ワクチンの効果に影響する可能性がある変異を持つ新型コロナウイルスが、国内で相次いで見つかっていることがわかった。国立感染症研究所の分析では、国内で90例以上が確認されていて、「国内での蔓延(まんえん)は中長期的に感染制御上のリスクとなりうる」としている。

 今回見つかったのは、ウイルス表面のたんぱく質の一部が変わった「E484K」という変異を持つウイルスだ。

 感染研が15日に公表した報告によると、2日までに関東全域で91件、空港検疫で2件検出されていた。

 また東京医科歯科大も18日、3例のE484K変異を確認したと発表した。昨年12月下旬から1月中旬に、同大病院に入院したり、通院したりした11人から、海外から持ち込まれたと考えられる複数の系統のウイルスを検出し、この中の3例という。3例は、主にカナダで検出されている系統で、感染研が報告したものとは異なる。

 同じくE484K変異を持つウイルスは、南アフリカ、ブラジルから報告されたものが知られる。

 世界的に警戒される変異株は、英国、南アフリカ、ブラジルから報告される3種類で、いずれもウイルス表面のたんぱく質に「N501Y」という変異がある。この変異で感染力が強まると懸念されている。

 各国では実際にこれらの変異株による感染拡大が起きていることもあり、国内ではN501Yがある変異株の監視を強め、空港検疫や国内で確認され次第発表してきた。

 一方、今回の変異株はE484K変異はあるが、N501Y変異はなく、いまのところ、検出数も限られている。厚生労働省は「公衆衛生に与える影響は定まっていない」としている。

 感染研は「海外から移入したとみられるが起源不明」とし、今回見つかったものも含めたE484K変異を持つウイルスについて、「国内の蔓延状況は過小評価されている可能性がある」と指摘する。

■免疫から逃れる「E484K」

E484K変異が注目されるのは、「免疫逃避」と呼ばれる性質があると考えられているからだ。

 この変異がないウイルスに感染したり、既存のワクチンを接種したりして得た免疫の効果の一部が、E484K変異をもつウイルスに対しては十分に効かない可能性が複数の実験で指摘されている。

 英製薬大手アストラゼネカなどのワクチンについては、E484K変異がある南アフリカの変異株に対し、「軽~中度の症状を予防する効果が限定的」とする中間的な分析結果を、ワクチンを共同開発したオックスフォード大が発表。南アフリカ政府は接種開始を見合わせた。

 ただ、世界保健機関(WHO)は「間接的な証拠から、重症化を防げると考えることに矛盾はない」とし、変異株が存在する国でもこのワクチンの接種を勧めている。