遺書の下書きをするなどして知人男性の自殺を助けたとして、福岡県警が23日に福岡市の牧師の男(69)を自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。

 捜査関係者によると、牧師は3月に自殺した70代の知人男性に対し、遺書を下書きするなどして、自殺することを助けた疑いがある。

 男性は、3月17日に自宅で練炭を使うなどして自殺した。牧師は男性から「死にたい」と相談されており、男性の死後は財産管理を牧師が引き受ける、といった内容の遺書を下書きしていたという。また、家や車などを譲るよう約束させたり、「葬式をしてあげる」と声をかけたりしていたとみられる。

 男性は牧師に「自宅の電話に3回連絡しても出なかったら通報してほしい」と依頼。男性が自殺した当日、牧師は実際に電話してつながらないことを確認したうえで110番通報していた。

 牧師は、自殺の準備や実行に直接関与していないとみられるが、死後の不安を取り除くなど一連の行為が自殺の手助けにあたると県警は判断した。精神的な手助けについて自殺幇助容疑を適用するのは珍しいという。

 牧師は、キリスト教系宗教団体に所属。捜査関係者によると、男性は2月に妻を亡くしたことを苦にしていて、この牧師以外にも自殺を相談していたが、他の牧師らは思いとどまるよう説得していたという。男性が自殺した日には、別の牧師からも「自殺しようとしている人がいる」との趣旨の相談が県警にあったという。(杉山あかり)