スウェーデン国王、新型ウイルス政策は「失敗だった」

King Carl Gustaf of Sweden attend the funeral of Grand Duke Jean of Luxembourg on May 4, 2019 in Luxembourg,

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画像説明, スウェーデンのカール16世グスタフ国王

スウェーデンのカール16世グスタフ国王(74)は17日、新型コロナウイルス対策として同国が緩やかな政策を取ったことは「失敗だった」と述べた。

スウェーデンはパンデミック中、全国的なロックダウンを一度も行っていない。その結果、新型ウイルスの感染数は35万件弱、死者は7800人以上と、スカンジナビア諸国の中では突出して大きな被害が出ている。

ステファン・ロベーン首相も、グスタフ国王の発言に同意し、「これほど多くの死者が出たという事実は失敗以外の何物でもない」と述べた。

その上で、政府の新型ウイルス制政策については「パンデミックを抜けた後に現実的な結論が出るだろう」と話した。

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グスタフ国王は毎年恒例のテレビ演説で、「私たちは失敗したと思う。たくさんの人が亡くなったのはひどいことだ」と述べた。

「スウェーデン国民は困難な状況の中で非常に苦しんだ。病気の家族にさよならを言えなかった人々のことを考えている。温かな別れの言葉を言えないのはつらく、トラウマになる経験だと思う」

自分がCOVID-19に感染するのは怖いかという質問に対しては、「最近、どんどん近づいているとはっきり感じるようになった。望ましいことではない」と答えた。

スウェーデンは新型ウイルス対策として合法的な制限を設ける代わりに、市民の責任感や義務感を当てにし、要請のみ行ってきた。要請を守らなかった場合の罰則も作ってこなかった。

全国的なロックダウンやマスク着用の義務化を実施したことはなく、バーやレストランの営業も認めてきた。

初めて遠隔授業を要請

しかし感染報告が増加傾向にあることから、今週初めには首都ストックホルムの学校に対して、ただちに13~15歳の生徒への授業を遠隔に切り替えるよう初めて要請した。

これに先立ち7日には、16歳以上の生徒について遠隔授業を行うよう、全国的な通達を出していた。

また14日には、クリスマス期間に他人と距離を取る施策を開始した。それ以前は、地域ごとに似たようなガイドラインが出ているだけだった。

この施策では、集会は8人までとし、できれば屋外で行うことや、公共交通機関での移動を避けるよう求めている。

8人を超える公的な集会は引き続き禁止しており、コンサートやスポーツの試合、デモ活動などに影響を与えている。

「自主的な行動」

スウェーデン公衆衛生庁の疫学者アンダース・テグネル氏は11月、BBCの取材に対し、同国の戦略は法的な制限と自主的な行動の組み合わせだと説明した。

そして、これはスウェーデン流の考えでは「最高の組み合わせだと信じているもの」だとした。

今週スウェーデン当局が発表した報告書では、この戦略は介護施設に住む高齢者を守ることができなかった。この件については、政府が責任を認めている。

スウェーデンでは、新型ウイルスによる死者の90%以上が70歳以上の高齢者だった。また、死者の半数以上が介護施設の入居者だったという。

死者は北欧で突出

テグネル氏は、公衆衛生庁は高齢者介護に直接責任を負っていないとした上で、あらゆる関係者が高齢者を感染から守るよう状況改善に努めなければならないと説明。

また、高齢者を新型ウイルスから守るという点で完全に成功している国はないと発言した。

スウェーデンの死者数は、他の北欧諸国の死者を全て足した数よりも多い。ノルウェーやデンマーク、フィンランドは、スウェーデンの緩やかな施策によって自国も危険にさらされていると批判している。

15日にはローベン首相も、多くの専門家が流行の第2波を過小評価していたように感じると述べた。

地元紙の取材でローベン首相は、「専門家のほとんどが、このような流行の波が来るとはみていなかったと思う。それよりも、さまざまなクラスター感染が起こると話していた」と発言した。