米S&P500、半年ぶり最高値 コロナ禍での暴落以前の水準に

A man walks a dog in the shade away from the midday sun past the New York Stock Exchange (NYSE) building in Manhattan, during hot weather in New York City, New York, U.S., August 11, 2020

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画像説明, S&P500の回復ペースは異例に素早く、米経済に対する懸念に照らすと予想外でもある

アメリカの株式市場で主要な指標のひとつ、S&P500指数が18日、前日比0.23%高の3389.78で終え、約6カ月ぶりに史上最高値を更新した。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への懸念から世界的に株価が暴落する以前の水準に戻り、2月19日の最高値を約3ポイント上回った。

他のアメリカの主要株価指標も回復し、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数も6月の最高値を再び更新した。一方で、ダウ工業株30種平均は続落し、前日比66ドル84セント(0.24%)安の2万7778ドル07セントとなったものの、これも2月の水準に近づいている。

アメリカの株価は米連邦準備理事会(FRB)が大規模な量的緩和策などを次々と打ち出したのを受けて、3月23日以降、上昇基調を続けている。

しかし3月上旬にパニック売りが相次ぎ株価が連日急落していた当時は、これほど素早い回復はほとんど考えられなかったと、投資会社ベアードの投資戦略担当、ウィリアム・デルウィッチ氏は言う。

アメリカは今なお感染拡大の抑制に苦労しており、経済の状態に対する懸念も継続しているだけに、株価がこれほどの規模と速度で回復したのは予想外だと、デルウィッチ氏は話す。

国内各地で感染対策のロックダウン(都市封鎖)が実施された影響で、アメリカ経済は4~6月の第2四半期に過去最大の減少幅を記録した。

「実体を伴う回復が実現したこと自体は意外ではないものの、ここ数カ月来、急速な回復が続いている。今こういう会話をしている、そのこと事態がまったく驚きだ」

アナリストたちは回復の理由について、FRBの対策など景気刺激策のほか、経済回復を信じる投資家心理が影響しているとみる。特に投資家たちは、株式市場よりも資産運用に適した場をあまり見つけられずにいるとも言われる。

CFRAリサーチの投資戦略責任者、サム・ストーヴァル氏は、これほど急速な株価回復は意外だが前例がないわけではないと指摘する。1929年の世界大恐慌以降では、S&Pの回復速度としては3番目だとストーヴァル氏は言う。

回復の規模は、世界主要市場の中でもアメリカが群を抜いている。ロンドンのFTSE100種総合株価指数は、1月の最高値よりまだ約20%低い水準で推移している。フランスの CAC40も19%ほど低いままだ。

日本の日経平均はコロナ禍以前の水準に戻りつつある。これは、政府の積極的な景気刺激策に加え、大規模なロックダウンを実施しないまま感染拡大を比較的抑制できたことによる。

ハイテク株が推進

米株価の強力な回復は、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどのテクノロジー大手各社がけん引している。こうしたハイテク大手や、クラウド・コンピューティング、機械学習などの業界が、ロックダウンの打撃を受けなかった勝者と見られている。

「ハイテクがなければ史上最高値はあり得ない」と、USバンクウェルスマネージメントの投資戦略責任者、テリー・サンドヴェン氏は言う。

S&P500のハイテク部門の株価は今年に入ってから約25%伸びているが、他の部門は不変かマイナスに動いている。たとえばエネルギー部門は1月初め以来約37%下がり、金融部門は約20%下がっている。

格差拡大

S&Pダウジョーンズの上級アナリスト、ハワード・シルヴァーブラット氏は、S&P500の最高値更新は決して経済全般の状態を表すものではなく、業界ごとの株価動向の違いがその兆候だと警告する。

「好調な会社と不調な会社の間に、大きな格差がある」

Traders wearing masks work, on the first day of in person trading since the closure during the outbreak of the coronavirus disease (COVID-19) on the floor at the NYSE in New York

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画像説明, ニューヨーク証券取引所は5月に対面取引を再開した

今年初めと比べると、S&P500全体は約5%上昇した。

しかし、指標に含まれる500社の内、年初より株価が下がっている企業は半数以上だと、シルヴァーブラット氏は指摘する。S&P500はニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄を算出したもので、中小企業よりは企業体力があるはずだが、それでも多くの大企業が苦しんでいる。

「時間の経過と共に情勢が変わり、今後への楽観論が多いが、それは心配だ」と、シルヴァーブラット氏は言う。「期待が裏切られた場合がどうなるか。落胆は市場にとって良くない要素だ」。

サンドヴェン氏は、経済全般の展望が改善しない限り、今後の株価の伸びは限定的なものになるとみている。

連邦政府が追加の景気刺激策を承認するか、そして米大統領選がどういう結果になるのかの政治的要素も、投資家にとっては不安材料だ。

「2021年には成長基調が回復するはずだという楽観論が、明らかに多い。けれども慎重になるだけの理由もある」と、サンドヴェン氏は話した。