの単価は高いし、事件発覚前から2度と受診することはないと思っていた」

 ほかにも、1回行っただけでやめた女性患者は少なくなく、その理由は「料金が高い」(60代)、「あれこれすすめられるのが苦痛」(30代)などと金銭面で抵抗を感じる声が目立った。

 たしかに商魂たくましいというか、入会金1万円で美容・ダイエットの年間会員を募集するなど医者とは思えないほどビジネス臭を漂わせている。

 商品販売にも力を入れており、医院のオンラインショップでは妊活手帳やサプリメント、各種クリーム、オリジナルコスメ、果てはオリジナル製作したピアノCDまで売っていたから度を超えている。

 ブログやFacebookなどで治療・商品PR込みで発信する機会も多く、テレビの情報番組にも出演していた。

 事件の報道を受け、日本産婦人科医会はすぐ会長名で「女性、妊婦はもとより、国民を裏切る最も恥ずべき行為」

 などと断じる声明を発表し、事実確認したうえで除名を含め処分を検討するという。

 外来を受け持っていた大学病院は、「この病院で治療にあたってもらうことはもうないと考えている」(担当者)

 容疑者はFacebookで、好きな言葉に「自問自答し行動に移す」と挙げていた。

 今回は、まったく真逆の犯行で、ネット上のその言葉も削除されている……。