異なるワクチンの組み合わせ接種も「高い予防効果」=英研究

ミシェル・ロバーツ、保健編集長、BBCニュースオンライン

A man holding the Oxford vaccine

画像提供, PA Media

新型コロナウイルスのワクチン接種で、1回目と2回目で異なるメーカーが製造したワクチンを使った場合も予防効果が得られるとの結果が28日、イギリスの研究で示された。

「Com-Cov臨床試験」に関する今回の研究では、ファイザー製またはアストラゼネカ製のワクチンを2回接種した人と、両ワクチンを1回ずつ打った人について調べた。

その結果、すべての組み合わせで免疫がつくられ、十分に機能していることがわかった。

これにより、ワクチン接種がより柔軟に実施できると、専門家らは指摘している。

今回の研究はまた、アストラゼネカ製ワクチンをすでに2回接種した人について、仮に異なるメーカーのワクチンの追加接種(ブースター)を秋に推奨されて受けた場合、より強力な追加免疫を得られる可能性があるとした。

だが、英政府の副主任医務官を務めるジョナサン・ヴァン・タム教授は、現在の国内のワクチン接種スケジュールを変更する理由はないと述べた。十分な量のワクチンがあり、接種の効果もみられていると説明した。

一方で、今後の検討対象になりうると表明。「別々のワクチンの接種は、追加接種にさらなる柔軟性を与えることになる。ワクチン接種をまだまだ進める必要がありながら、供給面で困難に直面している国を支援することにもつながる」と述べた。

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一部の国ではすでに、別々のワクチンの接種を実施している。スペインとドイツは、1回目にアストラゼネカ製を打った若者に対し、2回目はファイザーやモデルナが製造したワクチンを接種している。ただこれは、効果の観点からではなく、アストラゼネカ製ワクチンについて、まれに深刻な血栓を生じさせることが懸念されているためだ。

新型ウイルスをブロックし殺すT細胞や抗体を得て、新型ウイルスの感染症を完全に予防するには、2回の接種が重要だ。

今回の研究では、50歳以上のボランティア850人に対し、4週間の間隔を置いてワクチンを接種した。その結果、以下のことがわかった。

  • アストラゼネカ製の後にファイザー製を打った場合、ファイザー製の後にアストラゼネカ製を接種した場合よりも、抗体とT細胞が活発化した
  • 前記の2通りの接種は、アストラゼネカ製の2回接種より抗体が増した
  • ファイザー製を2回接種した人が抗体の反応が最も強かった。T細胞の反応が最も強かったのは、アストラゼネカ製の後にファイザー製を打った人だった
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筆頭研究者のオックスフォード大学のマシュー・スネイプ教授は、今回の結果によって、同じワクチンを2回接種する英政府の方針が損なわれるわけではないと説明。「標準的なスケジュールは両方とも、重症化や入院の防止に非常に効果的だと、すでにわかっている。8~12週の間隔を置いて接種されれば、デルタ変異株にも有効だ」とした。

同教授はまた、今回の結果から別々のワクチンの接種も効果的だと示されたと述べた。研究ではイギリスで一般的な8~12週の間隔ではなく、4週間の間隔を置いて接種されたが、それでも効果が確認できたとした。

「間隔は長いほうが、よりよい免疫反応が得られるとわかっている」

12週間の間隔を置いて別々のワクチンを打つ研究も実施されており、結果は来月、公表される予定だ。

秋の追加接種は

28日に公表された査読前の別の研究は、アストラゼネカ製ワクチンを2回目の接種から6カ月以上後に改めて接種することで、免疫力を高められるとした。

ただ専門家らは、今年の冬を前に追加接種が必要かを判断するには時期尚早だとしている。時間の経過による免疫の低下については、まだ不明な点が多い。

イースト・アングリア大学のポール・ハンター教授は、「いま問題なのは、この秋に追加のワクチン接種を実施するのかどうかだ。今回の研究などからは、年齢や病気が理由で新型ウイルスのリスクが大きい人については、可能性が高いとみられる」と話した。

同教授は、アストラゼネカ製ワクチンを打ってきた人について、さらに同じワクチンが接種されるのではなく、ファイザー製ワクチンが追加接種されるかもしれないとの見方を示した。一方、ファイザー製を打ってきた人については、今回の研究結果から、秋の追加接種は必要ないだろうとした。

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<分析>ファーガス・ウォルシュ医療担当編集長

異なるワクチンを同じ人に接種する今回の研究の初期結果は、とても明るいもので、追加接種について興味深い選択肢を示している。

1回目と2回目の接種で、アストラゼネカ製とファイザー製という別々のワクチンを使うことで、強い免疫反応が生み出された。実際、ファイザー/ファイザー、アストラゼネカ/ファイザー、ファイザー/アストラゼネカのいずれの組み合わせで接種しても、アストラゼネカ/アストラゼネカの接種よりも多くの抗体がつくられ、細胞の反応も高まった。

これは、アストラゼネカ製の2回接種がいくらか劣っていることを示しているのだろうか。いや、必ずしもそうではない。

アストラゼネカ製の2回接種によって、新型ウイルス感染症による入院リスクが90%以上減少したと証明されていることは、覚えておくべきだろう。

アストラゼネカ製ワクチンの効果が高いことは、現実世界で証明されている。同ワクチンは効果がゆっくり現れる「スローバーナー」タイプで、免疫レベルは徐々にアップする。接種間隔が長い場合は特にその傾向がみられる。現在、1回目と2回目の接種の間隔は8~12週間とされており、十分な免疫反応が得られるはずだ。

今回の研究が示しているのは、追加の3回目の接種においては、それまでの2回で接種したのとは異なるメーカーのワクチンを打つのが望ましいだろうということだ。

ただ、別々のワクチンを接種することで悪寒や頭痛、筋肉痛など、より短期の副反応がみられていることには注意が必要だ。

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