国が2013~15年に生活保護基準額を引き下げたのは、生存権を保障した憲法25条に反するとして、福岡県内の受給者約80人が減額決定の取り消しを求めた訴訟の判決が12日、福岡地裁であった。徳地淳裁判長は、国による引き下げは妥当として、原告側の請求を棄却した。

 同様の訴訟は全国29地裁(原告計約900人)で起こされているが、判決は4例目。今年2月の大阪地裁は原告が勝訴したが、昨年6月の名古屋地裁と今年3月の札幌地裁は原告側の請求を棄却していた。

 争点となったのは、国が13年に決めた「生活扶助費」の基準額の引き下げ。衣食や光熱費など日常生活に必要な費用にあたるが、国は「08~11年に物価の指数が4.78%下落した」とし、下落率を反映させるとして基準額を引き下げ、生活保護費を3年かけて計約670億円削減した。これにより受給者世帯の96%で生活扶助費の支給額が減り、削減幅も最大10%という戦後最大の引き下げが行われた。

 原告側は、引き下げによって生活を切り詰めなければならず、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害されたと主張。また、原油価格の高騰などで一時的な物価上昇があった08年を起算点とし、独自の物価指数を持ち出して過大な下落率を算出しているなどとして、「削減幅を強引に導き出しており、裁量権の逸脱がある」と訴えた。

 国側は、08年を起点としたのは、同年9月のリーマン・ショックで物価が下落したのに当時は基準額が据え置かれたため、08年以降の経済動向を反映させる必要があったと反論。恣意(しい)的に下落率を反映させたわけではないと主張していた。

 厚生労働省によると、今年1月時点の生活保護受給者は約205万人、約163万8千世帯。(布田一樹)