北海道旭川市で3月、中学2年の女子生徒(当時14)が遺体で見つかり、遺族がいじめを受けていたと訴えている問題をめぐり、女子生徒と無関係の市内の兄弟が「死に追い詰めた張本人」と名指しされ、自宅や顔写真をインターネット上に公開された。別の高校生も「加害者」としてさらされるなど、ネット上の事実無根の誹謗(ひぼう)中傷による被害が広がっている。

 「お宅の息子、殺人者ですよ」

 4月22日にかかってきた一本の電話。市内で理容店を営む土崎真澄さん(51)の70代の母が出ると、男がそう告げた。

 土崎さんがネットを調べると、息子の21歳と19歳の兄弟が、女子生徒の死にかかわったと、名指しされていた。この問題が明るみに出たのは、1週間前の4月15日の文春オンラインの報道だった。

 兄弟は、女子生徒や報道でいじめの加害者とされた生徒たちとの接点は一切なかった。また、道警は女子生徒の死因は低体温症で、殴られるなどの事件性はないと判断している。

 その後、ネットでは「コイツらが殺したってうわさが立ってるよ」といった書き込みが、いつの間にか「殺人事件」となり、兄弟が「車で拉致」「加害者の少年少女は兄弟に脅されていた」「死に追い詰めた張本人」とエスカレートしていった。さらに、「生きる価値なし」「決して許してはならない」とまで書かれた。

 ネット上では、土崎さんの父が兄弟の父親で、市教育委員会に勤め、「事件をもみ消した」とされた。実際は、真澄さんの父はトラックの元運転手で、当時は入院していた。母が病院からの緊急連絡に備えていたところへ、昼も夜も誹謗中傷の電話が鳴った。病院からの連絡先を土崎さんに変え、電話線を抜いた。