深海魚の出現は、大地震の前触れ――。こんな言い伝えは「迷信」で根拠がないと、東海大海洋研究所と静岡県立大のグループが26日発表した。各地で捕獲されたり海岸に漂着したりした事例と、その後に近くが震源となった地震の発生状況を調べ、相関関係は確認されなかったという。

 深海魚のリュウグウノツカイやサケガシラが漁の網にかかったり、浜辺に打ち上げられたりすると地震が起こる、という言い伝えは各地にある。地震直前に海底から出てくるガスや電磁波のようなものを嫌がり、海面近くに逃れてくるという説もあった。

 グループは、リュウグウノツカイなど地震の前兆とされる8魚種について、文献や地方紙の記事などで1928年11月~2011年3月に確認された336件を調査。それから30日後までに、発見場所から半径100キロ以内が震源となったマグニチュード6以上の地震を調べたところ、07年7月の新潟中越沖地震以外は起きていなかった。

 同研究所の織原義明特任准教授は「言い伝えが事実であれば防災に有益だと考えたが、そうではなかった。信じられている地方もあるが、地震の予知に役立つとは言えない」と話した。

 調査をまとめた論文は、18日付の米地震学会誌に掲載された(https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/bssa/article-abstract/571628/is-japanese-folklore-concerning-deep-sea-fish)。(桑原紀彦)