イーロン・マスク氏のAI企業、脳埋め込み技術の臨床試験を申請

ジェイン・ウェイクフィールド、テクノロジー記者

Brain neurons

画像提供, Getty Images

画像説明, ニューラリンクは、神経疾患を患う人の脳を刺激し、コンピューターを動かせるようにしようとしている

米起業家のイーロン・マスク氏が立ち上げた「ニューラリンク(NeuraLink)」社は16日、人間の脳とコンピュータ端末をつなぐシステムの臨床試験の実施許可を、米当局に申請したと発表した。

マスク氏によると、開発中のこのシステムはすでにサルで実験されており、脳のはたらきでコンピュータを動かすことができたという。

ニューラリンクは、重度の神経疾患を持つ患者に注力したいとしているが、マスク氏の究極の目標は、「超人的な認知」の実現だという。

AIとの融合

ニューラリンクが開発している端末は、小型のプローブ(外科用器具)の中に人間の毛髪よりも細い糸に取り付けられた3000個以上の電極が入っている。これによって、1000個のニューロンの働きをモニタリングすることができる。

同社によると、このシステムでは脳の特定の部分を限定的に狙うことができるため、外科的にも安全だという。また、機械学習を使ってシステムの記録を分析し、どのような刺激を患者に与えるのが最適か割り出すことができる。

一方、システムがどのように脳のはたらきを変換しているのか、端末がどのように脳細胞を刺激しているのかは明らかにしていない。

マスク氏は記者会見で、「この技術によって突然、神経を制御する素晴らしい機能を獲得し、他人の脳を操れるようになるわけではない。それには長い時間がかかる」と説明した。

しかし、このシステムを使うと決めた人には、究極的には「人工知能(AI)との共存」が可能になると話した。

マスク氏は以前、AIが人類を破壊する可能性があると話していた。

「どんなに悪意のないAIシナリオであっても、人類は置いていかれる。高いデータ通信量を持つ脳・機械インターフェースがあれば、AIの速さについていき、実質的にはAIと融合するという選択肢を持つ」

マスク氏はさらに、脳を機械とつなげることで、脳の中に「スーパーインテリジェンス」という新しい層を作れると話した。これは、一部の人がすでに「電話によって獲得しているものだ」という。

会見の質疑応答の際、マスク氏はニューラリンクが開発している端末をサルで実験したことを明らかにした。この実験では、サルは脳の動きでコンピュータを操作したという。

ニューラリンクは現在、人間を対象に臨床実験を始めるため、申請手続きに着手した。臨床実験には、米食品医薬品局(FDA)の認可が必要だ。

マスク氏は併せて、ニューラリンクによる科学者の採用を増やす計画だと話した。同社では現在、約100人が働いている。

Brain with interface

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ニューラリンクは発表に合わせて論文を公表したが、ピア・レビュー(同分野の専門家による検証)を受けていない。

発表会に出席した米航空宇宙局(NASA)のAI専門家、クリティカ・ドシルヴァ氏は、「ニューラリンクが説明する技術には期待が持てる。この分野の従来の研究に比べると、侵襲性はかなり低くなっているからだ」と話す。

「発表された計画を実現するには、技術面と倫理面の課題克服に今後何年も取り組みが必要だが、この技術はてんかんやパーキンソン病といった特定の重篤な病気の症状緩和に、大きく貢献するかもしれない」

米ペンシルヴェニア大学神経科学部の研究者たちが使うコーディング研究所のツイッター・アカウントは、「革命的なものではないが、実に創造的な発想がたくさん使われている。もっとデータを見る必要があるが、方向性にはとても期待が持てる」と書いた。

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米南カリフォルニア大学のアンドリュー・ハイアーズ准教授(神経生物学)はツイッターで、「ニューラリンクは既存の実験室技術の最高峰を選んで、いくつか重要な次元に向けて推し進めた。現状の最高技術を超えた統合的で埋め込み可能な製品を使っているのが、何より見事だ」と書いた。.

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神経インターフェースの構築に取り組む企業は、ニューラリンクだけではない。テクノロジー起業家、ブライアン・ジョンソン氏が立ち上げたカーネル社は、「人間の認知を大々的に改善・拡大」しようと、同じように研究を重ねている。

マスク氏によるベンチャーは、現時点で技術的に可能なことの限界を押し広げようとするものが多い。スペースX社は火星探検を検討しているし、トンネル採掘会社ボーリング・カンパニーは、ロサンゼルスの地下にトンネルを造ろうとしている。さらに同氏の地下輸送システム「ハイパーループ」計画は、「移動」の概念を抜本的に発明し直そうとするものだ。