オミクロン株の感染者、英スコットランドやロンドンでも 30日からイングランドで規制強化

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画像提供, PA Media

南アフリカで検出された新型コロナウイルスの新しい変異株「B.1.1.529」(オミクロン株)についてイギリスで28日、国内3人目の感染者が確認された。29日には北部スコットランドで6人、ロンドンでも2人の感染が確認された。スコットランドの感染者の一部には外国渡航歴がなく、地元で市中感染した様子という。イギリス全体で確認されたオミクロン株の感染者は、これで11人になった。

英健康安全庁(UKHSA)によると、イギリスで確認された3人目の感染者はすでに国外に出ているものの、英議会などがあるロンドン中心部のウェストミンスターを訪れていたという。

前日に確認された最初の2人は、英南東部エセックスと中部ノッティンガム在住で、それぞれアフリカ南部への渡航歴があった。今では家族と共に自主隔離しているという。現地保健当局は、それぞれの行動を追跡し接触者を調べている。エセックス州当局は、今月19日に同州ブレントウッド中心部のファストフード店を訪れたり、21日に地元の教会を訪れたりした人は、ただちにPCR検査を受けなくてはならないと呼びかけている。

スコットランド自治政府は29日、ラナークシャーで4人、グラスゴー近郊で2人、オミクロン株に感染しているのが確認されたと発表した。一部の人は外国渡航歴がなく、地元で市中感染した様子という。

自治政府は6人を全面的に支援し、行動の追跡調査を強化する方針。

UKHSAは29日にさらに、ロンドンでもオミクロン株の感染者が2人確認されたと発表した。1人は南部ワンズワース、1人は北部キャムデンにおり、共にアフリカ南部への渡航歴があったという。

英政府は30日午前4時(日本時間同日午後1時)からイングランドで店舗や公共交通機関でのマスク着用を再び義務化するなど、感染対策を強化する。

30代の症状は体の痛みやだるさと

南アフリカの保健当局は今月24日、変異株「B.1.1.529」について世界保健機関(WHO)に報告した。WHOは26日、「B.1.1.529」を「懸念される変異株」(VOC)に指定し、「オミクロン」と名付けた。

WHOは声明で、オミクロン株には「多数の変異がみられ、その中には懸念すべきものもある」とし、初期段階の証拠では再感染リスクの増加が示唆されていると説明した。

これまでにイギリスをはじめ複数の国で感染者が確認されており、多くの政府がアフリカ南部諸国からの入国を制限している。

英保健・公的介護省によると、29日には「オミクロンについて状況を話し合うため」主要7カ国(G7)の保健相の緊急会合が開かれる予定。

動画説明, オミクロン株、今のところは「症状は非常に軽い」 30代患者と家族を診察した南アフリカの医師

南アフリカ医師会のアンジェリーク・クッツェー会長はBBCに、南アフリカで確認された30代などの患者の症状は軽いものがほとんどだが、変異株に対する調査はまだ初期段階にあると述べた。

「患者の主な訴えは、体の痛みや強い倦怠感だ。高齢者ではなく若者に見られる(中略)これは、病院に直行して入院するような患者たちの話ではない」とクッツェー医師は話した。

Omicron

中学でもマスク推奨

英政府はこれに先立ち、感染対策強化を発表した。主な対策は次の通り。

  • イギリス現地時間30日午前4時以降、イギリスに入国する全員は入国2日目が終わるまでに、PCR検査を受けなくてはならない(アイルランドやチャンネル諸島からの入国は除く)。陰性結果が出るまで自主隔離しなくてはならない
  • オミクロン株の感染者と接触した人は全員、ワクチン接種を終えていても自主隔離しなくてはならない
  • 30日午前4時以降、店舗や公共交通機関ではマスクを着用しなくてはならない。ただし飲食店・レジャー施設など接客業の店舗は除外
  • 保健相は科学顧問の助言を得て、ワクチンの2度目の接種から追加接種の間隔を短縮するなど、追加接種促進について検討する

イングランドで店舗や公共交通機関でのマスク着用が再び義務となれば、イギリス国内のウェールズ、スコットランド、北アイルランドと同様の状態に戻る。ただし、スコットランドとウェールズでは接客業の店舗でも継続して、マスク着用が義務付けられている。

これに加えて教育省は28日、「第7学年(日本の小学校6年生に相当)」以上の生徒や学生、学校スタッフと訪問者に、共用部分でのマスク着用を推奨した。この対策はイングランドの中学高校、専門学校や大学、保育施設のスタッフなども対象となる。

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サジド・ジャヴィド保健相はBBCに対して、新しい変異株確認の情報を得て政府は「素早く」「適切な形」で対応したと述べた。

政府の諮問機関「ワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)」は29日、イギリス国内のすべての18歳以上にワクチンのブースター(追加接種)を提供する方針を提言した。2回目の接種と追加接種の間隔は、最短6カ月から3カ月に短縮するべきだとした。さらに、12~15歳の子供には、2度目の接種を提唱すべきだと提言した。

一方で英政府は、在宅勤務は推奨していない。イングランドでは、大規模イベントの会場やナイトクラブなどに入る際にワクチン接種パスポートの提示も求められていない。在宅勤務とワクチン・パスポートはどちらも、冬に感染者が急増し国民保健サービス(NHS)病院が逼迫(ひっぱく)するのを避けるため、政府が「プランB」として用意している対策に含まれる。

最大野党・労働党はこの「プランB」をただちに実施するほか、対象者が自主隔離しやすくなるよう傷病手当を拡充するよう政府に求めている。

一方、ボリス・ジョンソン首相はイングランドの追加規制は「一時的で念のため」のものと言い、3週間後にその効果を点検する方針を示している。3週間後とは、クリスマス休暇のためにほとんどの学校が冬休みに入る直前にあたる。

スコットランド自治政府は、飲食店でもマスク着用を求め、可能な場合は在宅勤務をするよう呼びかけている。自宅に外から人が訪れる際は換気をし、徹底した手洗いを頻繁に繰り返すよう指導している。

もしもオミクロン変異株がこれまでの変異株より感染力が高いと証拠が得られた場合は、社会的距離の維持を義務付ける可能性もあるという。

感染者は増える見通し

オミクロン株の感染者はこれまで、南アフリカとイギリスのほか、ベルギー、デンマーク、ドイツ、イタリア、オランダ、オーストラリア、香港、イスラエルなどで確認されている。

英政府の感染対策を助言してきたイペリアル・コレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授(伝染病学)は、イギリスには南アフリカから訪れる人が世界でも特に多いだけに、「今後数日の内におそらく、感染者がさらにもっと確認されるはずだ」と述べた。

イギリスは28日午前4時から、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニ、アンゴラ、モザンビーク、マラウィ、ザンビアの計10カ国からの入国者を、10日間のホテル隔離の対象にした。

UKHSAトップのジェニー・ハリス博士も、今後数日の内にイギリスで感染者がさらに確認される可能性は「かなり高い」と述べた。

「私たちには優れたゲノム解析能力があるだけに、変異株を見つけて、伝染を抑止するための対策を速やかにとることができる。この変異株の伝播性(でんぱせい)や重症化の可能性、死亡率、抗体反応、ワクチンの効果などについて、理解しようと引き続き取り組んでいる」と博士は話した。

さらに、「COVID-19の症状がある人はただちにPCR検査を受ける必要がある。これは欠かせない、重要なことだ。新しい変異株への防御を高めるには、ワクチン接種は不可欠だ」とも強調した。

イギリスでは1日の感染者数が11月初めから再び増加傾向に戻った。28日には、3万7681人の感染が新たに確認された

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<分析> ワクチン接種の重要性をあらためて――ファーガス・ウォルシュBBC医療担当編集長

南アフリカの人口は若い。現地の医師たちによると、オミクロン株による症状は軽く、入院患者は特に増えていない。これは前向きな情報だ。

ただし、COVID-19が重症化しやすい高齢者の間で、どのような症状が出るのか、注意して様子を見なくてはならない。

また、ワクチン接種を2回受けている人、さらには追加接種を受けてる人に対して、オミクロン株がどう作用するのかを見る必要もある。これまでのところ新型コロナウイルスワクチンは、全ての変異株に対して、重症化を強力に防ぐ優れた効果を発揮してきた。

オミクロン株による重症化をもワクチンが防ぐなら、たとえ多少のブレイクスルー感染はあっても、それはもちろん迷惑なものだが、決して大惨事にはならない。

もちろんこれは、ワクチンを受けているというのが大前提だ。つまり新しい変異株の出現は、まだワクチンを受けていない人に対して今一度あらためて鳴らされている警鐘なのだ。

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