【岩手】コロナ禍で業務の場が減った日本航空(JAL)の客室乗務員(CA)が、地方を拠点に地域活性化に取り組んでいる。12日には岩手沿岸を走る三陸鉄道の冬の名物「洋風こたつ列車」に乗り込み、フライトで培った経験をもとに乗客をアテンドした。

 この日、こたつ列車に添乗したのはフライト歴15年の高瀬雅子さん(37)。宮古駅から陸中山田駅までの約40分間、車内アナウンスを担当した。牛乳瓶に新鮮な海産物を詰め込んだ「瓶ドン」など食事も提供し、「機内とは違う揺れで新鮮だった」と高瀬さん。兵庫県から旅行で訪れた松本博樹さん(40)は「CAさんがいるとは知らなかったので驚いた。優雅な気分になる」と笑顔を見せた。

 初めての試みに、三陸鉄道の中村一郎社長(64)は「空と陸のコラボが実現できてよかった。普段とは雰囲気の違う洋風こたつ列車を楽しんでもらえたのでは」と話した。

 コロナ禍で航空需要が激減したことを受け、JALは、フライトで培った国際感覚やマナーにも精通するCAの知見を生かしながら、地域の魅力をPRしたり接客のノウハウを伝えたりする「ふるさとアンバサダー」制度を始めた。

 募集に応じたCA約20人が、北海道から九州まで出身地などゆかりの地域に配属され、東北では仙台の拠点に2人が在籍する。母親が山形出身の高瀬さんは「恩返しの思いも込めて、より多くの人に東北に足を運んでもらえるように貢献できれば」。もう1人のCA、五十嵐咲さん(32)は、東日本大震災を出身地の宮城で経験したことから「震災から10年目を迎える東北で、自分にできることがしたかった」と話す。

 2人は11日、岩手県庁を表敬訪問した。県ふるさと振興部の佐々木淳部長は「震災復興の道筋も見えてきた中で『新しい三陸』を作ることが今後の課題。コロナ禍ではあるが、連携を進めて明るい話題を作っていきたい」。JALの東北地域活性化推進室の平井慶・マネジャーは「地域が元気になるにはどうしたらいいか、東北に根を張って一緒に考えていきたい」と話した。(太田原奈都乃、藤谷和広)