コロナ禍を受けて政府が開発・運営しているアプリの有効性に、疑問が出ている。

 新型コロナウイルス感染者との接触を知らせるスマホ用アプリ「COCOA(ココア)」は、陽性登録者が伸び悩む。国内の感染者数は約50万人だが、登録された件数は約2%。アプリのダウンロード数も、感染拡大防止に効果があるとされた水準に届いていない状況だ。

 ココアは厚生労働省が昨年6月から提供している。陽性登録者から1メートル以内に15分以上いた利用者に知らせる仕組みだ。安倍晋三・前首相は昨年5月、アプリが人口の6割近くに普及すれば効果が期待できるとし、感染拡大防止の鍵になるとした。

 ダウンロード数は4月9日現在、約2680万件で国民の2割ほどにとどまる。普及しない背景にはダウンロードや陽性の登録が任意で、政府も十分な普及活動をしてこなかったことがある。アプリの不具合から一部の端末に通知が届いていなかったことも発覚し、信頼度は下がっていた。

 愛知県の男性(74)は昨年9月、陽性者との接触が過去2週間で114回あったとアプリに表示された。ほとんど自宅にいたのに16回という日もあった。厚労省に不具合を知らせるメールをしたが、聞き取りなどはされなかったという。男性は「陽性になった人はわざわざ登録しないだろうし、役に立つとは思っていない」と話す。

 政府はココアの開発や運用を約3億9千万円で民間委託していた。4月から約3億1390万円で委託先を変えた。計7億円超の税金を投入することについて、国会では野党側が高すぎると追及している。(山本恭介)