「食べ放題」の飲食店で、ピザやケーキなどの食べ物を無断で袋に詰め込んで持ち帰ろうとしたとして、兵庫県の職員が停職3ヵ月の懲戒処分を受けたことが明らかになった。

職員は今年2月にビュッフェ形式の食べ放題の店を利用。ピザやお好み焼き、ケーキなど計5キロ超の食べ物をポリ袋に詰め、リュックに入れて、無断で持ち帰ろうとしたところを店員に見つかった。警察に通報されたが、代金を支払うなどしたため、逮捕はされなかったという。

この店では、食べ物を持ち帰る場合<1グラムあたり1円>を支払うルールがあり、それに反する可能性があった。では、持ち帰りに関するルールが明示されていない食べ放題店の場合はどうだろう。注文した料理を「食べ切れないから」と言って無断で持ち帰ることは、「窃盗」などの犯罪になるのだろうか。寄井真二郎弁護士に聞いた。

●店に無断で食べ物を持ち帰ると「窃盗罪」になる

寄井弁護士によると、他人の財物を「窃取」した者は、「窃盗罪」(刑法235条)となる。兵庫県の職員の事件のように、持ち帰りのルールがはっきりしているケースでは、「お店が占有している食べ物を無断で持ち帰ったことから、『他人の財物を窃取した者』として窃盗罪が成立することになります」ということだ。

では、持ち帰りに関するルールが明示されていない食べ放題店の場合はどうなのか。

「そのような場合でも、持ち帰ることについては禁止されていると考えるのが、社会常識と思われます。実際、店側は、人間1人分の食べる量を計算して値段を設定しているはずです。したがって、ルールの明示の有無にかからわらず、お店の承諾を得ずに無断で持ち帰ると、窃盗罪が成立します」

つまり、持ち帰りルールが明示されていないからといって、無断の「お持ち帰り」はやめておいたほうがいいということだ。では、最初は食べきるつもりでお皿に食べ物をとったものの、量が多くて食べきれず、「残すのがもったいない」というエコなつもりで持ち帰った場合はどうだろう。

この場合も、「お店の承諾を得ていない以上、窃盗罪が成立するでしょう」ということだ。「きちんと食べられる量を計算したうえで、料理をご注文ください」という寄井弁護士。いずれにしても、「食べ放題」の店だからといって、「持ち帰り放題」というわけではないという点には、注意しておきたい。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
寄井 真二郎(よりい・しんじろう)弁護士
離婚・相続等の家族関係事案のみならず、金融・企業法務、交通事故、建築瑕疵、知的財産権等幅広く業務を行っている。「家庭弁護士の訟廷日誌」、「田舎弁護士の訟廷日誌」というブログも執筆中。
事務所名:弁護士法人 しまなみ法律事務所
事務所URL:http://www.icknet.ne.jp/~shimas-s/