イギリスの自営業者に給付金、その内容は? 新型ウイルス

ケヴィン・ピーチー、家計担当記者

Bethnal market flower stalls in London

画像提供, Getty Images

イギリスでは、新型コロナウイルスの流行拡大に頭を悩ませている被雇用者について、政府が給与の8割を助成することが決まった。しかし一方で、自営業の人々についての支援が不十分だと批判されてきた。

こうした中、リシ・スーナク財務相は26日、個人事業主に対する支援を発表した。

どんな支援?

「コロナウイルス自営業収入支援スキーム」と名付けられたこの支援では、新型ウイルスの流行により収入を失った個人事業主を対象に、所得の8割に当たる額を1カ月につき最大2500ポンド(約32万円)まで、課税対象の給付金として支給する。

給付は6月から始まり、3か月分が一括で支払われる。

対象となるのは、昨年度も現在も働いており、今後もその職業で働く予定のある人だ。

給付の条件は?

給付を受けるには、収入の半分以上を個人事業から得ている必要がある。

また、2018/19年度の営業利益が5万ポンド以下か、2016/17年度からの3年間の平均が5万ポンド以下であることも条件だ。

現在自営業だが、昨年度に1年間自営業として働いていない人は、今回のスキームの対象ではない。

このほか、確定申告による納税に6カ月間の猶予が与えられる。

収入が最低水準の人については、福祉手当を手厚くする。スーナク財務相は、社会保障の一括給付制度「ユニヴァーサル・クレジット」に申請している人には、向こう数日以内に手当てが支払われるべきだと述べた。

申請の方法は?

スーナク財務相によると、収入の大半を個人事業から得ている人の95%が対象になるという。申請の方法は以下の通り。

  • 歳入税関庁(HMRC)はデータから対象者を割り出し、給付の案内を送付する
  • 申請では、給付の条件を満たしていることを申告する必要がある
  • 給付金は口座に直接振り込まれるため、これも申請時に申告する必要がある
  • HMRCは対象者に直接連絡するため、自営業者から連絡する必要はない

保有する会社から給与や株の配当をもらっている場合は、このスキームではなく、雇用者向けのスキームの対象となる。

対象者はどれくらい?

イギリスには現在、自営業者が500万人以上おり、平均月収は781ポンド。10年前の金融危機以来、その数が急速に増えている。今回のスキームでは、このうち380万人が対象となる見込みだ。

国家統計局(ONS)によると、自営業者のうちおよそ5分の1が建設業界で働いている。このほか、自動車販売、教育、各種専門サービスなどの従事者が多い。

Chart showing self-employed numbers in UK
画像説明, 2000年以降のイギリスの自営業者数の推移(出典:英国家統計局)

一連の発表の中でスーナク財務相はさらに、自営業者向けの低額の国民保険を取りやめるなど、自営業者に対する税控除を示唆している。

この国民保険は、自営業者には休日勤務手当や傷病手当などがないために設けられており、起業を促進するものだった。

実現した場合、被雇用者と自営業者の納税条件が同じになる可能性があり、イギリスの納税制度にとっては大きな変革を意味する。

被雇用者向けの支援とはどう違う?

イギリス政府は大量失業を防ぐための施策として、民間企業に対し、従業員の給与の8割を1人当たり月額最大2500ポンドまで給付すると発表した。

対象となるのは、新型コロナウイルスの影響で一時解雇になってしまう従業員で、HMRCの認可が必要となる。

給付は3月分から始まり、少なくとも3カ月続く。