大型で強い台風10号は7日午前8時時点、長崎県対馬市の北約70kmを、時速約40キロで北へ進んでいました。

 中心気圧は950ヘクトパスカル、最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートルでした。

 気象庁は、記録的な大雨や暴風、高波、高潮に「最大級の警戒」を呼びかけています。各地の最新情報を、タイムラインでお伝えします。

■西鉄バス、大半の路線再開へ[13:50]

 西日本鉄道(福岡市)は7日、台風10号の接近に伴って始発から運行を見合わせていた一般路線バスについて、福岡、佐賀両県内の大半の路線で同日午後1時から順次運行を再開すると発表した。

 各路線で安全確認ができたことで再開を決めたという。ただ、福岡市の能古島を走る路線や大学につなぐ路線など一部で運行の見合わせは続けているという。

 西鉄のバス運行を巡っては台風10号の接近に伴って全地区での運行見合わせを4日に発表した際、「最高に屈強な西鉄バスが止まるなんて」とSNSに投稿されるなどネット上で驚きの声が上がっていた。

■福岡市地下鉄、全線で運転再開[12:00]

 福岡市交通局は7日正午から、市営地下鉄空港線の姪浜―西新、箱崎線の馬出九大病院前―貝塚の運行を再開した。ほかの区間も10~20分間隔に減らして運行していたが、順次、全線で通常ダイヤに戻すという。

 市営地下鉄は台風10号の接近で、7日も始発から両区間の運行を見合わせていた。

■長崎県、各地で屋根や窓に被害[11:20]

 台風10号は7日、勢力を保ったまま長崎県を直撃。長崎市野母崎で7日午前1時45分、観測史上最高となる最大瞬間風速59.4メートルを記録するなど、各地で強い風と雨に見舞われた。

 長崎市古川町の中通り商店街では倉庫のトタン屋根が強風でめくれあがり、通路をふさいだ。午前7時すぎに巡回した消防団員が発見し、通報した。撤去作業が進む現場を見守っていた消防団の分団長・北村貢司さん(60)は「人通りが少なくてまだよかった」。

 平戸市の「平戸海上ホテル」では同日未明、南側の階段の窓ガラスが割れた。幅約5メートル、高さ約2メートルに十数枚あったが、すべて枠ごと落ちたという。避難の住民ら約100人の宿泊客やスタッフにケガはなかった。鈴木哲也代表(51)は「海沿いなので高潮も警戒していた。お客様やスタッフが無事でよかった」。

 7日午前2時までの1時間で80ミリ以上の雨が降った五島市。民宿「あびる」の阿比留弘幸代表(42)によると、辺りではこの時間帯、雨や風が一段と強まったという。建物の窓から外の様子を見ると、建物のすぐ横にある自動販売機が倒れていた。午前3時ごろから3時間にわたって停電。暗闇の中で雨風が収まるのを待った。「新型コロナウイルスの影響で減った客が少し戻ってきた時にこの台風。このまま早く、無事に通り過ぎてほしい」

■鹿児島市でタクシー会社の壁崩れる[11:00]

 鹿児島湾に近い鹿児島市与次郎2丁目では、タクシー会社の木造事務所の東側と南側の壁の一部が大きく崩れた。事務所内の棚は倒れ、窓がサッシごと内側に飛ばされており、職員らが片付けに追われていた。タクシーに被害はなく、営業は続けるという。

 女性職員によると、事務所の配車担当者から「窓ガラスが壊れた」と連絡を受けた。窓ガラスにテープをはるなどして台風に備えていたが、6日午後10時ごろに事務所に着くと、すでに壁が落ちていた。

 男性職員は「海に近く、ほかの建物の並びの切れ目に面しているので、風が強く当たったのかもしれない。これまでの台風では5、6年前に植木が1本倒されただけだったのに」と驚いていた。

■鹿児島・枕崎で空き家倒壊[11:00]

 鹿児島県の薩摩半島南端の枕崎市は6日から7日未明にかけて強い雨風にさらされ、同市新町の海岸沿いの道路に立つ空き家1棟が倒壊した。2階建てとみられ、けが人はなかった。

 隣家の男性(65)は「6日午後8時過ぎに『バリバリ』と音がした。風が強くて見に行かなかったが、その時に倒れたのではないか」と話していた。

 気象庁によると、同市では6日午後7時49分に最大瞬間風速45.9メートルを記録していた。

■山口県で3423世帯が避難[10:30]

 山口県内では7日午前10時までに5人が軽傷を負った。

 山口市によると、7日午前4時20分ごろ、同市陶(すえ)で60代女性が建物の修理中にタイヤが頭に当たって軽傷を負った。同市大内御堀では午前4時35分ごろ、50代女性が風にあおられて転倒。同市名田島では午前5時20分ごろ、20代男性の軽自動車が風にあおられてガードレールに接触し、左足を打撲した。防府市によると、同市田島で6日午後8時半ごろ、40代女性が乗用車のドアに足を挟まれた。

 山口県によると、県内19市町では7日午前8時現在で、3423世帯5188人が自治体が設けた避難所に避難しているという。

 下関市は、市内の土砂災害警戒区域にある1万7778世帯、4万2191人に避難勧告を出している。

 中国電力によると、山口県内では午前8時現在で約6万6290世帯で停電している。防府市で2万8820世帯、宇部市で約1万5440世帯など。県内19市町のうち、14市町で停電が続いている。

■宮崎・椎葉村で4人安否不明[10:00]

 宮崎県は7日、椎葉(しいば)村下福良(しもふくら)で土砂災害が発生し、男性3人と女性1人が安否不明になっていると発表した。

 県や村などによると、建設会社「相生組」の事務所と敷地内にある住居が土砂に押し流され、全壊。社長の男性は自力で脱出したが、妻と長男、従業員の20代男性2人の計4人が安否不明になっているという。

 現場は十根川沿い。県は7日午前9時半現在、「二次災害の危険性があり、救助活動には着手できていない」としている。

■屋久島、強風で避難所の屋根はがれる[10:00]

 鹿児島県屋久島町によると、台風10号が接近した6日午後、避難所になっていた宮之浦体育館の屋根の一部が強風にあおられて一部がはがれた。当時は44人が避難していたが、町は体育館の建物被害がさらに広がる危険があるとして、消防団の車3台で近くの高校に移動したという。

■宮崎県では強風で堆肥舎倒壊[8:00]

 宮崎県によると、7日午前8時までに60~90代の男女計6人が頭や顔などにけがをした。いずれも軽傷という。

 宮崎市の80代女性は道路を歩行中に風にあおられて転び、右目をけが。串間市の70代男性も自転車を運転中に強風で転倒し、頭から出血。えびの市の60代男性は自宅の壁を修理中、屋根から落下した瓦が腰にぶつかり、打撲を負った。小林市では、強風により堆肥(たいひ)舎1棟が倒壊した。

 県のまとめでは、7日午前0~3時が避難のピークで、1万1838世帯、2万2677人が公民館などで避難していた。午前8時時点の避難者は3268世帯、6425人。

 6日午後9時現在、木城町、日向市、美郷町、門川町の一部の2606世帯、5852人に避難指示を発令。24市町村の46万6287世帯、99万7623人に避難勧告が出た。

■鹿児島県で40万人超に避難指示[8:00]

 鹿児島県では7日午前8時現在、強風域にある自治体での避難指示や避難勧告が続いている。8人のけが人が確認された。枕崎市によると、海岸沿いの空き家1棟が倒壊したが、けが人はないという。

 県や各自治体などによると、志布志市で6日午前8時半ごろ、90代女性が避難所の入り口の階段を上る際に転んで側頭部を打ち、病院に運ばれた。急性硬膜下血腫の大けがという。

 指宿市では6日正午すぎ、40代男性が自宅の庭で台風に備えている際に両腕を脱臼。姶良市でも6日正午ごろ、70代男性が台風に備えた作業中に転んで頭を打ち、治療を受けた。

 県の7日午前8時現在のまとめによると、鹿児島市や垂水市、鹿屋市などの6市町で約21万6千世帯(約40万8千人)に避難指示、霧島市や志布志市、出水市などの13市町で約26万1千世帯(約52万6千人)に避難勧告が出されている。約1万2800世帯の約2万2700人が避難中という。

 九州電力によると、午前7時時点で、県内37市町村の約20万9170戸が停電しているという。

■JR博多駅、改札にシャッター[7:30]

 台風10号の接近に伴い、JR博多駅(福岡市)では7日始発からJR九州の九州新幹線と在来線の全線、JR西日本の山陽新幹線が運休した。普段は通勤、通学客でにぎわう朝7時半ごろ、駅の構内を歩く人はほとんどおらず閑散としていた。

 各改札口にはシャッターが下ろされ、運転取りやめを知らせる掲示物が目立った。駅の新幹線改札前にある、出発列車を案内する電光掲示板の表示もゼロ。通勤途中の男性は「いつも通りかかるが、こんな光景は珍しい」と話し、自身のスマートフォンで撮影していた。

■5県で20人けが[7:00]

 消防庁の7日午前7時現在のまとめによると、台風10号によるけが人は5県で20人。内訳は山口県4人、佐賀県1人、長崎県2人、宮崎県5人、鹿児島県8人。鹿児島県の2人が重傷で、ほか18人はいずれも軽傷という。

■長崎県で6人けが[6:00]

 長崎県では午前6時現在、6人がけがをした。

 県災害対策本部によると、7日午前1時20分ごろ、避難所になっている五島市池田町の勤労福祉センターで運動室の窓ガラスが割れ、避難していた50~90代の男女4人が手足に軽傷を負った。

 また、6日午後6時10分ごろ、佐世保市吉井町で建物の屋根を修理をしていた60代男性が強風にあおられ転落。全身を打撲して全治3週間と診断された。

 雲仙市国見町では7日午前1時10分ごろ、親族宅で外の様子を見ようとドアを開けた80代男性が強風にあおられて倒れ、左腕やこめかみを打つ軽傷を負った。

 佐世保、五島、壱岐の3市の全13万6599世帯30万6694人に避難指示、それ以外の18市町全47万3688世帯102万7725人に避難勧告が出ており、長崎市や佐世保市を中心に2万5098世帯、5万0444人が避難している。

■長崎で最大瞬間風速59.4メートル[6:00]

 台風10号の影響で、長崎市の野母崎では7日午前1時45分に、最大瞬間風速59.4メートルを観測。福岡市の福岡空港でも午前5時25分に最大瞬間風速39.1メートルを観測し、いずれも観測史上最高記録を更新した。

 宮崎県を中心に大雨も降り、美郷町で7日午前0時10分までの24時間雨量が488.5ミリ、えびの市で同5時20分までに477.5ミリに達した。

 7日午前6時時点で、九州電力によると九州で計47万5910戸が停電。長崎県内の19%、鹿児島県内の18%が停電している。

 中国電力によると、7日午前6時時点で、中国地方でも山口県を中心に4万9230戸が停電している。

■九州の停電、45万戸超に[5:00]

 九州電力によると、台風10号の影響で7日午前5時現在、管内の全7県で約45万7570戸が停電している。鹿児島県が約21万4920戸と最も多く、停電率は18.4%。長崎県が約15万6780戸、熊本県が約2万5280戸、宮崎県が約2万4030戸、大分県が約1万7200戸、佐賀県が約1万5090戸、福岡県が約4280戸となっている。

■九州の停電、22万戸超に[6日22:00]

 九州電力によると、台風10号の影響で6日午後10時現在、管内の全7県で約22万770戸が停電している。鹿児島県が約20万3340戸と最も多く、停電率は17.5%。その他は宮崎県が約1万2600戸、長崎県が約2090戸、熊本県が約940戸、大分県が約870戸、佐賀県が約680戸、福岡県が約250戸となっている。

■宮崎県で転倒などで5人けが、堆肥舎も倒壊[6日21:00]

 宮崎県によると、台風10号の強風にあおられて転倒するなどして、6日午後9時現在まとめで、宮崎、延岡、串間、えびのの4市で60~90代の男女5人が軽傷を負った。小林市では強風により堆肥(たいひ)舎1棟が倒壊する被害があった。県内の全26市町村の1万1784世帯、2万2539人が体育館や公民館に避難し、不安な一夜を過ごした。

 避難指示が出たのは日向市、木城町、美郷町、門川町の一部地域。宮崎市や延岡市、都城市など24市町村の46万6287世帯(99万7623人)には避難勧告が出された。

■避難指示・勧告、少なくとも850万人に

 異例の勢力を保つ台風10号が接近した6日、九州と中国、四国地方で少なくとも850万人に避難指示・勧告が出されるなど厳戒態勢が敷かれた。暴風域に入っていた宮崎、鹿児島の両県では、負傷者計10人が確認された。沖縄・大東島地方では建物被害も出た。

 鹿児島県などによると、6日午後9時20分時点で5人がけがをした。奄美・加計呂麻(かけろま)島で5日、70代男性が避難所の設営中に転倒し肋骨(ろっこつ)を骨折。喜界(きかい)島でも80代女性が雨戸に手を挟んで軽傷を負った。宮崎県でも60~90代の男女5人が軽傷を負った。

 沖縄県によると北大東島・北大東空港のシャッターが破損したり、風で飛んだトタンで住宅の窓が壊れたりする建物被害が9件あった。負傷者はいなかった。

 九州電力によると7日午前0時現在、九州全県で計29万3490戸が停電している。

 台風の北上に伴い、九州や中国、四国地方の自治体は避難指示や勧告の発表を急いだ。6日午後8時時点で、少なくとも避難指示を計約179万人、避難勧告を約679万人に発出。九州では避難指示・勧告が計837万人に出され、避難勧告が愛媛県で約7万人、山口県で約4万人に出た。

 福岡市では午後3時に市内の土砂災害や浸水被害の恐れがある地域に住む77万3914人に対して避難勧告を発出。夜間に風雨が強まることが想定され、天神や博多駅前など中心街も含めて出したという。一度に出した避難勧告では「記憶にない規模」(市の担当者)としている。

 九州では7日も台風の影響が続き、JR九州は九州新幹線・在来線ともに全線の運休を決めている。JR西日本の山陽新幹線も博多―広島を運休する。

■宮崎市、21カ所の避難所が満員に[6日20:00]

 宮崎県では午後4時までに、日向市の1298世帯2874人と、木城町の538世帯1329人に避難指示が出された。また宮崎市など22市町村の約46万3873世帯の約99万2108人に避難勧告が出された。県内全26市町村の7269世帯1万3533人が体育館や公民館に避難している。

 宮崎市花山手東3丁目の市総合福祉保健センターは、午前9時に避難所として開設したが、次々と避難者が訪れ、午後1時ごろには満員に。ロビーなども開放したが間に合わず、市職員が急きょ、避難者を別の避難所に誘導した。市によると、午後8時現在、市内108カ所に開設された避難所のうち、21施設が満員となったという。

 同市谷川1丁目、デザイナーの女性(41)は長女(1)を連れて市総合福祉保健センターに避難したが満員だったため、家の近くの中学校の体育館に移動した。「センターが空いていればと思ったけど、この状況なので仕方ないです」と肩を落とした。

 宮崎市の宮崎小学校の体育館には、午後1時現在、約25世帯30人が避難した。新型コロナ対策として手の消毒と検温を実施。世帯同士が接近しすぎないよう、約2メートル間隔を示すビニールテープが床にはられた。

 宮崎市恒久3丁目から夫と避難した浜田孝枝さん(66)は「自宅近くの川の水位が6割ほどまで上がった。過去に周辺が水につかったという話も聞いたことがあり、とにかく命を守るために避難した。怖いです」と話した。

■九州で停電拡大 約14万2630戸に[6日20:00]

 九州電力によると、台風10号の影響で6日午後8時現在、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の5県で約14万2630戸が停電している。鹿児島県が約12万6370戸と最も多く、停電率は10.8%となっている。その他は宮崎県が約1万2940戸、佐賀県が約1550戸、長崎県が約1180戸、熊本県が約600戸となっている。

■九州で約8万9800戸が停電[6日19:00]

 九州電力によると、台風10号の影響で6日午後7時現在、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の4県で約8万9800戸が停電している。鹿児島県が約8万5050戸と最も多く、宮崎県が約4070戸、熊本県が約580戸、長崎県が約170戸となっている。沖縄電力によると、南大東村などで約460戸が停電している。

■愛媛県西部にも高潮警報[6日19:00]

 豊予海峡を挟んで九州の対岸にある愛媛県西部の南予地方では、台風の接近にともなって次第に風が強まり、波浪警報や高潮警報が出た。県内では6日午後8時時点で、宇和島市や西予市など3市町の約7万3千人に避難勧告が出された。

 細長い佐田岬半島にある同県伊方町では強風が吹き付けやすい上、台風の接近と満潮の時間帯が重なっているため、町が高潮への備えに細心の注意を払う。町によると、町内にある堤防の出入り口(陸閘(りっこう))をすべて閉じたほか、防災行政無線を使って町民に注意を呼びかけているという。松山地方気象台によると、同県伊方町瀬戸の降水量は、6日午後6時までの12時間で29.5ミリを記録した。

■鹿児島県で4万6500戸が停電[6日17:00]

 九州電力によると、台風10号の影響で6日午後5時現在で、鹿児島県内の4万6500戸で停電が発生している。総戸数に占める停電率は奄美市(1万700戸)、喜界町(5900戸)などが高くなっている。

■熊本市、全域の73万人に避難指示[6日16:30]

 熊本市は6日午後4時半、市内全世帯にあたる約34万6千世帯、約73万2700人を対象に避難指示を出した。台風10号の接近で、大雨、暴風、高潮が予測されるとしている。

■大分市、全域に避難勧告 「明るいうちに避難できるよう」[6日15:30]

 大分市は午後3時半、市内全域に避難勧告。風雨は本格的に強まっていない段階だが、市災害対策本部の担当者は「夜にかけての悪化を見越し、明るいうちに避難できるよう発令した。安全な場所にいる人は外出を控え、危険な場所にいる人は指定緊急避難場所に避難してほしい」と話している。

■福岡市が77万人に避難勧告 「これほどの規模、記憶にない」[6日15:00]

 福岡市は6日午後3時、市内の38万7900世帯、77万3914人に対し、土砂災害や浸水被害のおそれがあるとして避難勧告を出した。対象は博多区や中央区など市内全区にまたがり、市の人口の約半数が対象となっている。

 避難勧告の対象には、博多区の博多駅前1~4丁目や中央区の天神1~5丁目、大濠公園など市街地中心部も含まれている。夜間にかけて台風10号の影響が強まることが想定されるため、日中のうちに勧告を出したという。市は公民館や小学校など223カ所に避難所を開設した。

 市防災・危機管理部の担当者が「これほどの規模に一度に勧告を出したことは記憶にない」と話す。勧告の対象地域外でも、強風が不安な人などには避難所や親戚宅などへの避難を呼びかけている。

■鹿児島・喜界島で最大瞬間風速41.2mを観測[6日12:49]

 台風10号は6日、鹿児島県の喜界島や奄美大島に接近した。気象庁によると午後0時49分、喜界島で最大瞬間風速41.2メートルを観測するなど、暴風が吹き荒れた。

 喜界町(喜界島)の宿泊施設「ぎなま荘」の宜名真(ぎなま)孝子さん(59)は、朝日新聞の取材に「風が強く、雨戸がガタガタと鳴りっぱなし。客間も揺れている」と話した。周辺は停電し、施設は自家発電に切り替えた。2人の従業員が前日から泊まり込み、30人の客に対応しているという。「夜の台風でなく日中だったので、気持ちは少し楽でした」

■屋久島北部付近で記録的短時間大雨情報

 気象庁は6日、鹿児島県・屋久島北部付近で同日午前11時40分までの1時間に120ミリ以上の雨が降ったとみられるとして、「記録的短時間大雨情報」を発表した。

■武田防災相が緊急記者会見「暴風吹く前に避難を」

 台風10号の接近を受けて武田良太防災担当相は6日昼、東京都内で緊急記者会見を開き、「命を守るための早めの正しい行動を必ずとってください」と安全確保を呼びかけた。

 武田防災相は「早め早めの避難により命を守ることが必要」と話し、「特別警報」が出ていなくても気を緩めないよう注意を促した。さらに「暴風が吹く前に避難して下さい。事前の安全な場所への正しい行動こそが、尊い命を守るもっとも有効な手段」と訴えた。

 また、市町村の首長にも、「空振りを恐れずに、避難勧告などを早めに出していただくようお願いします」と呼びかけた。

■高潮にも警戒を 種子島・屋久島、鹿児島湾、周防灘、佐多岬半島など

 大型で非常に強い台風10号は6日午前、鹿児島・奄美大島の南東を北へ進んでいる。気象庁によると、同日夜には鹿児島県にかなり接近する見通し。7日にかけて勢力を維持したまま、九州の西岸付近を北上するとみられる。

 気象庁は、鹿児島県に出す見通しだった台風による特別警報は、やや勢力が弱まったため発表の可能性が低くなったとした。ただ、中本能久・予報課長は6日午前の会見で、記録的な大雨や暴風の予想は変わっていないとして「特別警報が出るか出ないかに関わらず、最大級の警戒は怠らないで」と呼びかけた。

 気象庁は高潮に特に警戒が必要な地域として、鹿児島県の種子島・屋久島▽鹿児島湾を中心とした鹿児島・薩摩地方▽福岡県と山口県に挟まれた周防灘▽愛媛県の佐田岬半島など南予北部、をあげた。

 これらの地域は、台風接近の時間帯と満潮時刻が重なり、6日午後8時ごろ~7日未明に厳重な警戒が必要となるという。このほか九州北部や宮崎県、瀬戸内海でも高潮の恐れがある。

 気象庁の担当者は「海沿いの低地は、一気に浸水して家屋が倒壊することもある。高波と重なると浸水が広範囲にわたり、津波と同じような被害が出ることもある」と話した。また、満潮と重なる時間帯に大雨で河川が増水した場合、海に流れきらずに氾濫(はんらん)が起きることもあるという。

 7日にかけて予想される最大風速は、奄美50メートル、九州南部45メートル、九州北部40メートル、四国と中国25メートル、沖縄と近畿23メートル。波の高さは、九州南部・奄美14メートル、沖縄11メートル、九州北部と四国10メートル、近畿8メートル、東海7メートル、中国5メートル。

 7日正午までの24時間降水量は多いところで、九州南部600ミリ、九州北部500ミリ、四国と東海400ミリ、奄美300ミリ、近畿250ミリ、中国と関東甲信150ミリの予想。その後の24時間では、東海300~400、関東甲信200~300ミリ、四国と近畿100~150ミリ。

■鹿児島市、約25万人に避難指示[6日12:00]

 鹿児島市は6日正午、市内全世帯の半分近くにあたる約13万5千世帯、約24万6千人を対象に避難指示を出した。台風10号の接近で、大雨や暴風による災害発生の恐れがあるとしている。

■JR九州・西鉄、運休前倒し

 台風10号の接近が予定より早まっているとして、JR九州は6日午前、在来線13路線の計画運休を始める時間を1~5時間前倒しすると発表した。

 同社は6日から九州新幹線を含めて順次、計画運休を開始。一方、台風の速度が当初より上がり、午前5時に発表した計画を午前11時に更新した。

 日豊線では大分県内の柳ケ浦―佐伯間で運休の開始時間を午後4時ごろから午前11時に5時間前倒し。鹿児島線も門司港(福岡県)―荒尾(熊本県)の運休開始を午後6時から午後3時に3時間前倒し。荒尾―八代(同)を午後3時から正午に早めた。

 7日は九州新幹線・在来線の全列車を運休予定。8日も被害の状況次第で運転見合わせの可能性があるとしている。

 西日本鉄道も、天神大牟田線と貝塚線の全線運休の開始を、当初の6日午後9時から午後5時に前倒しした。7日は始発から運行を見合わせる。福岡県内などを走る路線バスも同様の対応をとる。

■豪雨被災の人吉市、被災者らを熊本市へ広域避難

 7月の豪雨で甚大な被害を受けた熊本県人吉市は、台風10号の接近に備え、豪雨被災者らを約60キロ離れた熊本市へ広域避難させることに決め、6日朝からバスで輸送を始めた。避難所の「3密」を避けるため、被災した自宅で避難生活を続ける人たちを安全な場所に移すのがねらい。

 6日午前10時半、人吉市の指定避難所「人吉スポーツパレス」の駐車場では、計32人を乗せた大型バス2台が順次出発した。避難者は7日にかけて熊本市の熊本県立劇場に身を寄せる。

 妻(64)とバスに乗った人吉市下薩摩瀬町の柴田龍一さん(68)は、2階建ての自宅の1階部分が床上1.9メートル浸水し、市内の借家で避難生活を送っている。台風10号の暴風が心配で、熊本行きを決めたという。「水害で助かった命。今は避難のことだけ考えている」と話す。

 市の担当者は「市内には豪雨で被害を受けて窓や壁がなくなった家などがあり、自宅にいれば二次災害の危険がある。異例の措置だが一刻も早く安全な場所に移ってほしい」と話す。