先月25日に米ミネソタ州で警察官がジョージ・フロイドさんの首を地面に膝で押さえつけて死亡させた事件が、全米ならず世界を揺るがしている。そんな中、抗議デモの行進に家族と一緒に参加した黒人男性が泣いている娘を慰めた警察官の姿を見て「警察官に対しての見方が変わった」と明かした。『Good Morning America』『ABC News』などが伝えている。

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アメリカ国内では、ジョージ・フロイドさんの死をきっかけに「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」を訴える抗議デモが各地に広がっている。今月2日にもテキサス州ヒューストンで抗議デモが行われたが、これに参加した黒人男性が撮影した動画が注目を集めている。

シメオン・バーティーさん(Simeon Bartee、29)はこの日、妻のシオンさん(Sion)と娘のシモーヌちゃん(Simone、5)と一緒に抗議デモの行進に参加した。しかし現場では、抗議者による破壊行為を懸念した多くの警察官が立ちはだかっており、これを目にしたシモーヌちゃんが怖がって泣き出してしまった。

そんなシモーヌちゃんに1人の警察官が近づいたところ、シモーヌちゃんから「あなた達は私達を撃っちゃうの?」と言われたという。すると警察官は片膝をつき、シモーヌちゃんと目線を同じ位置に合わせて「僕は君を守るためにここにいるんだ。わかる? 僕らは君を傷つけるためにここにいる訳じゃないんだ。わかってくれるかな?」と語りかけた。

警察官の言葉にシモーヌちゃんは泣くのを止めて、コクリとうなずき「じゃあ、私達は抗議してもいいの?」と尋ねた。これに警察官は「君は抗議することもデモ行進することもできるんだよ。君がやりたいって思うことなら何だってできるんだ。ただ何も壊さないでね」と語りかけると、シモーヌちゃんは再びうなずいた。

この様子をシメオンさんは撮影してSNSに投稿したが、動画をアップした理由はある思いが沸き起こっていたからだった。

実はシメオンさんの兄弟でハリス郡刑務所に収監されているジェローム・バーティー(Jerome Bartee)容疑者が、2016年に刑務所内の看守から暴行を受けていた。暴行を加えた5人の看守は逮捕され起訴されているが、負傷した兄弟のことを思うとシメオンさんの怒りは相当なものだったに違いない。しかし彼は今回泣いているシモーヌちゃんを慰めてくれた警察官に出会ったことで、次のように思いを語っている。

「私達は(兄弟のことで)多くの痛みに耐えてきました。しかし今回のことで、その痛みが一瞬のうちに一巡りして終わったという感じがしたのです。この警察官のおかげで『良い警察官とはこういうものなんだ』という今までとは違った見方ができるようになったんです。彼には感謝の気持ちを伝えたいと思いました。」

今回のことで、シモーヌちゃんも警察官に対しての見方が変わったとシメオンさんは確信しているという。またこの警察官は、自分にも娘がいることをシモーヌちゃんに明かし「娘のためにも早く家に帰りたいんだ」とも話していたそうだ。

画像は『SimeonB 2020年6月3日付Twitter「During the protest in Houston yesterday one of the police officers noticed my daughter crying.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)