赤ちゃんのうちから絵本のページを繰るように歌舞伎や文楽に触れてほしい。古典芸能を愛する2人の女性が、手作りの紙人形劇を通して子どもたちに面白さを伝えるワークショップ(WS)「かぶこっこ」を各地で開いている。そこでは、泣いても声を上げても大丈夫。これより、始まり、始まり――。

 紙人形劇の始まりを告げる拍子木が鳴り響き、大きな拍手とともに可愛い子ギツネが飛び出した。子ギツネは鼓の皮になった親を恋しがり、源義経の家来・佐藤忠信に化けて、義経から鼓を預かった妾(めかけ)・静御前と旅をする。これは、歌舞伎や文楽の名作「義経千本桜」の名場面だ。

 11月の祝日の午後、国立文楽劇場(大阪市中央区)にほど近いビルの一室で開かれた「かぶこっこ」。0歳~小学生の子どもと親ら約30人が参加した。

 源義経や頼朝といった歴史上の人物が登場し、《子どもには難しいのでは?》と思うかもしれないが、絵本のような易しい言葉遣いや音響を生かした場面展開で子どもたちの目を釘付けにしていた。約15分の上演があっという間だった。

 紙人形劇が終わると、文楽人形遣いの吉田簑紫郎(みのしろう)さんがゲストで登場した。吉田さんは実際に舞台で使う人形を見せながら「しっぽと頭を下げると怪しいキツネに見えるよ」などと子どもたちに操り方を教えた。

 夏休みに文楽を見に行ったことがあるという大阪市の小学3年中条はるかさん(9)は「人形が重くて手がつりそう」と笑顔で話した。

■仕掛けたのは「歌舞伎女子」

 紙人形劇を演じたのは、歌舞伎ライターの関亜弓(せきあゆみ)さん(35)とイラストレーターでモデルの瓜谷茜(うりたにあかね)さん(34)。子どもが楽しめるよう動物が登場する演目を題材に、関さんが脚本にアレンジ。瓜谷さんが厚紙にアクリル絵の具で描き、人形を作った。