【インタビュー】滝川クリステル、被災犬アリスとの出会いを語る「彼女は福の神」 | RBB TODAY

【インタビュー】滝川クリステル、被災犬アリスとの出会いを語る「彼女は福の神」

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滝川クリステル【撮影:小宮山あきの】
滝川クリステル【撮影:小宮山あきの】 全 2 枚
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 10年ほど前から個人で活動し始め、 2014年に「一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル」を設立し、2020年を目標にアニマル・ウェルフェアに則った犬猫の殺処分ゼロを目指して継続した活動を行っている滝川クリステル。

 この度、滝川は保護犬や保護猫の等身大パネルをIKEAの店舗などの様々な場所に設置し、パネルのQRコードから飼い主のいない犬猫の情報が見られるなど、譲渡の機会を増やしていくための新プロジェクト「Panel for Life(命のパネル)」を発表。

 滝川自身も東日本大震災によって福島県浪江町に取り残されていた大型犬・アリスを保護し、家族として迎え入れた経緯がある。愛犬アリスとの出会いや、被災犬を受け入れたことによる苦労や喜び、今後の取り組みなどについて話を聞いた。

――愛犬アリスちゃんに出会ったときの状況を教えてください。

滝川:もう7年が経つんですけど、我が家に来た当時は混乱した感じでした。アリスは浪江町の庭の広い家で飼われていて、あまり散歩をしていなかったようなので、散歩に行っても『ここはどこだ』みたいな感じで、人にもワンちゃんにも飛びかかってしまう状況だったので、それを抑えるのが大変でしたね。保護犬は出どころが分からないので、分からないゆえの恐怖はあるので、最初は気をつけて接していました。

――そのころのアリスちゃんの様子は?

滝川:体調が悪くて吐いたり、げりが続いて、遠吠えもしていました。最初は私からだいぶ離れて、遠くから見ている感じでしたね。アリスは浪江町に一カ月くらい置かれていたので、テレビで福島の映像が流れると遠吠えをして鳴いていました。震災時にずっと流れていたウーッていう警報機を覚えていて、それがよみがえったのかもしれません。私が出張で1週間位いなくなったときは、アリスは大好きなご飯も嫌がってお散歩も行かなくて、ゲージから出てこなくなってしまって。私が帰ってきて近づくと震えていました。アリスは1度置いて行かれてしまった経験があるので、「置いて行かれた」ということへの怒りだったり、悲しみをぶつけてきたときには驚きましたね。

――慣れるまでには、どのくらいの時間がかかりましたか?

滝川:1年くらいですね。アリスは人間に飼われていた子で、精神的な虐待を受けていたわけではないので。虐待を受けていた子が心を開くには時間がかかりますし、野生の子は人間と暮らしたことがないので、野生の子を迎え入れる場合も大変な面はありますが、私はむしろそういう経験をすることは勉強になると思いますね。

――大変であることを認識して引き取ることも大切ですね。

滝川:もちろん、そうですね。単純に子犬や子猫を小さい頃から育てるのとは違って、大変な作業もあるんですけど、傷ついた子を拾ったり、家族にする作業というのは、もし自分が引きこもりだったり、すごく傷ついた人間だったら、それを一緒に分かち合える可能性もありますよね。例えば引きこもりのお子さんがいるご家庭だったら、そういう子を引き取って、自分と重ねるようにお互いに分かり合って、愛情を与えあったり共有することもできると思います。

――今、アリスちゃんは10歳とのことですが、一番大変なことは?

滝川:アリスは今27kg、28kgもあって大きいので、私一人で抱えられないんです。地震や何かがあったときは、抱えられないという意味では心配ですね。逃げるときに足場が悪くてガラスだらけだったらどうしようと考えて、足を守るソックスは置いてあるんですけど。大きくて力が強い子なので、散歩のときも常に気は抜けないですね。ご飯も毎日すごい量食べますよ(笑)。

――反対に、アリスちゃんが家族になって嬉しいことは?

滝川:彼女は福の神だなって思いますね。彼女が来てからは、いろんな人とのつながりがあったり、いいことばかりですね。今住んでいるマンションのオーナーさんも、私がアリスを連れていたときに、たまたま保護犬同士のつながりで出会いました。保護猫や保護犬を引き取っている方は、気持ちが温かい方が多いので、コネクションが強くなりましたし、アリスを女性一人で育てるのは大変なので、助けてくれる友達もすごく増えましたね。それから、アリスを飼うことで身をもって保護犬の引き取りを実体験したので、オリンピック招致が終わって、財団法人を自分で立ち上げようと決意をしたきっかけにもなりました。

――ペットに関することで、日本と外国で違いを感じることはありますか?

滝川:欧州では犬猫の殺処分はほとんどしないようにしています、みなさん意識が高いのでアニマル・ウェルフェアは当たり前の意識なんです。動物に苦痛を与えない、動物に苦痛を与えない、動物福祉に根ざした育て方をすることが根底にあります。安易に命を飼えるような状況にしないように、ペットショップ(生体販売)の禁止が法律で決められているところがほとんどです。

――2020年までに、どのような動物と人間の共存共生の形を望んでいますか?

滝川:2020年は、障がい者の方はもちろんのこと、動物にとっても住みやすい街にしていきたいです。日本はテクノロジーやハードの部分はハイテクで海外の方にリスペクトされているんですけど、ソフトの福祉の部分での対応はすごく遅れていると言われますし、介護犬やセラピー犬も日本ではなかなか浸透しないですよね。入れる場所も限られていて、共生共存がしづらい街になっていると思います。
日本は、幼稚園の子どもの声も騒がしいというのがニュースになる世の中なので、周りが寛容になることも大事だと思います。レストランなどに動物が来たら嫌という人がいる気持ちも分かりますけれど、NOという人ばかりを対象にするのではなくて、YESとする人たちが多くいるのでしたら、その人たちに合わせることも考えてほしいですし、何か解決策を見出してほしいです。

それと同時に、じつはもっとやらなければいけないのは動物のしつけなんです。海外では自分たちが飼ったらきちんとしつけるというのが当たり前。騒がしい子どを連れて行って迷惑をかけてしまうのと一緒で、飼い主がしつけたうえで連れていくことが大切なんです。

――昔に比べたら、動物を連れて入れる場所も増えた気がしますが。

滝川:でも、やっぱりまだまだですね。コンビニに聴導犬も入れなくて、コンビニの人が『外で待っていてください。注文して欲しいものを持ってきます』と言って外に持ってくるというケースもありますし、盲導犬も絶対的にどこでも受け入れなければいけないと法律で決まってるんですけど、勝手に各々が断ってしまったりするところがあるので、理解や知識がなさすぎると思います。人間だけの社会ではないのに、障害者の方々に寄り添って守ってくれている動物さえ拒否してしまうのは、共存には程遠いような気がします。

――「命のパネル」も多くの場所に置いてもらえるといいですね。

滝川:そうですね。IKEAのほかにも、アガタジャポン株式会社、株式会社ステラ マッカートニージャパンやテラスモール湘南などにも置いてもらえることになりました。これからも多くの企業の皆さんからの応募をお待ちしています。日本全国に命のパネルがたくさん置かれている光景を夢見ています。2020年までに、この問題をぜひ解決していきたいですね。

《小宮山あきの》

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