インターネットで馬券が買えるJRA(日本中央競馬会)のネット会員登録が、コロナ禍で急増している。2020年は前年より60万人近く増え、計500万人を突破した。17年ぶりに3兆円を超えた事業収益増を後押ししているが、「副作用」もあったようだ。

JRAによると、ネット会員数は20年末時点で前年より約59万人増え、506万人になった。新型コロナウイルスの感染対策で、場外馬券売り場「ウインズ」を休止したことなどが影響し、現金での馬券発売額は前年比25%の2174億円に急減したが、ネットでの発売額は前年から36%増加。2兆7753億円となった。

 馬券の売り上げなどの勝馬投票券収入と、競馬場への入場料などの事業収入を合わせた事業収益は、前年比3%(884億円)増の3兆206億円。JRAは好調の要因を「コロナによる『ステイホーム』や『巣ごもり』と、レジャーとしての中央競馬の相性が良かった。ネット購入にためらいがあった層にも新規加入が広がった」(広報部)と分析する。

JRAがインターネットから馬券を購入できるシステム「IPAT」(アイパット)の運用を開始したのは02年。ネット会員になり、指定銀行の口座を登録すると、購入回数や利用限度額の制限内で専用のウェブページから馬券の購入ができるようになる。

 手元に現金がなくても家で気軽に馬券の購入ができるためか、20年は1人あたりの馬券購入単価が1日約2千円アップした。

 一方で大きく下がったのが、60日間の期限内に払い戻されなかった的中馬券、いわゆる「時効馬券」などの総額だ。これらは「時効収入」としてJRAの収入となる。

 ネットでの馬券購入では、的中したレースの払戻金が自動的に登録した口座に振り込まれる。そのため、「払い戻しは後で受けよう」として、そのまま忘れてしまうということがない。

 19年の時効収入額は27億円ほどだったが、20年はネット投票の比率が高まったことで「あらかじめ想定はしていた」(広報部)とはするものの、半分以下の10億円余りに。近年では30億円ほどで推移していたが、一気に半減以下となった。

■「世紀の一戦」が売り上げを底上げ

 昨年の収益が好調だったのには、ほかにも理由がある。ファンを引きつける「歴史的」なレースが多かったこともその一つだ。