新型コロナウイルスの感染拡大で、長野県などが自粛を求めても登山者が絶えない。県警山岳遭難救助隊は感染対策を強いられ「万全の態勢を取るが通常より時間がかかりそう」(同隊)なうえ、感染者が救助されると地域医療の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。山岳団体も自粛を強く呼びかけている。

 遭難救助や登山者への安全指導にあたる同隊だが、今年は遭難者や急病人が感染しているおそれがあり、隊員やヘリコプターのパイロットらも対策を取らざるをえない。このため、救助の依頼があれば体調や海外渡航歴などを尋ね、保健所と連携してチェック。感染の疑いが判明すれば防護服を着ての出動となる。

 そんななか、大型連休に入ったばかりの4月25日に八ケ岳連峰で滑落事故が発生。県警などによると、東京都内の30代男性が単独で阿弥陀岳(2805メートル)に入山。午後1時過ぎに滑落し、県警ヘリで諏訪市内の病院に搬送された。

 関係者によると、男性は救助後に感染の疑いがあることがわかり、隊員やパイロットが一時自宅待機したという。登山者によって活動に影響が出た形だが、県警は「本人が特定されて遭難者が不利益を被る可能性がある」(山岳安全対策課の伴野達也次長)と述べるにとどめ、事実を公表していない。