東京電力福島第一原発事故後の原発の安全対策費が、電力11社の合計で少なくとも5.2兆円にのぼることが朝日新聞の調べでわかった。新規制基準の施行から7年。テロ対策施設の費用を軸になお増え続けている。まだ費用を計上できていない原発も多く、安全対策費の総額は今後さらに増える見込みだ。電源別の発電コストで原発を最安とした政府の評価の前提が揺らいでいる。

 朝日新聞は2013年から、事故後に必要になった安全対策費の最新の見積額を、原発を抱える各社に尋ねてきた。再稼働に向けた審査を申請した原発は計27基。地震や津波、火災などへの備えや過酷事故対策などの費用が含まれる。今年7月時点の総額は少なくとも5兆2376億円で、13年の5倍超になっている。

 前年からの増加分は約1600億円。大半は、新基準で設置を義務づけられたテロ対策施設の費用だ。日本原子力発電は東海第二(茨城県)で610億円かかることを初めて明らかにした。関西電力は福井県内の2原発3基で計約430億円を追加した。原子力規制委員会の審査などを通じ、設計や工事の見直しが必要になったためという。

 テロ対策施設は、航空機が衝突するようなテロ攻撃を受けても遠隔で原子炉を制御するためのもの。費用が明らかになった8原発の合計で1兆2100億円にのぼる。九州電力川内1、2号機(鹿児島県)などでは設置期限に完成が間に合わずに基準不適合となり、今年3月以降、原発の運転停止に追い込まれている。