米政府、イラン革命防衛隊をテロ組織に指定 軍隊では初
ドナルド・トランプ米大統領は8日、イランの精鋭部隊、革命防衛隊(IRGC)を国際テロ組織に指定した。アメリカが他国の軍隊をテロ組織に指定したのは初めて。
イラン国営メディアによると、イラン政府は対抗措置として、中東に駐留する米軍をテロ組織に指定した。
2018年5月にトランプ大統領がイラン核合意離脱を発表して以降、アメリカとイランの緊張が高まっている。
IRGCをテロ組織に指定したことで、アメリカ側は今後、追加制裁を科せることになる。イラン経済へのIRGCの関与を考慮すると、特にビジネス部門に影響を及ぼすような制裁を科す見通し。
多数のIRGCや関連団体はすでに、核拡散行為やテロ支援、人権侵害の疑いでアメリカの制裁措置の対象となっている。
<関連記事>
トランプ大統領の主張
トランプ大統領は8日の声明で「米国務省が主導するこの前例のない措置は、イランがテロ支援国家だというだけでなく、IRGCが国政の手段として積極的に資金調達し、テロを助長していることを認識してのことだ」と述べた。
トランプ大統領はさらに、今回の措置はイランに対する圧力の「範囲と規模を大幅に拡大」する狙いがあると付け加えた。
「IRGCとの商取引は、テロへの出資に等しい」
国務省によると、IRGCのテロ組織指定は今月15日に発効する。
反対意見は?
イラン強硬派のマイク・ポンペオ米国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はいずれも今回の決定を支持している。一方で、全ての米政府高官が支持したわけではない。
ポンペオ国務長官は8日、記者団に対し、アメリカは今後もイランに対し「普通の国家のように振舞う」よう制裁と圧力を続けると述べ、アメリカの同盟国に同様の措置をとるよう求めた。
「イランの指導者たちは革命家ではない。国民にはより良いものを得る権利がある。指導者たちは日和見主義者だ」
国務長官はその後のツイートで、「我々はイラン国民が自由を取り戻すため支援しなければならない」と付け加えた。
ボルトン大統領補佐官は、IRGCのテロリスト指定は「正当」だとツイートした。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長を含む国防総省の一部高官は、米軍の安全性について懸念を示したという。
米軍幹部は、今回の指定がイラン経済に大きな影響を与えず、中東に駐留する米軍への暴力を引き起こす可能性があると警告した。
米中央情報局(CIA)も反対していたと報じられている。
イランの反応
イラン国営のイラン・ニュースネットワーク(IRINN)によると、最高安全保障委員会(SNSC)は、ジャヴァド・ザリフ外相が対応を求める書簡をハッサン・ロウハニ大統領に提出した後、アメリカ中央軍(Centcom) をテロ組織に指定すると発表した。
中央軍は国防総省の下部組織で、特にアフガニスタン、イラク、イラン、パキスタン、シリアなどの地域における米政府の安全保障上の利益を監督している。
トランプ政権がIRGCのテロ組織への指定を検討していることが報じられた後、イランは対抗措置を取ると警告していた。
国営イラン通信(IRNA)によると、イランの国会議員290人のうち255人が署名した声明では「我々はIRGCに対するいかなる措置にも、対抗措置で応じるだろう」と強調した。
一方、9日に総選挙を控えるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アメリカの措置への支持を表明するツイートをした。
<分析>裏目に出る恐れも――ジョナサン・マーカスBBC防衛・外交編集委員
トランプ政権はイランを孤立させ、国際社会から排除することを望んでいる。今回の決定でも、それがまた強調されたわけだが、実際にIRGCの活動に重大な影響を及ぼすことはなさそうだ。
IRGCが中東地域の内外のあらゆる破壊行為に関与していると、このことに異議を唱える西側諸国の専門家はほとんどいない。
しかし米国務省や国防総省の一部高官を含む大勢は、今回の措置について、ただ裏目に出て終わるだけではないかと懸念している。
IRGCや関連組織が、イラクなどで勢力が脆弱(ぜいじゃく)な米軍やその他の標的に対して、何らかの行動を起こすことにつながる可能性があるのではないかと、専門家は心配しているのだ。
トランプ政権はイランとの対立をひたすら激化したい意向で、今回の措置はその意思表示だ。ただ、激化した対立はいつか、あからさまな軍事衝突に発展するのではないかという懸念もある。