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2013年12月18日 (水)

葉っぱが町を救う! 2億6000万円を生み出す葉っぱビジネスとは?

葉っぱが町を救う! 2億6000万円を生み出す葉っぱビジネスとは?
画像提供:株式会社いろどり

今年も早いものでもう年末。美しく色づいていた樹々も落葉を迎え、街は落ち葉であふれるようになった。家の前にあふれた落ち葉の掃除に勤しんでいる人も多いのではないだろうか。

ところでこの落ち葉たち、普通は拾い集めた上でゴミとして出されるが、徳島県にはゴミとして捨てずに、販売するビジネスを行っている会社があるという。「葉っぱビジネス」と名付けられたこの事業は、1986年にスタートし、現在では年間2億6000万円もの売上を誇る。徳島県上勝町の200軒の農家が関わり、平均年齢70歳、最高齢88歳の人が働いているらしい。今回は、この葉っぱビジネスを展開する株式会社いろどりの遠藤さんに話を伺った。

まずは葉っぱビジネスの概要について聞いてみた。

「葉っぱビジネスは、『つまもの』と呼ばれる日本料理を彩る季節の葉や花、山菜などを、栽培・出荷・販売する農業ビジネスのことです。徳島県勝浦郡上勝町を中心として活動しています。このビジネスのポイントは、商品が軽量であり、女性や高齢者でも取り組めること。農家のおばあちゃんたちはパソコンやタブレット端末を駆使して自らマーケティングを行い、栽培した葉っぱを全国に出荷しています」

タブレット端末でマーケティングとは、なんとも近代的である。そもそも、このビジネスを始めるきっかけは何だったのだろう?

「1980年代、上勝町の人口は年々減少し、主な産物であった木材や温州みかんは出荷が伸び悩んでいました。1981年には寒波によりほとんどのみかんが枯死し売上は約半分に。この大災害を乗り切るため、お年寄りが活躍できるビジネスはないかと模索し葉っぱビジネスをスタートさせました」

町の存続の危機が、葉っぱビジネスを生むきっかけになったようだ。その後、葉っぱビジネスは上勝町へどのような影響を与えてきたのだろう。

「高齢者や女性たちに仕事ができたことで出番と役割ができ、町の雰囲気も明るくなりました。老人ホームの利用者数が減り、町営の老人ホームはなくなったほどです。昨年秋には、葉っぱビジネスの映画『人生、いろどり』を公開し、全国15万人の方が来場されました。現在も全国でホール上映が続いており、年内にDVDの販売も予定されています。これらの話題性のおかげで、来町者の数や、葉っぱの販売数も伸びました」

映画の公開により、全国的に有名になった上勝町。ちなみに自治体のサポートはどうなっているのだろう?

「上勝町からは、農家さんの苗木の購入の補助などが出ており、自治体と協力して町の活性化に取り組んでいます。そのほかにも、上勝町から委託を受けてインターンシップ事業を行っています。2010年8月から現在まで500名近くを受け入れし、約20名が町内に移り住みました。その中には上勝町で起業し、新しいビジネスを始めた方もいます」

葉っぱビジネスが成功したことで、過疎化の一途だった町が活性化し、さらに移住者や若者が増えるという好循環を生んだ。このようなビジネスこそが、今後高齢化する日本中の田舎を救う、起死回生の救世主となりえるのではないだろうか。

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