環境難民の本国送還を認めず 国連が判断

Tarawa in Kiribati

画像提供, Getty Images

国連は20日、気候変動による危機から逃れた難民について、本国へ送り返すことはできないとする判断を示した。

この判断は、海面上昇に直面している太平洋の島国キリバスからニュージーランドへ逃げたイオアネ・ティティオタさんの難民申請をめぐるもの。国連は、ティティオタさんは差し迫った脅威にはさらされていないとして申請を却下したものの、気候変動に起因する難民申請自体は認めた格好だ。

国連は声明で、気候危機によって命の危険にさらされた難民申請者を本国に送還するのは、特に生存権などの「人権侵害に個人をさらす可能性がある」と説明した。

「一国全てが海面の下に沈むという途方もないリスクを考慮すると、こうした国での生活は、尊厳のある生活を送る権利と相容れなくなる可能性がある」

ティティオタさんはなぜニュージーランドに?

今回の国連の判断には法的拘束力はないものの、各国に対し、気候関連の切迫した危険にさらされた個人を送還した場合、人権侵害に当たる場合があるとはっきりと警告している。

一方で、キリバスで家族と共に命の危険にさらされているとしたティティオタさんの主張は認めなかった。

ティティオタさんは国連の自由権規約人権委員会に対し、人口過密が問題となっているサウス・タラワ島の出身だと述べた。

キリバスの他の島々は海面上昇により住めなくなったため、首都のあるサウス・タラワ島の人口は、1947年の1641人から2010年には約5万人まで増加した。

ティティオタさんは、これによって社会的な緊張や不安定、暴力がはびこっていると説明した。

また、キリバスではすでに穀物が被害を受けており、サウス・タラワ島も向こう10~15年で人間が住めなくなってしまう可能性が高いと指摘している。

ティティオタさんは2013年にニュージーランドに保護を求めたが、同国の裁判所に却下されたため、国連に申請していた。

2015年のBBCニュースの取材でティティオタさんは、自分の状況は紛争から逃れる難民と同じだと話した。

「私は戦争から逃げ出す人たちと同じだ。彼らは死ぬのを怖がっていて、私もそうだ」

2050年までに人が住めなくなる可能性も

国連の自由権規約人権委員会は今回、キリバスは人が住めなくなるリスクを抱えているものの、「(ティティオタさんの示した)10~15年という期間があれば、国際社会の協力を受けたキリバス政府が国民を守り、必要であれば移住させられるような積極的な対策を講じられるだろう」と述べている。

国連の気候変動に関する政府間パネルは先に、太平洋の島国6カ国が、海面上昇の被害を最も受けると警告した。その中にはキリバスも含まれる。これらの島国は、2050年までに人が住めなくなる可能性があるという。

環境正義財団(EJF)は報告書で、気候変動によって、向こう10年で数千万人が移住を余儀なくされると警告している。世界銀行も2018年、気候変動によって南アジアやサハラ以南のアフリカ、南米などで1億4000万人以上が移住することになる可能性があると述べた。