独カトリック教会の児童性虐待、「前教皇が対応怠る」 最新報告書

Pope Benedict

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画像説明, 前ローマ教皇ベネディクト16世

ドイツのカトリック教会司祭らによる児童虐待に関する調査報告書の内容が20日、明らかになった。前ローマ教皇ベネディクト16世(94)が同国南部ミュンヘン司教区の大司教を務めていた際、4件の性的虐待への対応を怠ったと、報告書は指摘している。

この調査は、カトリック教会から委託を受けたドイツの法律事務所「Westpfahl Spilker Wastl」が実施したもの。

前ローマ教皇ベネディクト16世(当時は本名のヨゼフ・ラッツィンガーで呼ばれていた)は1977年から1982年まで、独南部ミュンヘン司教区の大司教を務めていた。

虐待行為はベネディクト16世の大司教在任中も続いていたとされ、告発された司祭たちは教会でそれぞれの職務を継続していたという。

ベネディクト16世は対応を怠ったとの指摘を否定している。

司祭らは活動を継続

報告書について発表したマルティン・プッシュ弁護士は、「(ベネディクト16世の)大司教在任中に起きた(4件の)性的虐待のうち2件は、虐待行為として国が認めたもの」だと説明した。

「いずれのケースでも、加害者はパストラルケアの活動を続けていた」

パストラルケアとは、地域社会の人々を訪問し、支援する活動などを指す。

少年への虐待行為を告発されたある司祭は、ベネディクト16世の司教区に移された後も、パストラルケアを続けていたとされる。

2013年、前教皇は体力の衰えを理由に退位した。存命中の教皇の退位は約600年ぶりだった。以降、名誉教皇としてヴァチカン市国で静かな生活を送っている。

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前教皇は法律事務所からの質問状に対し、数十ページにわたる回答を提出したと報じられている。回答書の中で調査への支持を表明した一方で、虐待疑惑は認識していなかった、対応を怠ったという事実はないと主張したという。

しかし、調査報告書には、虐待に関する話し合いの場に前教皇が同席していたことを強く示す議事録が含まれている。

ローマ教皇庁(ヴァチカン)は声明で、報告書が公表されれば詳細を確認するとした。

「司祭による未成年者への虐待行為は恥であり遺憾だと、改めて表明するとともに、ローマ教皇庁は全ての被害者への支援を表明する。未成年を保護し、彼らにとって安全な空間を保証していく」

少なくとも500人近くが被害

独カトリック教会での虐待をめぐっては、過去の報告書で、1946年から2014年の間に全国で3600人以上が司祭らから虐待を受けたとされている。被害者の多くは非常に幼い、ミサで侍者を務める少年たちだった。

ミュンヘン・フライジング司教区に関する最新の報告書では、1945年から2019年の間に少なくとも497人が被害に遭っていたことが明らかになった。

報告書は、前教皇のほか、ミュンヘン・フライジング司教区の現大司教、ラインハルト・マルクス枢機卿を含む教会関係者数人についても批判している。マルクス枢機卿は2件の虐待疑惑で対応を怠ったとされる。

枢機卿は昨年6月にすでに、明らかになりつつある虐待という「大惨事」に対する責任の一部を負うべきだとして、現教皇フランシスコに辞任を申し出ている。

しかし、フランシスコ教皇は辞任申し出を拒否した。教皇はこの数日前、カトリック教会の教会法典を改正し、性的虐待や児童ポルノの所持、虐待の隠蔽(いんぺい)などを処罰の対象とした。