5月に女子ゴルフの国内メジャーを初制覇した岡山市出身の渋野日向子さん(20)。中学時代は野球との二刀流でならし、その経験が今につながっているという。岡山の球児らにも、特別な思いを寄せる。

 高校野球は小さい頃からめっちゃ好き。何より全力プレーがいい。一塁へのヘッドスライディングとか、けがすら恐れないかのような全力疾走とか。本当に胸にくるんです。昨夏は甲子園に初めて行って観戦しました。雰囲気がすごくてめちゃくちゃ楽しかった。

 8歳のとき、ゴルフと一緒にソフトボールを始めました。

 ソフトボールの一番の思い出は、小学6年の最後の試合。大差で負けていて最終回2アウト、私の打席が回ってきました。監督は「空振りでもいいから悔いの無いようにやってこい」って。最後という特別な気持ちもあったし、監督の言葉で「うわーっ」みたいな。ボロボロと泣きながら打席に入りました。

 投手をしていて、打つ方も大好きでした。男子も含めチームで一番打率が高かったし、足も遅くはなかったから内野安打とかもあって。だけど最後の打席は空振り三振でした。もう、大泣きです。いま振り返ると笑うくらい。

 中学では野球部に入りました。ゴルフのための体力作りという目的もあったんですが、女子は私ひとり。ただ、男子との体力の差がだんだん出てきて……。ゴルフに絞ったのは、そんなことを感じていた中2のとき。ちょうど県の大会で優勝し、監督から「ゴルフ1本にした方がいい」と勧められたんです。ずっと続けようと決めていたのはゴルフだったから、アドバイス通りにしました。

 そこからはゴルフ1本。高校はゴルフ部に入って、プロめざしてゴルフ漬けの毎日でした。

 でも実は今でも、ゴルフよりソフトボールが好きなんです。オフシーズンには、小学生のときにいたソフトボールチームに練習に行っています。同じ目標に向かってみんなで頑張るって、なんかうらやましい。

 今の自分があるのは、ソフトボールの経験があるから。一番は、最後まで諦めない精神力かな。バッティングの経験がなければ、ゴルフスイングのスピードとかも今とは違っていたかも。マウンドで打ち込まれ、カッとする自分と折り合いをつけようと、もがいたことも大きい。そんな経験が今の自分をつくったと思います。

 甲子園に出ても出なくても、これまでの努力は絶対に無駄にならない。ソフトボールの経験が今の私につながっているように。ただ悔いは残さないよう、楽しんで野球をしてください。(聞き手・構成 華野優気)

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 〈しぶの・ひなこ〉 1998年、岡山市生まれ。8歳でゴルフを始め、市立上道中時代に県ジュニア選手権で3連覇し、作陽高では全国高校選手権の団体優勝にも貢献した。2018年、プロテストに合格。今年5月の「ワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップ」で、女子ゴルフの国内メジャーを初制覇。20歳178日での優勝は大会史上最年少だった。RSK山陽放送所属。