「大草原の小さな家」作者の名前、米文学賞から外され 人種差別で

1887年に教師として働いていた当時のワイルダーの写真

画像提供, Heritage Images/Getty Images

画像説明, 1887年に教師として働いていた当時のワイルダーの写真

米国図書館協会の児童サービス部会(ALSC)は25日、児童書でテレビドラマ化もされた「大草原の小さな家」シリーズの作者、ローラ・インガルス・ワイルダーの名前を児童文学賞の名称から外すと発表した。ALSCは「作品の中に反先住民、反黒人の感情が含まれている」ことを理由に挙げた。

ALSCは23日に開かれた理事会で、「ローラ・インガルス・ワイルダー賞」を「児童文学遺産賞」に変更することを全会一致で決定した。

ALSCは、ワイルダーの小説や「ステレオタイプ的な態度を示す表現」が「ALSCの中核をなす価値観にそぐわない」と述べた。

米国の西部開拓時代の生活を描いたワイルダーの作品は、米先住民や有色人種を非人間的に描く表現が使われていると批判されてきた。

<おすすめ記事>

「大草原の小さな家」では、たとえば冒頭の章で、土地のことを「人間は誰もいない。インディアンしか住んでいない」と書かれた箇所が特に懸念されている。

米紙ワシントン・ポストによると、出版社ハーパースは1953年に、問題の部分の「人間」を「開拓者」に変更した。

しかしそれでも、ワイルダーの時代の白人米国人に典型的な人種差別的な決め付けや態度が、物語に出てくることが問題視され続けてきた。

たとえば、登場人物が「死んでいるインディアンだけが、良いインディアンだ」と発言するほか、アフリカ系米国人が「黒んぼ」と表現されている。

愛読者の間には、作品は当時の状況を知る上で貴重で、子供の教育のために使われるべきだという意見もある。

ALSCの理事会は書簡で、これは大勢がそれぞれに深い思い入れや意見を抱く「複雑」な問題だと指摘した。

理事会は、「ワイルダーの作品が児童文学の歴史上、大きな存在で、現在も読まれていることを認識している」とした上で、このシリーズが「多くの読者を深く傷つけてきたことも認識している」と述べた。

民主党支持者らはワシントンの連邦議会議事堂から南部連合の指導者たちの銅像を撤去するよう求めている

画像提供, Getty Images

画像説明, 民主党支持者らはワシントンの連邦議会議事堂から南部連合の指導者たちの銅像を撤去するよう求めている

1867年生まれのワイルダーが執筆した自伝的な小説「大草原の小さな家」のシリーズは、1932年から43年にかけて出版された。

作品はテレビドラマ化され、1974年から83年にかけて放映された。

「ローラ・インガルス・ワイルダー賞」の受賞者には、作家のE・B・ホワイトや絵本作家のドクター・スースなどが名を連ねている。

文学賞からワイルダーの名前を外すという決定の背景には、人種差別的な言動で知られる歴史的人物の文化的な評価を見直す米国での動きがある。

南北戦争時代の南部連合の記念碑を撤去する動きについては、米国の歴史や南部の文化をゆがめるものだという反発もある。

黒人をはじめとする人種的少数者は、南部連合の象徴が公の場に置かれているのは侮辱的だと受け止めている。