好景気にはやると言われているミニスカート。アベノミクスの効果は抜きにしても、涼しさとファッションが両立できる合理的なアイテムだ。

男性も魅力を感じるからこそミニスカートが流行するのなら、男はみんな足フェチなのか? 答えはYesで、中国の纏(てん)足や中世ヨーロッパの風習が物語るように、原始時代から男は足フェチなのだ。


■フェチな祖先たち

フェチの正式名称はフェティシズムで、これは崇拝とも訳され精神分析学の権威・フロイトは性的倒錯と表現している。

性器には興味を示さず、まったく関係ない身体器官や身に着けているものに対する性的衝動を意味し、異性の髪や乳房、服や靴に触れることで快感を覚える。まさに倒錯と呼ぶにふさわしい嗜好だ。

危ない人に思われがちだが、フェチの歴史は古く原始時代から始まっている。土偶や地母神(じぼしん)が示すように、この時代は女性を神や精霊として扱う傾向が強かった。

これは繁栄や豊作を祈るにあたり女性を命の源と位置づけ、象徴である乳房が崇拝されていたからだ。本来であれば性器に魅力を感じるのが純粋な欲求なのだが、乳房は性器ではないのでフェチに含まれる。つまり、フロイトの説通り解釈すると、原始人はみんなフェチだったのだ。

お尻や乳房よりもさらに性器に縁遠い足に魅力を感じるのはなぜか? 日本語で足は靴をはく部分を指し、太ももやすねを含めるなら脚と書くべきだろうが、足フェチと呼ばれる嗜好は全部が対象となる。

太ももはお尻と同様に性器に近い場所なので、性的魅力に結びつけるのも困難ではないが、ふくらはぎや足の裏に性を連想できる要素はない。

そんな部分にこそフェチの歴史は存在し、代表格は中国でおこなわれていた纏足(てんそく)だ。

纏足(てんそく)は、幼い女性の足に布を巻き、大きくならないように留める風習だ。

小さい足が魅力的と考えられていたためで、足が小さい=働かないで良い身分、バランスが悪くヨロヨロと歩く姿がかわいいなど理由は諸説あるが、科学的に考えるなら妊娠と結びつけるのが妥当だろう。

体重の増加と転ばない工夫として、妊娠するとわずかながらも足が大きくなる。逆に言えば、小さい足は妊娠していない証拠なので、オスは本能的に足の小さいメスを選ぶと考えれば合点のいく話だ。

纏足(てんそく)すると足のサイズは10cm(!)ほどに抑えられるものの、骨の成長が止まるわけではないので激痛を伴う。

行き場を失った骨が盛り上がり、最終的に足がハイヒールのように変形してしまうのだ。現代でも靴のサイズが大きいとコンプレックスに感じる女性は少なくないが、この話を思い出せば今のままで良いと思うに違いない。

■足のにおいが酒をうまくする?

中世ヨーロッパにも足フェチの歴史が残されている。1800年代には、こともあろうか女性の靴にシャンパンを注ぎ、男性がそれを飲む遊びが流行っていたのだ。

新品ではなく履いていた靴を脱いで注ぐのだから極めて非衛生的なのだが、当時の紳士には刺激的なイベントだったに違いない。近年では足フェチを自負する映画監督が、パーティー会場で女優の脱いだ靴からシャンパンを飲むシーンが報じられていた。

このほか、誰もが目にしたことがあるブーツ型のビールジョッキや、ハイヒールをかたどったシャンパングラスなど、酒と靴には浅からぬ因縁がある。

足と飲み物を結び付けるものは何か? 考えられる理由はにおいで、足の裏には多くの汗腺があり、これがにおいの原因となっているのだ。

足の裏の汗腺はエクリン腺と呼ばれ、ここから分泌される汗はほとんどにおわないのだが、靴の中の蒸れた状態でバクテリアが繁殖し、あの特有のにおいを生み出す。靴をグラスにすれば、味よりも先ににおいを堪能することは確実だ。

自分の靴から酒を飲む姿を見て、中世の女性はご満悦だったのだろうか? 病気になるから止めなさい、と言いたい。

■まとめ

脚線美の言葉が表すように、足フェチには芸術性を好むナルシストが多いという。性よりも美を求めるなら、納得のゆく選択だ。

反面、雑に扱ったり仕打ちすることを「足蹴(あしげ)にする」と表現するように、足にはネガティブな印象が強い。そのため足フェチ男は服従的なタイプが多いというから、美脚自慢の女性は高圧的に振る舞った方が良さそうだ。

(関口 寿/ガリレオワークス)