新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされた飲食業者を支援しようと、宮崎県新富町は、客足の遠のいた居酒屋などに町職員の弁当を発注する取り組みを始めた。

 町民の間で外食や宴会を控える動きが続く中、小嶋崇嗣町長や町産業振興課の若手職員たちが発案した。営業が困難になった15業者に呼びかけ、町職員向けの昼食用の弁当(税込み550円程度)を納入することを提案。現時点で5業者が賛同している。

 町職員は約150人。初日の4日の注文数は30程度だったが、役所内で徐々に浸透し、10日は70に増えた。注文をとりまとめる産業振興課主事の吉野雄太さん(28)は「少しでもお役に立てたら」と全職員にメールを送り、一層の協力を呼びかけている。

 9日に納品した宴会場「なかにし」の創業者中西保夫さん(72)は「この時期の現金収入は助かる」と話す。2月以降、70~80人単位の大口顧客も含め、「予約はほぼ100%キャンセルされた」。本来ならいちばん忙しい時期。「この先どうなるんでしょう」と不安そうに話した。

 11日に弁当を納める割烹(かっぽう)・民宿「初音」を営む瀧口初美さん(52)は「2月27日以降、売り上げはほぼゼロ。例年は予約で埋まるスポーツ関連の合宿も、学校や自衛隊の歓送迎会もキャンセル。この不安、わかりますか」。数十の弁当の利益はさほど多くはないが、「注文してくれた気持ちがうれしくて……。大きな勇気をもらいました」と声を詰まらせた。若い職員に元気をつけてもらおうと、県産若鶏の唐揚げをつくるという。(佐藤修史)