トランプ氏、山火事の西海岸を訪問 「そのうち涼しくなる」と気候変動の懸念一蹴

California Governor Gavin Newsom surveys damage caused by the North Complex Fire in Butte County, California, USA, 11 September 2020

画像提供, EPA

画像説明, カリフォルニア州のニューサム知事は山火事の状況を視察した(9月11日)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は14日、山火事で大きな被害が出ているカリフォルニア州を訪れた。気候変動の影響が懸念される中、当局者に「そのうち涼しくなる」と述べ、心配ないとの見方を示した。

米西海岸のカリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州では8月上旬以降、山火事で計約2万平方キロメートルが焼失。少なくとも35人が死亡している。

気候変動に懐疑的なトランプ氏はこの日、カリフォルニア州中部サクラメント近郊で山火事対策に当たる当局者らと面会。森林管理のまずさが今回の危機につながったとする従来の見解を繰り返し強調した。

当局の1人が気候変動に関する「科学を無視」しないよう訴えると、トランプ氏は「そのうち涼しくなる(中略)実際のところ、科学にも分かってないんだと思う」と述べた。

一方、民主党のジョー・バイデン大統領候補は同日、デラウェア州の集会で、トランプ氏を「気候問題の放火犯」と呼んで批判。トランプ政権がもう4年続けば、「アメリカはさらに火に包まれる」と述べた。

動画説明, 米カリフォルニアの山火事、すでに昨年の約20倍の規模に
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BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、少なくともこの日は、気候変動が米大統領選の主要なテーマになったと説明。環境問題が大統領選で注目を集めることは少ないが、トランプ氏とバイデン氏の立場はくっきりと分かれているとした。

また、バイデン氏が票を期待している若者層にとっては、重要なトピックだと解説した。

トランプ氏の発言

カリフォルニアを訪れたトランプ氏は、気候変動が今回の大規模な山火事の原因になっているかと記者から問われると、「管理状況のほうが問題だと思う」と答えた。

トランプ氏は、他国ではこれほどの山火事が発生していないと主張。「他の国には非常に燃えやすい森林があるが、このような問題は起きていない」と述べた。

また、「気候変動の問題に踏み込むとしたら、例えばインドは行動を変えるだろうか? 中国は行動を変えるだろうか? ロシアは? ロシアは行動を変えるだろうか?」と続けた。

近年、オーストラリアやアマゾン熱帯雨林で大規模な火災が発生しており、専門家らは気候変動の影響を指摘している。

山火事の状況

カリフォルニア州の当局者らによると、同州では現在29カ所で主な山火事が発生しており、消防が消火活動を続けている。火災による死者は8月15日以降、24人に上っている。

強い南風と乾燥した空気が状況を悪化させると、当局は警告を発している。同州北部で1000平方キロメートル以上を焼失させ、まだ4分の1程度しか鎮火していない山火事ノース・コンプレックス・ファイアへの影響も懸念されている。

Map showing wildfires in Washington, Oregon and California (10-13 September 2020). Updated 14 Sept
画像説明, 米西海岸で9月10~13日に発生していた山火事(オレンジ色の部分)
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オレゴン州の災害対応当局は13日、州内30カ所以上で山火事が発生しており、消防が困難な消火活動にあたっていると述べた。最大規模の山火事は、全長90キロを超えるほどだという。

同州では過去1週間で少なくとも10人が火災で死亡した。行方不明者も数十人に上っており、当局は死者数が今後増えるとの見通しを示した。

ワシントン州では13日時点で、大型の山火事が5カ所で起きている。これまでに1人が死亡している。

動画説明, サンフランシスコの空がオレンジ色に……米の山火事が深刻化
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政治家たちの発言

カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は14日、トランプ氏と共に出席した会合で、「森林管理を十分にやってこなかった」と認めた。一方で、州内の土地の半分以上は連邦政府の管理下にあると指摘した。

気候変動については、「暑さは増し、乾燥も進んでいる」、「科学の出番であり、証拠は明らかだ。気候変動は現実であり、状況を悪化させている」と述べ、議論の余地はないとした。

オレゴン州のケイト・ブラウン知事はこれまで、同州が「西海岸の気候変動のまさに先駆け」になっているとの見解を表明。

山火事は、「気候変動に対してできる限りのことをしなくてはならないと、全員に警告を発している」と述べている。

ワシントン州のジェイ・インスリー知事は、山火事の状況を「破滅的」と表現。気候問題に対するトランプ氏の姿勢を非難した。

A helicopter drops water to help extinguish the Bobcat fire in Arcadia, California (13 September 2020)

画像提供, Reuters

画像説明, カリフォルニア州史上最大の20の山火事のうち6つが今年発生している
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トランプ氏は12日にネヴァダ州であった選挙運動の集会で、間伐や下刈りなどの森林管理が山火事の背景にあると主張。

「こんなことは1度もなかった」、「単純な言葉を覚えておいてほしい。森林管理だ」と述べた。

トランプ氏はこれまで気候変動について、「架空」、「存在しない」、「金ばかりかかるでたらめ」などと呼んでいる。一方で、「深刻な問題」とも表現している。

トランプ政権は、アメリカと187カ国が気候変動への国際的な取り組みを決めた「パリ協定」からの離脱を通告している。

気候変動の影響

史上最も気温の高かった10年のうち9年は、2005年以降に集中している。国連は今週、2016年から今年までの5年間は、これまでで最も暑い期間になると警告した。オレゴン州とカリフォルニア州は1900年と比べ、気温が1度以上上昇している。

この温暖化の中、カリフォルニア州史上最大の20の山火事のうち6つが今年発生している。オレゴン州では一連の山火事で、これまでの年平均の焼失面積の2倍の面積が1週間のうちに焼失した。

カリフォルニア州ではここ数十年、長引く干ばつで木々が枯れ、山火事が起こりやすい状況になっていた。通常は涼しく、湿度も高い山岳地帯もこの夏は急速に乾燥し、火災の悪化を招いた。