大和君はどうやって生き延びたのか 行方不明の7日間
イベット・タン、BBCニュース
北海道七飯(ななえ)町の林道で先月28日から行方不明となっていた7歳の少年が3日、無事保護された。
田野岡大和君はどうやって生き延び、夜露をしのいだのか。また、この地域に生息する野生のクマはどれほど危険だったのか。
行方不明になった経緯
大和君と家族は日帰りで七飯町の隣りの鹿部町にある公園を訪れた。大和君が小石を車や人に投げたことをとがめた両親は、七飯町の林道で「しつけ」として、大和君を車から降ろし、しばらく置き去りにした。数分後に両親が戻ると、大和君は姿が見えなくなっていた。
大和君の服装はTシャツとジーンズのみ。北海道のこの地域では、夜間の気温は9度まで下がることもある。
ニセコアドベンチャーセンターを創設したロス・フィンドリー氏はBBCに対して、「例年のこの時期よりも寒い天候が続いていた」と言い、「ニセコの山頂には雪が積もった。もっと南にある七飯はそれほどではなかったかもしれない。しかし、体脂肪が少ない小さな子供にとっては大変だ」と語った。
どのような場所なのか
一帯は、樫や樺が多く、地面は草などに覆われた深い森林になっている。フィンドリー氏は、下生えは笹が多いと指摘し、「ほかの国で想像するような森とはかなり違う」と説明した。
「歩いて通るのは大変で、あまり森の中に入る人はいない。なにがしかの道を歩いていないと、どこにも進めない。特に小さな子どもが下生えが多い地面に横たわっていたら、見つけるのはとても難しい」
強い雨も捜索の障害になった。
夜露はどうやってしのいだのか
大和君には、幸運と分別の両方が味方した。
3日に大和君が発見された場所は、陸上自衛隊の駒ケ岳演習場の中で、先月28日に最後に姿が確認された地点から5.5キロ離れていた。
演習場では先月30日朝に捜索が行われたとのことだが、当時は大和君は見つかっていない。捜索隊は総勢180人で警察犬もいた。AP通信によると、3日に大和君を発見した自衛隊員は大和君の捜索には関わっていなかった。
大和君は両親に置き去りにされた後間もなく、歩いてたどり着いたと警察に話した。
大和君は「水を飲んでいた」「食べ物はなかった」と語った。小屋の床に敷いたマットレスの上で寝たという。
食べ物を見つけるのは可能だったか
関東アドベンチャーズのデイビッド・ニーホフさんによると、この時期に森で食べ物を見つけるのはかなり難しいと話す。
ニーホフさんは、「春は始まったばかりで、地面からいろいろ出てきたばかり」と話し、「毒を持った植物もあるので、食べるのに何が安全かは地元の人の知識が必要だが、一般的にはあまり食料になるものは少ない」と語った。
ニーホフさんによると、日本の小川の水は一般的に飲んでも安全だが、北海道の山中を流れる川には寄生虫がいる場合もあるので、飲む前に沸騰させる必要があるという。
しかし、大和君が見つけたような水道からであれば、飲んでも安全だ。
大和君の状態は?
大和君が運ばれた函館市内の病院の医師たちによると、軽いかすり傷を負っているだけで大きいけがはないが、軽い低体温症にかかっているという。
フィンドリー氏は、食べ物がなければ「さらにエネルギー量が不足したはずで、そうなるとさらに危険度は高まったはずだ」と言う。
例のクマの危険は?
北海道はヒグマの生息地だ。ヒグマは体長が2メートルになるものもあるが、必ずしも脅威ではない。
フィンドリー氏は、「だいたいのクマは向こうから近づいてこないので、音を立てて自分の存在を教える方がいい。そうすれば離れていくだろう」と語った。「一方で、もし驚かせてしまうと、とても攻撃的になることが多い」。
森で迷子になった子どもへのアドバイスは?
ニーホフさんは、「濡れないようにし、体を暖かくして、動かないことだ」と言う。「もし動き回っていたら探し当てるのがずっと難しくなる。そこにいたと分かっている場所から探し出す方が見つけやすい」。
しかしフィンドリー氏は、大和君の場合、最善の行動をとったと話す。
「身を守る場所や水、寒さから守る物を見つけたわけだから、これ以上できることはあまりない。6日もたった後ですごい奇跡だ」