AKAI、YAMAHAに次ぐ新しいウィンドインストゥルメント
ローランドから2016年10月に発売となった新しいウィンドインストゥルメントAerophone(エアロフォン) AE-10。
僕はこの楽器に大いに可能性を感じました。
しかし、僕は管楽器については門外漢。
そこで、AE-10の実力を確かめるため、古い友人のIさんに試奏を依頼し、忌憚のない意見を伺うことにしました。
Iさんは関西方面で地元の学校の吹奏楽部の指導から、自らバンドなどでも幅広く活躍するハイアマチュアプレーヤーです。
まずはファーストインプレッション・・・
友人の音楽機材業者さんから、Rolandから発売されたAerophone AE-10のモニターを仰せつかり、毎日1~2時間程度ですが3週間使 い続けてきました。
AE-10はサックス奏者のために開発されたデジタル楽器。なぜならキー配列がサックスと全く同じだから。そのためにAKAIやYAMAHAとは異 なる「変な形」になっています。
- スピーカー内蔵で単独で演奏できる。懐かしいカシオのデジタルホーンを思い出します。
- ライン出力でアンプやミキサーに接続でき、拡声が容易。
- サックスと同じ運指で、ヘッドフォンで夜中でもアホほど練習できる(これがサックス奏者にとって一番大きなメリットだと思います)
- インプット端子があるので、他の音源(ミュージックプレーヤーやCD)と合わせて吹ける(僕はこれで久々にスクエアのコピー(All About Youとか 宝島とか)をやりまくりました)
- USBで外部のMIDI音源を使える(PCを経由してソフトシンセなどのコントローラーとして使える)。
ただし!
- 4オクターブのオクターブキー(ホームポジションから上下2つずつ4つある)の慣れが必要。自然に上下各2オクターブを演奏中に 選択できるまで少々時間がかかると思います。でもフラジオまでオクターブキーでどうにでもなるのは超便利。
- 同様に上下2つずつのオクターブキー間の距離が狭いので、ミスタッチによる「キョイーン」という8va上の音が混じってしまうこ ともあり、慣れが必要。
- 手が小さな人はトリルキー(特にサックスでいうTAキー)につい触れてしまう。普段でかい手向けのセルマー使ってる僕も慣れる までこの「少し手をトリルキー側の側面から浮かす様な感じ」が難しかったです。
- トーン(音色)切り替えが不便。1曲で1つの音を奏でるシンセコントロールに向いてます。複数の音をジャンジャン切り替えるの は
MIDI側でやらないと。AE-10側でやるのはかなり無理。これは他のウィンドコントローラーも同じですが。←2017年2月現在、MIDIによる外部からのコントロールが不可であることを確認しています。今のところ対応の予定はないそうです。
AKAIのEWIとの違いは・・・
- EWIのタッチセンサー(キーに触れていてはいけない)よりも、サックスの様に常にキーに触れておけるので、あの「EWIとサック スの時の頭の切り替え」をしなくてよい(これEWI使ってる人はわかりますよね?)。
- EWIと違いキー配列がサックスそのもの。
YAMAHAのWXとの違いは・・・
- やはりAE-10の方がキー配列に関してサックスとの持ち替えで違和感がなさすぎるぐらい親和性がいいです。
- ブレスコントロールの繊細さはYAMAHAが勝ちだと思います。AE-10はちょっと一本気な感じがします。
どんな人向きか・・・
- サックス吹くだけの人には→夜間練習用にはコレかなりいいです。サックスで聴こえるか聴こえないかの音で運指練習するよりも、音がヘッドフォンを通じて聴こえる点で全然効果が違う。
- シンセコントロールを使う人でサックスを吹いていない人には→従来商品でもよいと思います。サックスのキー配列のメリットがあまりないから。
- サックスを吹いていて持ち替えでバンドでウィンドシンセも!という人には→これが最適解かも。フツーにサックス吹いてる感覚の運指でシンセも鳴らせます。特にEWIもWXも持ってなくてこれからシンセやる人にはいいですね。伊東たけしさんとかがアルトとの持ち替えで使えば一気に知名度上がるでしょうね。
僕もこれまでEWIもWXもちょいちょい吹きましたが、このRolandの方が使いやすさで大変気に入りました。直感的にサックスの亜種 として入(はい)れました。
重複する部分もありますが、ここからは質問形式で・・・
1.まずはこの楽器を手にしてみてどうですか?
デザイン
すでにAKAI EWIやYAHAMA WXの棒状インスツルメンツの概念があるので、非常に大きく感じる。
質感
白い色かつ梨地処理などもないため、プラスティックが強調され、結果、EWIやWXと比べて少々安っぽい印象があった。同様に、キーが蝶貝なのは高級感と触れた感じはよいが、それ以外のサイドキーやトリルキーがプラスチックに対するメッキであり、やはり少々安っぽい印象。
重量
大きさの割に軽い印象。
装着感
EWIやWXなどこれまでの棒状電子楽器と比べて「非常に」大きい印象。スタンドマイクを併用したライブなどでは、慣れるまで、取り回しの際にぶつかったりしないかな?と感じた。
価格(78,000円税別)
機能と使いやすさで考えると安いか、妥当。
2.操作性はいかがでしょうか?
機器としての操作性
【良い点】
・キー配列がサックスと全く同じであり、基本的な操作はマニュアルがなくてもできるほど。
・スピーカー内蔵で単独で演奏できる。
・サックスと同じ運指で、ヘッドフォンで夜中でも練習できる(これがサックス奏者にとって一番大きなメリットだと思います)。
【気になった点】
・メニューの呼び出し、プリセット音の呼び出しなどが直観的ではない。またこの点に関してマニュアルが少々分かりにくい。
演奏性
【良い点】
・運指がサックスをかなり研究していると思われ、サックス奏者にとっては非常に良い。
・EWIのタッチセンサー(キーに触れていてはいけない)よりも、サックスの様に常にキーに触れておけるので、サックス持ち替えとして違和感がない。
・キーボタンのクリックに要する力加減が一般的なサックスのタンポを押さえる力と同等であり、同じく違和感がない。
・4オクターブを自在に操れるため、演奏の幅が拡がる。
・プリセットの音が豊富であり、様々な音色を楽しめた。
・ベンドスイッチが他社のローラーではなく、サムフック下のサム・コントローラーであり、より直観的に使うことができる。またベンドの幅も演奏で用いて違和感のない範囲に絞ってあり、割り切りと操作性のバランスが良い。
・MIDI音源の接続も可能であり、またラインアウトも分かりやすく、すぐにステージで使えると感じた。
【気になった点】
・4オクターブのオクターブキー(ホームポジションから上下2つずつ4つある)の慣れが必要。自然に上下各2オクターブを演奏中に選択できるまで少々時間がかかると思う。ただしこれは他のメーカーでも同じ。
・同様に上下2つずつのオクターブキー間の距離が狭いので、ミスタッチの可能性が高い。
・トリルキー(サックスでいうTAキー)につい触れてしまいミストーンを生むことが多かった。トリルキーのでっぱり方(角度など)は見直していただきたい箇所。
・サイドキー(高音キー)がサックスよりは近いので、ここは本体を出っ張らすのもよいが、操作性を重視して突起(もしくは高さ増しのカスタマイズ対応可能など)してもよいのでは?
・トーン(音色)切り替えが不便。1曲で1つの音を奏でるシンセコントロールに向いていると感じた。複数の音を次々と切り替える使い方には本体では不向き(MIDIの切り替え(例えばフットコントローラーなど)が必要)。←2017年2月現在、MIDIによる外部からのコントロールが不可であることを確認しています。今のところ対応の予定はないそうです。
3.演奏してみていかがでしょうか
・サックスとの違和感がほとんどないので、非常に入りやすくて良い。
・EWIもWXも演奏してきたが、日頃のサックス練習にもシンセとしてステージにもと高い汎用性をもって使えるという点で、既存の両者に勝っていると思う。
・見た目の違和感と、持ってみたときの親和性のギャップに驚く。とても使いやすい。
音色
- 単体のプリセット数も多く、特にアコースティック管楽器を網羅しているため、バンドの他シンセ演奏(例えばキーボードさん)で手が足りない部分を管楽器奏者が補完でき有用性が高いと思う。
リアリティ
- プリセットのトーンに関してリアリティに関する特段の感激はない。想定の範囲の電子楽器的な音。
- プリセットのトーンは本体機能のコーラスをかけても少し倍音は少な目でストレートな音になる。
- やはり本格的な音作りはMIDI音源側ですべきなのかも。
表現力
- 息の圧力に対して、音量変化の幅が小さい。設定しても劇的に幅(特に大きい方)は増えなかった。
- 逆にp~ppの音をフットペダルなどを使わなくても繊細に表現できるのはとても良い。
- ベンドスイッチによるベンドを重視しているのか、口側のセンサでのベンドやアタックの表現があまりできない印象。もう少しティピカルになった方がサックス奏者は喜ぶのでは?
いかがでしたでしょうか?。
【良かった点】【気になった点】、ごく一般の方の視点での忌憚のない感想です(あくまでも個人の感想です)。
サックス練習用としても、また既にサックスを演奏している人にとっても演奏・活動の幅を拡げてくれる可能性を持った新しいツールとしてオススメしたい製品それがAerophone AE-10です。
弊社では引き続き注目の製品として、”サンフォニックス目線”でのAE-10活用法などを提案していきます。
※AE-10で使用するケーブルについてはこちら!
各音源で設定した内容を多数本体に記憶させることが出来て、それを
割と簡単な操作で瞬間的に呼び出すことが出来るので、
「トーン(音色)切り替えが不便」と言う記載は当てはまらないのではないでしょうか。
私はエアロフォンを使用したライブで、
曲の1番と2番、後奏で音色を変更してプレイ等していますが
自然な形で出来ています。そこだけ気になりました。
コメントありがとうございます。
また、レスポンスが悪く申し訳ございませんでした。
そうですね、本文はあくまでも使い始めの人の「個人的な感想」ということでご理解いただければと思います。
実際、演奏キーを併用したショートカットによる音色の切り替え方法も複数用意されていますので「慣れ」「習熟」によって問題なくご使用いただけるようになると思います。
貴重なご意見ありがとうございました。
これから エアロフォン始めてみたいと思うのですが 教則本など出てくるんでしょうか
日本語でプロが解説してくれる 機能 使い方 感想など YouTubeなどでやってくれると
うれしいんですが。また 教則動画を月2回ぐらい YouTubeで放送してくれたらなと思います。
エアロフォン独自の操作(音色の切り替えや調整)を除けば、運指は基本的にサックスそのものです。
「演奏」という観点であれば、サックスの教本などが参考になるかと思います。
私どもは、デジタル機器やレコーディング、音響機器中心の展開をしておりますので、どちらかというと「生楽器」は苦手分野・・・。
「演奏講座」など出来ると素晴らしいのですが、現状なかなか難しそうです。
今後は、私どもの観点で、ライブハウスでのPA機材との連携やバンドでの活用などについて、掘り下げていきたいと考えております。
エアロフォン独自の機能や操作のご紹介については、ぜひ前向きに検討させていただきます。
貴重なご意見、ありがとうございました!。
口元のピッチベンドに関しては設定があるそうですよ。
YOUTUBEで紹介されてました。
感度やアンブシュアのベースポジションが変更できるそうです。
その方が言うにはサックス経験者にはプリセット設定は使い物にならないそうで、
感度をグンとあげてました。
私はまだ持っていないのであくまでも調べている過程で分かったことですので、どれほどの使い勝手かはわかりませんが、参考までに・・・。
サックス奏者の藤本匡光氏の下記動画ですね。
【Aerophone】バイトセンサーのカスタム設定方法 【How to adjust “bite sensor” of Roland-Aerophone AE-10.】
https://www.youtube.com/watch?v=TIkeLrt8dpw
非常にためになる動画でした。
アンブシュアの感度設定をここまでできるのはエアロフォン以外ないかもしれませんね(エアロフォン以外にあればむしろ教えて欲しい)。
生楽器演奏経験がほとんどない私も、サックスの演奏そのものや、サックス奏者の視点を勉強させていただいてます。
我々視点の情報もまたアップしたいと思います。
(なかなか進みませんが・・・)
わかりやすい解説ありがとうございました!!
とんでもない!お読みくださりありがとうございました!