ジュリアーニ弁護士に210億円の賠償命令 大統領選めぐり選挙管理職員の名誉毀損

ブランドン・ドレノン、ワシントン

Mr Giuliani leaving the courthouse on Friday

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画像説明, 裁判所を離れるジュリアーニ弁護士(15日、ワシントン)

ドナルド・トランプ前大統領の顧問弁護士だったルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が2020年大統領選の開票作業をめぐり、ジョージア州の選挙管理職員が不正を行ったと主張し名誉毀損(きそん)で訴えられた裁判で、首都ワシントンの連邦地裁の陪審は15日、選挙職員2人に計1億4800ドル(約210億円)を支払うよう、ジュリアーニ弁護士に命じた。

ワシントン連邦地裁はすでに、ジュリアーニ弁護士の相次ぐ発言がジョージア州選管のルビー・フリーマンさんと娘のワンドレア・「シェイ」・モスさんの名誉を損なったと認定していた。4日間の審理を経て今回、賠償額が決まった。

陪審員8人からなる連邦地裁の陪審は、被害者への名誉毀損について1人につき2000万ドル、精神的苦痛について1人1600万ドルの損害賠償を認定。さらに懲罰的賠償7500万ドルを2人で分けるよう、評決した。

原告のモス氏は評決を受けて、この数年間は「ひどいもの」だったと述べた。

ジュリアーニ氏は裁判所前で記者団に対し、「なにひとつまったく後悔していない」と話した。

原告2人の代理人、マイケル・ゴットリーブ弁護士は7日の最終陳述で、ジュリアーニ氏が偽情報の「震源地」だったと非難。3日間の審理で数々の証拠と証言を前にした陪審は、「(フリーマン氏とモス氏が)過ごした言葉にならない恐ろしい日々のごくごく一部を追体験」したと述べ、ジュリアーニ氏をはじめ「強力な発信力を持つすべての有力者」へメッセージを送るためにも、厳しい賠償額の命令が必要だと強調していた。

ジュリアーニ氏は14日に自ら証言する予定だったが、それは急きょ中止された。15日の評決後に同氏は、「(弁論しても)役に立たないと思った」と説明。さらに「ばかげた」賠償命令について控訴するつもりだと述べた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、ジュリアーニ弁護士の資産総額は推定約5000万ドル(約71億円)。弁護団は陪審に、賠償額を決めるにあたってこのことを考慮するよう促していた。

弁護団は、ジュリアーニ元市長が2020年大統領選について虚偽の主張を拡散したことは認めたものの、原告2人の弁護士が主張するほどその内容は悪質ではなく、それほどの賠償責任もないと主張していた。

フリーマン氏は13日の審理で、トランプ大統領(当時)の支持者に自宅を包囲され、連邦捜査局(FBI)に身の危険が迫っていると知らされたため、自宅を逃げ出さなくてはならなかったと訴えた。これは、ジュリアーニ弁護士がフリーマン氏らの映った動画を、投票の不正集計の証拠だと偽り拡散した後のことだった。

ジョージア選管職員だったフリーマンさん(前)と娘のシェイ・モスさんは、今も生活をたてなおしている最中なのだと述べた(15日、ワシントン連邦地裁前)

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画像説明, ジョージア選管職員だったフリーマンさん(前)と娘のシェイ・モスさんは、今も生活をたてなおしている最中なのだと述べた(15日、ワシントン連邦地裁前)

フリーマン氏は、「(トランプ支持者たちが)持っていた縄を使って、うちの前で私に首をつらせるつもりだと、私は思った」と法廷で証言。「怖かった。私を殺しに来るのかどうか、わからなかった」と述べた。

フリーマン氏はさらに、ジュリアーニ弁護士の行動によって自分は孤立してしまったと主張。友人・知人は自分を避けるようになり、自分も公の場で気づかれるのを恐れるあまり世間から引きこもって暮らすようになったと述べた。

2人は15日の評決後に記者団に対して、自分たちについてうそを広めたほかの公人についても、訴える可能性があると述べた。

「その人たちも、責任をとらされなくてはならない」と、フリーマン氏は強調した。

「私の問題がすべて金銭で解決するわけではない。自宅には二度と戻れないし、常に細心の注意を払ってなくてはならない。自宅に戻りたいし、ご近所の人たちに会いたいし、自分の本名を使いたい」

ワシントン連邦地裁でのこの名誉棄損裁判のほか、ジュリアーニ弁護士はジョージア州では2020年大統領選をめぐる虚偽発言などについて起訴されている。ジュリアーニ被告は、無罪を主張している。

ほかに、セクハラ被害を訴えられ1000万ドルの損害賠償を請求されているほか、内国歳入庁(IRS)によると数十万ドルの連邦税を滞納している。

今年9月にトランプ前大統領はジュリアーニ被告の弁護費用を集めるため、自分のゴルフ・リゾートで1人あたりの会費10万ドルの夕食会を主催したとされる。

2018年の離婚調停では前妻がジュリアーニ氏の暮らしぶりについて、5カ月間で100万ドル(約1億4000万円)近くを使っていたと主張。それによると、葉巻に1万2012ドル、万年筆に7131ドル、愛人に28万6000ドル、「自分の楽しみ」に44万7938ドル、旅行に16万5000ドルなどが、支出されていたという。