東日本大震災の後、日本は一気に「大量廃炉時代」を迎えた。原発の老朽化に規制強化が重なり、再稼働をあきらめる経営判断が相次いだためだ。国内にあった原発57基で廃炉になったのは24基。それぞれ30~40年かけて解体される。10万年の隔離が必要な「核のごみ」とともに、後始末が社会に重くのしかかる。(藤波優、川田俊男、編集委員・佐々木英輔

■震災後、21基が廃炉に 廃棄物に命運

 原発の廃炉作業は、放射能の減衰を待ちながら原子炉の周辺、原子炉、建屋の解体へと段階的に進む。震災後に廃炉が決まったのは福島県内の10基を含めて21基。あと5年もすれば、各地で解体が本格化する。震災前から続く3基をみれば、将来の姿が一足早くわかる。

 中部電力浜岡1、2号機(静岡県)の廃炉作業は2009年に始まった。南海トラフ地震の想定震源域の真上にある古い原発。地震対策を強化しても費用に見合う収益が見込めないとの経営判断があった。今は4段階の工程の第2段階。23年度から原子炉を解体する第3段階に入り、36年度完了と見込む。昨年12月に現場を訪ねると、タービン建屋で金属をたたく甲高い音が響いていた。

 巨大なのこぎりを備えた機械が、タービンの部品を切断していく。ビニールのカバーで覆われた一角では、原子炉の蒸気にさらされた金属の表面を削る作業が進み、空きスペースや通路の端には、切断した金属部品が入った鉄かごがずらりと並ぶ。これまでに解体したものは20年3月時点で約6700トン。「削ったり布で拭いたりして放射線量を下げれば、資源を再利用でき、埋め立て処分が必要な廃棄物を減らせます」と浜岡原発の堀正義・廃止措置部長が説明した。